2008年12月17日水曜日

インタビュー with オシム

朝日新聞がオシムへのインタビューでいい言葉を引きだしてくれた。この一言だけで十分。あとはマスコミが言わせたかったことだろうから。

オシム氏、日本サッカーを語る(朝日新聞)

――今の気持ちは。

「空っぽになった感じだ。ただ、日本という立派な国で代表監督ができたのは名誉なこと。日本は生まれ故郷のボスニアに匹敵する大事な国。いい形で痕跡が残ればいいな、と思っている」

――十分に痕跡を残した。

「努力はしたが、残っているかどうか。日本代表をコレクティブ(組織的)な集団にまとめようとした。いろんな個性があった上で、同じインスピレーション、同じアンビション(大志)、同じアイデアを持っている集団。でも時間が足りなかった」

――その代表がW杯予選を戦っている。

「普通にやれば予選突破は当然のこと。私が半分ほど手がけたチーム、選手でもあるのだから、突破する実力を持っていると思っている。突破に失敗したら、指導した私にも責任がある。自分の実力を信じなさい、自信を持ちなさい、と私は言ってきている」

――代表への期待は。

「予選を突破するだけでは十分ではない。さらに高い目標をたてるべきだ。(目標達成には)何かをやってやろうというアンビションが重要。W杯に行って負けた、勉強になったでは十分ではない。人生はずっと勉強だが、それだけではだめだ。W杯で日本がまた勉強に来たと見られるのではなく、何かをやりに来た、と世界中に抱かせて欲しい。すでに半分以上、予選突破の可能性があるので本番の準備を始めるべきでしょう」

――代表では、サイドバックの20歳の内田篤人(鹿島)ら若い選手が出てきている。

「サイドバックで言うとまだ若手でいい選手はいる。中村北斗(福岡)や左利きの阿部翔平(名古屋)も入っておかしくない。今、代表にいる選手たちが完成された選手ではないということ。駒野友一(磐田)や加地亮(ガ大阪)もいる。現代サッカーではサイドからの攻撃がカギ。最強の左右は右が駒野、左が村井慎二(磐田)と考えたこともある。ただ守備力を向上しないといけない。攻撃力が大事だが、失点を防ぐために走って往復運動ができることが必要。ケーキで言えば攻撃力がクリームで守備力がイチゴ。イチゴもあるケーキがいい」

――Jリーグも含めた日本の課題は。

「日本のサッカーはスピードを生かすこと、アジリティー(機敏性)を生かすこと、アグレッシブにやること、そういう方向で間違いない。ただ、プレッシャーを受けた状況での技術が十分ではない。フィジカル面、特にスタミナが足りない」

「日本は欧州の一流のサッカーと大きな差はないと思うが、何が一番違うか。それは練習に取り組む姿勢がどれほど真剣かということ。欧州のビッグクラブの練習を見に行くといい。簡単そうに見える練習でも全力でやっている。練習を完璧(かんぺき)にできて初めて試合でいいプレーができる」

「日本人の特性なのかもしれないが、誰かがこうすればいい、と言ってくれるのを待っているように見える。自分自身に責任を持つ、自分で決定を下す能力を身につけるべきだ。サッカーはそういうことを反映する。自分で責任を持ってプレーする、自分を頼る。それが私の日本へのメッセージです」

――北京五輪で惨敗するなど若手の育成が課題だ。

「若い世代のセレクションをもっと工夫した方がいい。世界でどんなやり方をしているか参考にすべきだ。今の代表を見ても、左利きの選手、体の大きなFW、足の速いセンターバック、攻撃の起点になれるようなGKが少ない。それは今から5年前、10年前の年代別代表のセレクションがあまり成果をあげていないということです」

――ほかに助言は。

「日本サッカーに対して、はっきり言える人が誰かいるべきだ。批判があって初めて前進する。例えばお店でおいしくないコーヒーを出されたとする。誰かがおいしいと言うと、次の日もお店の人はそのコーヒーを出す。本当のことを言うことが大切です」

――今後、日本とどんなかかわり方を。

「今後も私はいつでも手伝う準備はできている。日本のクラブの指揮? オファーがあればその時に考える。ただもっと体を良くしなければいけない。こうして生きて話していることが奇跡だと言うお医者さんもいる。前のような仕事に就くことができたら奇跡の2乗ですね」


以上が全文。ワールドカップアジア最終予選は勝ち抜ける力があると楽観的なコメントを残し、もっとアジリティを生かして、プレッシャーに強くなること、フィジカル面、特にスタミナが足りないことを強調している。

「日本サッカーに対して、はっきり言える人が誰かいるべきだ。批判があって初めて前進する。例えばお店でおいしくないコーヒーを出されたとする。誰かがおいしいと言うと、次の日もお店の人はそのコーヒーを出す。本当のことを言うことが大切です」


日本サッカー協会はトップにほとんどものが言えない組織。川淵前会長はアンタッチャブルで会長選挙の不正問題でも恫喝して黙らせたという噂がある。

犬飼会長は秋春制、最強メンバー規定を巡ってコメントが二転三転したが、誰もつっこめず。田嶋専務理事が規則にないものは処分できないといって反対したことが表面化しただけだった。

理事だけではなく、マスコミも何も言えず、フリーランスのライターは協会の趣旨にあわない記事のインタビューには答えない。ファンの質問は電話受付で「上に伝えます」と繰り返すばかり。

こんなことでは駄目ということをオシムは言ってくれた。

川淵前会長と犬飼会長はちゃんと読んでいるだろうか。

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