2009年5月28日木曜日

日本の課題はサイドアタックの欠乏と中村俊輔の合流か

Friendly Match Kirin Cup Soccer 2009 Matchday 1 Japan 4-0 Chile @ Nagai Stadium
Japan:Okazaki 20,24,Abe 52,Keisuke Honda 92

チリ戦後 岡田監督会見
キリンカップサッカー2009
(スポーツナビ)

今日の試合ですが、選手によっては中2日で疲れがかなりあり、練習も実質1日という中で、チリという非常にタフでアグレッシブなチームとやれる。そういう試合で、われわれはどれだけタフにできるか。そのような状況でどれだけ勝利することにこだわれるか。そうしたことを選手に問いかけてスタートしたんですが、相手に対して尻ごみせず、下がらずに戦ってくれました。

自分たちのやろうとしていることを自信を持ってやってくれた、ということに関してはものすごく満足しています。その中で、チリに1対1でやられる場面、それから横パス、バックパスを取られて大ピンチになることが3、4回あったと思います。それとともに、チリの特に右からのアーリークロス、あれなんかはまねしたくなるくらいでした。自分たちにとって財産になっていく試合だったと思います。チリがあれだけアグレッシブだったおかげで、われわれもいろんなことが分かった、プラスになった、そんな体験だったと思います。


相手はチリのベストメンバーではなかった。日本も中村俊輔大久保、田中達也、闘莉王、内田、長友がいなかったわけだが、チリは3月4月のW杯南米予選のときに招集されたメンバーで来日したのは5人だけ。ほぼ国内組で固めたメンバーで、日本にとっては格下といっていい相手だった。

チリは確かにアグレッシブだったが、守備のプレスに連動は感じられず、簡単に叩くことができた。こういう叩くとかさばくといったプレーは日本がもっとも得意とするところ。以前はプレスがかかった時点でパニックになっていたが、それが減少したことはプラスといえばプラスなのだろうが。

横パスやバックパスをとられてピンチになるというのは、毎回言われる課題。何度も合宿をやりながらそこを修正できていないのは岡田の能力には限界があるのではないか。バックパス禁止という犬飼発言ではなく、状況をきちんと判断して、横パス、バックパスでも相手にとられない確率が100%ならビルドアップとして使うという約束事ができていないということだろう。

サイドでやられていたことに対して、岡田はまったく気にかけていないが、本戦になるとサイドで崩されることが多い。真ん中にどれだけ自信があるのか知らないが、あれだけサイドからえぐられたときに中央に決定力があるストライカーがいれば簡単に決められてしまう。

実際、スアソがいればスコアは逆だったかもしれないのだ。

――試合開始と同時に、中村憲を中心に素早く相手にプレッシャーをかけていたが、あれは監督の指示だったのか? それから岡崎のストライカーとしての資質をどう考えるか?

プレッシャーをかけるのは今日に限ったことではないです。立ち上がりで遅れた面があって、フリーでサイドで持たれていたので、もう少し下がらずにと。これは今日に限らず、ずっと言い続けていることです。

岡崎については、彼の特徴である裏に飛び出していくプレーを出してくれました。彼のストライカーとしての素質というのは、クロスボールにニアに飛び込んで行く、待っていない、そして守備もできる。ある意味、ストライカーらしいストライカーだと思っています。


左サイドに置いた岡崎をストライカーとしてとらえているということは実質サイドアタックを捨てているということだろう。

FWに行くほど先細りになるこのシステムでは相手の両サイドのフルバックに対してプレスはかからないし、相手が高い位置でサイドからアタックをかけると両サイドのフルバックからのアタックは抑えられる。攻撃のパターンは真ん中しかなくなり、相手は守りやすくなる。スルーパスはそうそう通るものではないし、裏への抜けだしもスピードがなければ簡単には決まらない。

攻撃のパターンが中央突破とセットプレーしかない日本はそれほど怖くはない。それが世界の列強がスカウティングして出した結論ではないか。

試合後 チリ代表ビエルサ監督会見
キリンカップサッカー2009
(スポーツナビ)

今日の試合、われわれは苦労した。なかなかボールを持たせてもらえなかったし、前線に運ぶこともできなかった。今日はゾーンディフェンスという形を採ったが、守備が不十分で不正確だった。(敗因は)それに尽きると思う。またFWにはいくつかのチャンスはあったが、それがゴールにつながらなかった。決定力がなかったと言える。


何度かサイドを破り、チャンスを作りながら不十分だたというビエルサ。コンディションも不十分でアウェイ。前線にはレギュラークラスはオレジャナくらいというなかで、決定力不足は響いた。守備をゾーンにしたということだが、これはオプションなのか、それとも新しく試したのかはわからない。記者にはこの部分を突っ込んでほしかったのだが。

――チリは昨年も東京で試合をして0-0だった。今回はかなり結果に差があるが、その原因は何だと思うか? 日本が良くなったのか、それとも自分たちのミスによるものなのか?(チリ人記者)

昨年との比較ということだが、去年の試合からずいぶん時間が経過していて記憶は確かではない。ただ、今日の試合に関しては、日本はボール回しが素早く、相手からボールを奪うことがなかなかできなかった。効率的に攻撃できなかったためにゴールにつながらなかったと思う。それから日本は、自分たちのチャンスを生かしてそれが得点につながったわけだが、われわれチリも日本のように自分たちのチャンスを生かしていれば、もしかしたら同点に終わっていたかもしれない。今日はいずれにせよ、日本の方が力は上だった。


チリ人記者は2軍メンバーでもベストの日本と引き分けたじゃないかと言いたかったわけだろうが、同じ手は何度も通用しないのはサッカーでは当たり前のこと。引き分けでよかった前回とは違い、今回はゴールを狙いにいくという狙いもあったに違いない。スアソ、マルク・ゴンサレスがいない中で、FWの底上げはチリの命題でもある。決定力がないことはサッカーでは致命的だ。日本より、チリのほうに収穫があったゲームだったともいえる。

逆境で得た自信 (1/2)
キリンカップ2009 日本代表 4-0 チリ代表
(スポーツナビ)

それにしても、何とトピックスの多いゲームであったことか。2度もネットを揺らした岡崎の得点感覚。オランダで輝きを増した本田の代表での覚醒。18歳とは思えぬ山田の積極的なプレー。久々にトップ下で起用された中村憲の存在感。そして地味に刻まれた山口の初キャップ。いずれも素晴らしいものであったことは言うまでもない。だが、この日の一番のトピックスは、もっと別のところにあるように私には思える。そのヒントは、岡田監督の以下のコメントに求められよう。

「(試合が)2カ月ちょっと空いて、われわれのコンセプト(を確認するの)が、実質前日練習とあとはミーティングだけでした。それだけで、まったく違和感なくできるようになっていた。(中略)ベースがしっかりできてきたなと」

「少々けが人が出ても、全員がいつでも行けるような、チームが勝つために戦うという、ひとつのチームになってきている感じはしています」

思えば当初、このチームは「中村俊ありき」のチームであった。それが1年以上を経て「素早いパス回し」「攻守の切り替え」「ボールを奪われたら奪い返す」といったコンセプトがチームに浸透し、今日の試合では中村俊不在であっても十分にチームとして機能することを証明して見せた。そればかりか、ほとんどコンビネーションの確認をする機会がなかった新戦力に対しても、その持ち味を発揮できるような“配慮”さえ見せていたのである。それは、以下のコメントからも伺える。

「周りの人たちが(バランスを)見てくれていたので、自分は走り回ってかき回すことを考えた」(山田)

「戸惑いはなかった。誰かがポンと入っても、スムーズに機能している」(山口)

これに「こっちが合わせたというより、周りが合わせてくれた」という本田のコメントを加えれば、さらにポイントは明確になる。

これまでは、指揮官のコンセプトを実践し、中村俊の要求に応えることで精いっぱいだったチームが、今では誰が入っても問題なく機能するチームに進化したのである。最終予選の残り3試合、そして来年の本大会を想定するにあたり、今日のこの結果はチームを、そして彼らを見守る私たちを、大いに勇気づけるものであったと言えよう。おりからの新型インフルエンザ騒動による不安、そして相続く負傷離脱。逆境の中で始動した日本代表であったが、図らずもここ大阪で、極めて大きな自信を得ることとなった。


ただ、別の問題があるのも事実。チリではなく、日本のほうに問題がある。

チリ戦では機能した攻撃が、中村俊輔が入ることで機能しなくなる可能性もあるのだ。本田圭佑、岡崎のポジションチェンジと中村憲剛が前後に動くことで、中央突破に偏りながらも交通渋滞は避けられていたのだが、中村俊輔が戻ってくることで、交通渋滞が再び引きおこされる可能性がある。

2列目に中村俊輔、大久保、本田圭佑と並べれば全員が中央でプレーしたがる選手であり、そこでプレーエリアが重なって停滞が起こる。そうなれば、攻撃に支障をきたすことは間違いない。

中村俊輔の合流はベルギー戦からというが、そこで大勝というなら、中央突破に関しては大丈夫ということになるだろう。

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