その集大成が浦和であり、日本代表だった。しかし、浦和は何かにがんじがらめにされたかのように動きが悪くなり、日本代表は前線の動きが足りず、得点力不足はやはり個人という話になりつつある。
[外国人監督の方法論] ドラガン・ストイコビッチ&アレックス・ミラー 「超」組織サッカーのススメ。(Number Web)
ドラガン・ストイコビッチとアレックス・ミラー、2人の監督に共通しているのは、チームに組織を植え付けたことだ。しかも、極めて短期間で。
日本のサッカー、Jリーグの特徴は組織力だといわれている。それは確かにそうなのだが、名古屋グランパスとジェフ千葉を見ると、本当にそうなのかという疑問が湧いてくる。
名古屋と千葉は個人能力よりもチームプレーが際立つ、組織力で戦っているチームだ。組織が看板のJの中でも組織力が目立っている。ストイコビッチ監督の名古屋は開幕直後から首位争いを演じ、シーズン途中で就任したミラー監督の千葉は最下位から脱出した。
2人の外国人監督が来て、短期間で組織力が上向いた。他の多くのクラブが、組織力という点で追い抜かれてしまった。そうすると、それまであると思っていた組織力は、実はニセモノだったのかもしれない。
サッカーのピッチ上での組織力とは、簡単にいえば正しいポジショニングである。
そう、サッカーの組織力とはポジショニングであり、プレーエリアを守ることであり、プレーにおけるリスクチャレンジとリスクマネージメントをきちんと理解することでもある。
名古屋と千葉はポジショニングがはっきりしているために、選手たちが瞬時のプレーに迷いがない。その分、プレーにスピードが出て相手の守備網を切り裂くことができる。
まだまだミスパスも多いが、今季の名古屋の躍進、千葉の自動降格圏からの脱出は基本のポジショニングを修正しただけで、選手のレベルが変わらなくても強くなったということになる。それはJリーグの他のチームのポジショニングが曖昧で、ちょっとしたプレーで相手のマークのギャップを作ることができたためではないか。
正解はひとつではない。それはサッカーの本質ではある。だが、こと組織(ポジショニング)に関していえば、監督は「正解」を持っていなければならない。
「そこにいてもいいし、こちらも考えられるかもしれない。まあ、結局自分で考えて動きなさい」
これではチームは絶対に組織化されない。選手たちは個々の正解を求めて、ピッチ上をさまようだけだ。
「君はここにいるべきだ」
ストイコビッチとミラーは、そう言える監督なのだ。それは彼らの率いるチームのポジショニング、動きに曖昧さが少ないことに表れている。正解を持つ監督が率いたことで、それまでぼんやりしていたディテールが明確になった。それが組織力の差を生んだ。要は、それまで組織的だと思っていたサッカーが、かなり詰めの甘いものだったことを2人の監督によって浮き彫りにされたのではないだろうか。
かつて中田英寿はプランデッリの戦術が理解できず、パルマからもフィオレンティーナからも放逐された。プランデッリから指示されたポジションは4-2-3-1の2列目右サイド。中央にこだわる中田はモルフェオとのポジションチェンジを申し入れたが運動量が少ないモルフェオとのポジションチェンジを許せば右サイドが薄くなる。そういう説明があったはず。中田はこれを受け入れられず、ローンに出された。
日本代表も同じ。プレーエリアが重なることがよくある。組織力という部分では名古屋や千葉だけではなく、大学生にも劣る部分がある。
「役割が明確なので、ピッチで迷うことがない」(中村直志)
「コンセプトを理解させる力を持っている」(フローデ・ヨンセン)
名古屋の選手たちが口を揃えるのが、ストイコビッチ監督の明確さだ。
ディテールはシンプルなひと言で説明される。シンプルな「正解」の集合体だけが全体の組織力につながっていく。
仲間のポジショニングはわかっているから判断も早い。ここはサイドチェンジ、いまはオーバーラップ……。迷いがなくなり、ミスは減り、リズムと自信が生まれる。
ストイコビッチはもちろんこのポジショニングの問題が入口に過ぎないことはわかっているはずだ。基本的な部分を触っただけでJリーグではジャンプアップしたが、さらにレベルを上げるにはもっと戦術理解をする必要がある。難しいことではなく、さらにシンプルな正解の積み上げをするだろう。
今季の名古屋の強さは徹底的にこのシンプルな正解だけを積み上げていったことにある。名古屋の選手はこの普通のサッカーに自信が持てなかったというが、結果は優勝争いという現実。来年はもっと強くなるだろう。ベンゲルのサッカーを忘れていた名古屋の選手にスタンダードが戻ってきている。
「戦術については話さない」
ミラー監督は、選手にも箝口令を敷いている。だが、ポジショニングの曖昧さが消え、ピッチ上の混乱が収束に向かっていったのは、はっきりとうかがえる。
池田昇平はマークの強いDFで、マンマーク向きだった。しかし、ミラー監督になってからゾーンへの迷いが消え、不動のレギュラーに定着している。ゾーンシステムの国であるイングランドから来た監督の指導で、やるべきことが明確になったからだろう。
個と組織は対立概念のように語られるが、サッカーでは圧倒的に補完関係になるほうが多い。名古屋も千葉も、組織を整えることで選手の迷いが消え、プレーが改善されている。
千葉もオシムのサッカーからの変化があった。オシムの時代にはあれだけ強かった千葉だが、川淵名誉会長の強奪から凋落が始まった。降格もありうるときにやってきたミラーにより、千葉は確実に安定。そして、降格圏からの脱出が見えてきた。
ヨーロッパでもレトロな指導者からモダンサッカーをよく知っている指導者への変更が目立っている。ドイツは外国人指導者が目立って多い。クリンスマンもアメリカでトレーニングメソッドを学んだという意味ではドイツ以外の文化でドイツを強くしたと言っていいだろう。
今のJリーグは昨シーズン強くても今年のシーズンは降格圏ということが目立っていた。その中にストイコビッチやミラーのような世界水準の監督が入ってきて、基本から叩き込んでいる。
彼らのような指導者が増えればまた戦国時代になるだろうが、来季も続投なら名古屋と千葉は確実にもっと強くなる。
それくらい、組織力という力は強いのだ。弱小チームを強くしてしまうほどに。
6 件のコメント:
サッカーは楽しいすね。ガンバレ日本!
>口臭 原因太郎さん
そうですね。
サッカーは楽しいです。
日本代表も頑張ってほしいものですね。
名古屋、千葉が躍進する事で世界のスタンダードというものを日本全体で受け入れないと。
特に浦和は痛感して欲しいです。
自分たちは時代に取り残された化石なんだと・・・
前任者のセフ・フェルフォーセンがよく「オーガナイズ」という言葉を使っていたのを思い出しました。
彼の時には、コラムで指摘されてるように、相手によって戦い方を変えていました。
しかし、組織的に戦うベースは、彼の次代にできていたのかもしれないと思います。
そこへピクシーがやってきて、確固たるスタイルを確立させました。
難しいことを指導してるのかと思いきや、
実は言ってることはいたってシンプルで、
基本的な部分の指導だったんですね。
そんなグランパスも最近は低調なのですが(苦笑)、
それでも得点力不足によるドローが続いているだけで、
負けたのは9月末の千葉戦(アウェー)が最後なのです。
それ以降5試合は、対戦相手のレベルや調子もあるのでしょうが、
2失点以上は許していません。
もっとも明日の柏戦は、楢崎が負傷したので不安なんですけどね(苦笑)
非常にわかりやすい記事だったので、
私のブログで勝手に紹介してしまいました。
もしご迷惑なら、取り消します。
>ogre an21さん
名古屋はベンゲル時代、千葉はイビチャ・オシム時代に世界のスタンダードを経験してるのですが、ベースをなくしていました。
それを取り戻したというだけで強くなるということをしっかりと認識してほしいですね。
浦和は90年代に流行した戦術でまだ戦っていますから、守備的であるのは間違いないでしょう。
あのチームが攻撃的なサッカーをすると魅力的かもしれませんね。
>どらぐらさん
元ネタのコラムがいいですから、どんどん紹介してください。
ぼくは日本のサッカーのレベルがちょっとしたことで上がることのきっかけになればと思っていますから、サッカーが好きでサッカーのための転載なら歓迎します。
フェルフォーセンのインタビューは開幕前に聞いたのですが、ロジックはしっかりしていました。
それだけでも強くなれそうだったのが、相手によって指示が変わるところまで対応できなかったのかもしれません。
ピクシーの指示はその一段階前のところでしょうか。
ぼくは名古屋に住んでいたことがあるし、J開幕のときには瑞穂によく行っていました。
その縁があってJリーグは名古屋と地元愛媛を応援しています。
幸いカテゴリが違いますが、愛媛が昇格したときには悩みそうです。
楢崎の負傷は心配ですね。
ナビスコで頑張ったGKもかなり反応がよかったので彼でも大丈夫なのではとは思っていますが。
最後までリーグ初優勝を願って応援しましょう。
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