2008年11月14日金曜日

結局はシリアが弱かっただけというお話

Friendly Match Kirin Challenge Cup 2008 Japan 3-1 Syria @ Home's Stadium Kobe
Japan:Nagatomo 3,Tamada 26,Okubo 52
Syria:Al Zeno 78(r)

日本代表はシリアに3-1で快勝したわけだが。シリアは消極さも見られるなど、真剣さは十分だったとは言えず。日本がやりたいことが全部出来たゲームでもあった。それでも3点は少ないし、クローズの仕方としても下手だったといえる。

シリア戦後 岡田監督会見 (1/2)
キリンチャレンジカップ2008
(スポーツナビ)

――交代枠をフルに使うと言っていたが、ハーフタイムで下げた3人(玉田、田中達、寺田)については、前半を見て合格点だったということなのか?

合格とかそういうことではなくて、シーズン終盤で選手の疲労がかなりたまっている中で、けが人を出したくなかったと。合格点だからとか、そういうことではないです。けが上がりの玉田、達也、それから寺田もけが上がりで、まだ(リーグ戦で)3試合くらいしかやっていない。そのへんの再発を心配していました。闘莉王もひざの痛みがあって、本当はハーフタイムで代えたかったんですけど、真ん中2人をいきなり代えるのは不安があったので、もう少しやらせました。

――阿部は足首が痛そうだったが、今日けがした選手はいるか?

(試合から)上がってきたときに確認した中では1人もいないです。ただ、明日になって痛む選手がいるかもしれないですけど、今のところは1人もそういう選手はいないです。


前半で交代したら合格点ということよりもコンディションを心配するのではないのか。岡田はこのことに関してはコンディション重視ということを強調している。ただ、怪我というのなら闘莉王は出すべきではなかったし、不安だったという意味がわからない。勝っても負けてもかまわないフレンドリーマッチで2枚を一度に代えることは経験になることはあっても損はしない。

阿部はフル出場で彼のコンディションはどう考えているのかということも突っ込んでほしかったのだが、マスコミはかなりやさしい。

勝ったから指揮官を責めるわけにはいかないということか。

シリア戦後 選手コメント
キリンチャレンジカップ2008
(スポーツナビ)

■中村憲剛(川崎フロンターレ)
「4点、5点決められるチャンスがあった」

人が代わることで周りも変わってくるから、(そういう違いは)面白かったと思う。(ワールドカップ予選のカタール戦に向けての修正は)決めるところで決め切ること。4点、5点決められるチャンスがあった。それを決めないと、(相手に)PKで点を取られたりするし、カウンターも速いから。今日の失点もカウンターからだった。人数はいるけれど、人に付き切れなかった。そこは反省点。あとは(攻撃時に)一本調子にならないこと。足もとにつなぐ時と(ディフェンスラインの)裏に出る時、そういうメリハリ、緩急がもっと出てくれば。そういうところがもっと整理されれば面白くなると思う。

(カタールとはアジアカップで対戦しているが)あの時はすごく守備を固めてきたが、監督も選手も変わっている。(対戦するときは)立ち上がりを慎重にして、相手の出方をしっかり見ていきたい。ただし受けてしまうと(相手の勢いに)のまれてしまうから、そこはしっかりみんなではじき返すくらいの気持ちでいきたい。今日くらいの立ち上がりでいければいいと思う。


中村憲剛はゲーム全体が見えていたようだ。怪我をしていたとはいえ、今日の出来は80点くらいではあるだろう。ただ、彼自身はフィニッシャーではないし、きちんと決めてくれる選手がほしいのではないか。もっと点が取れていたというのは本音だろうから。

オシム時代は動かないというイメージが強かったが、昨日の試合は動きは少ないながらもいいポジショニングをしていた。走らなくてもいなければならない場所にきちんとポジショニングをしているなら文句はない。それは効率的なサッカーであり、中村憲剛がその域を目指すならひとつのかたちということだ。

駄目なのは走りもせず、ポジショニングの理解もないこと。その意味では彼は一皮むけたという印象。化けたかどうかはこれからの試合にかかってくるわけだけれども。

シミュレーション未満 (1/2)
日本代表 3-1 シリア代表
(スポーツナビ)

日本の先制点は、開始3分であった。相手ボールをインターセプトした長友が、ドリブルでスルスルと駆け上がり、そのまま右足でシュート。弾道はゴール左隅を揺さぶり、長友にとってはうれしい代表初ゴールとなった。
「スペースが空いたので、とりあえず(前に)行こうと」(長友)

実際、シリアは試合の入り方が悪く、単独で攻め上がる長友に対してはほとんどノープレッシャーだったことは、明記すべきであろう。それでも、見ていて実に気持ちのよいゴールであったことに変わりはない。

そんな長友のゴールに刺激を受けたのか、その後も日本の小さな攻撃陣は前傾姿勢を保ったままゲームを支配。とりわけ、チャンスと見るや思い切ってシュートを放つ岡崎のアグレッシブな姿勢と、攻守の場面で積極的に顔を出す田中達のアジリティー(敏しょう性)が素晴らしい。日本の追加点は、時間の問題であった。

前半26分、右サイドから内田がマイナス方向に折り返し、中村憲がふわりと山なりのクロスを供給。これをファーサイドに駆け上がってきた玉田が左足インサイドで直接ネットを揺らした。流れるようなパスワークから見事なゴールが決まり、早くも楽勝ムードが漂い始める日本。その後、さほど大きなトピックスもなく、前半は2-0で終了する。だが、決して手放しで喜べる内容ではなかったのも事実だ。それはとりもなおさず、当たりの強さもプレーの切れ味も感じられない、シリアの歯ごたえのなさに起因していた。


前半のシリアは内田、長友が高い位置をとっても軽く抜けるようなザル守備で、サイドは崩し放題。あとは真ん中でどう合わせるかという問題だったが、チャンスを多く作った。前半だけでも決定機は5度ほどあり、2点をとったということは、この日のシリア程度のプレッシャーならシュートを枠に飛ばすだけの技術はあるということを示している。長友の折り返しが強かったとはいえ、決定機を空似向かって撃ってしまった岡崎は荷物をまとめたほうがいいくらい、玉田、田中達也は出来がよかった。大久保は消えている印象だったが、それはレッドの影響が残っているかどうかはわからない。

後半は両チームとも、すっかりテストモードとなった。

日本はハーフタイムで、まず3人を交代。玉田と田中達と寺田を下げて、佐藤寿人、香川真司、今野泰幸を投入。今野がボランチに入って、阿部がセンターバックに下がり、佐藤がトップ下、そして香川が左MFという布陣に変わった。この交代について岡田監督は「シーズン終盤で選手の疲労がかなりたまっている中で、けが人を出したくなかった」と説明している。確かに、ハーフタイムで代えた3人は、いずれもけがから復帰したばかり。ここで無理をさせる必要はまったくない。逆に、チャンスを与えられた選手たちにしてみれば、絶好のアピールの場である。とりわけ香川にとっては、内心、期するものがあったはずだ。

香川といえば、先月のUAE戦で代表初ゴールを挙げたものの、その後の再三の絶好期をミスでつぶし、見る者を大いに落胆させていた。この試合で自信を取り戻すことは、本人のみならず、今後の代表の戦いにおいても、必ずやプラスになるはずであった。しかし、当人に必要以上の気負いがあったのか、絶好期に放ったシュートは2本ともネットを揺らすには至らず。後半3分のドリブルからのループシュートはバーを越え、25分の内田のクロスに反応してのヘディングシュートは威力に乏しく、相手DFに難なくクリアされてしまった。試合後は「ワンチャンスを大切にしていかないと」と反省しきりだったが、果たして指揮官はいつまで、香川の真の覚醒(かくせい)を待ち続けるのだろうか。


香川は初キャップのときの輝きをすっかり失ってしまったように見える。動きはいいし、チャンスメイクもうまい。サイドでボールキープもでき、クロスの精度も高い。だが、それだけだ。みずからがフィニッシャーとなったときに彼は上がり症の役者のようにテクニックを忘れてしまう。これではただの上手い選手で彼に代わる選手はJリーグにはゴロゴロいる。香川よりも梅崎や柏木を使ったほうが中盤や前線は活性化するだろう。シリア戦というフレンドリーマッチを考えれば、梅崎、柏木の招集があってもよかったのではないか。

「結果的に3-1(の勝利)で、相手が3バックでサイドがフリーだったことを差し引いても、選手たちはチームが勝つためによく戦ってくれた。ただ、この勝ちが次のカタール戦に対して何も保障するものではないことを、われわれは忘れてはならないと思っています」

結局のところ、試合後の岡田監督のこの言葉が、すべてを言い表していたように思う。何ら歯ごたえが感じられないままに終わった、この日のシリア戦。試合後、にわかに浮上したのが、この試合が本当にカタール戦へのシミュレーションになり得たのか、という疑問である。残念ながら、それは二重の意味で「否」であったと言わざるを得ない。

すなわち、6日後に対戦するカタールは、この日のシリアとは比べものにならないくらいプレッシャーが強く、個の力に優れていること。そして、欧州組とガンバ組が合流すれば、今日チャンスを与えられたメンバーの大半がベンチ、もしくはベンチ外に追いやられるのは間違いないこと。それは、中盤で孤軍奮闘しながらゲームメークしていた中村憲でさえ、決して例外ではないだろう。

極論するなら、このシリア戦の唯一にして最大の目的は「中澤の穴は誰が埋めるのか」――そのための壮大なテストであったとさえ言えよう。だが、こちらについても、100パーセントの確信を得たとは言い難い。

前述のとおり、寺田はけがから復帰間もないため前半で退いたし、後半11分に出場した高木和道は闘莉王との交代であった。寺田と高木、あるいは高木と闘莉王といった組み合わせを試さなかったのは、いくら「組み合わせよりも、選手個人のパフォーマンス」(岡田監督)とはいえ、やはり疑問が残る。そもそも、センターバックのバックアッパーが寺田と高木のみというのも、いささか心もとない。今さらではあるが、北京五輪に出場していた吉田麻也(名古屋)や森重真人(大分)ら、もっと選択肢を広げてもよかったのではないか。もちろん、コロコロ変えるべきポジションではないことは承知している。が、いつまでも中澤と闘莉王に依存しすぎたツケは、想像以上に重い。


そう、この試合はフレンドリーマッチで中澤が怪我で辞退、闘莉王も怪我を抱え、阿部も万全ではないという状態でCBのバックアッパーを試す場であったことは確かだ。勝ち負けは二の次で高木、寺田というコンビを試すべきだった。使えないというのならそれはひとつの答であり、より幅の広い選択肢から中澤、闘莉王の次の世代を見つける必要がある。岡田は2010年までで終わるかもしれないが、日本代表はそのあともずっと続いていく。そのために現在の遺産を食いつぶすだけでは話にならない。

それに中澤はジーコ2006年W杯ドイツ大会で惨敗したあとに代表引退を表明している。後継のCBがいないからと言わざるを得なかったのは坪井が怪我をしたあとにバックアッパーが茂庭しかいないというドイツでのショッキングな出来事にも象徴される、レギュラーの固定化という弊害ではなかったか。

CBはアジアレベルなら通用する選手はたくさんいる。その選手を国際大会で出せるように経験を積ませるべきなのだ。中澤が、闘莉王がいませんでした。すなわち絶対絶命ということでは、ファンとしてはどうなっているのだというしかない。あるいは負けるかもしれないと見なくなるか。

今の日本代表ビジネスはワクワクするようなものではない。W杯で4位以上というのは難しい。それでもその目標に向かって進歩しているのならかまわないのだが、今のままだとまたドイツの痛みをどこかで味わうことになる。

W杯に出られなかったときにサッカーをやっていた人間が感じていた思いを、また思い出さなければ改革というのは進まないのだろうか。あるいはそのときになっても責任問題ばかりで内部紛争がおこるだけなのだろうか。

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