2008年10月14日火曜日

高円宮杯ファイナル、浦和の圧勝はなぜ生まれたか

Takamadonomiya Cup Final Urawa Reds Youth 9-1 Nagoya Grampus U-18 @ Saitama Stadium 2002
Urawa Reds Youth:Yamada 4,76,89 OG 16 Haraguchi 23 Tanaka 43 Sakano 44 Takahashi 51,70
Nagoya Grampus U-18:Okumura 39

浦和レッズユースは赤、白、黒のファーストジャージ。システムは4-1-4-1。

浦和レッズユース (高円宮杯全日本ユースファイナル)
 阪野豊史 
原口元気高橋峻希
山田直輝田仲智紀
 浜田水輝 
永田拓也岡本拓也
菅井順平山地翔
 柴田大地 


名古屋グランパスU-18は白一色のセカンドジャージ。システムは4-4-2フラット。

名古屋グランパスU-18 (高円宮杯全日本ユースファイナル)
アルベス・デリキ・タケオ 奥村情
矢田旭磯村亮太
小幡元輝岸寛大
本多勇喜金編勇佑
岸光西部将成
 岩田敦史 


浦和の4-1-4-1はそのままプレーエリアを守っていては使い勝手が悪いシステムだ。しかし、流動性が加わると恐ろしいまでの化学反応を起こす。

バルセロナは攻撃的に使い、チェルシーは守備的に使った。

ライカールト時代のバルセロナはエトーという絶対的なエースがいて、右にメッシ(ジュリ)、左にロナウジーニョが激しいポジションチェンジを行い、イニエスタ、シャビが積極的に絡んでいく。

モウリーニョ時代のチェルシーはドログバという絶対的なエースがいて、右にショーン・ライト=フィリップス(ジョー・コール)、左にロッベンがポジションチェンジをしながら前線でポイントを作り、ランパード、エッシェンが飛びこんでくる。

浦和レッズユースは攻撃的なスタイルだった。絶対的なエースという点では原口元気になるのだろうか。動きだしにはまだ難があるが、ボールホルダーから見てパスコースが多く、ショートパスをつなぎやすい状態で相手ゴールに向かうことができる。激しいポジションチェンジに名古屋グランパスU-18はしばしばマーカーを見失い、結果的に決定機にフリーの選手を作ってしまった。

これはミケルスが世界を驚かせ、クライフがドリームチームと言われたバルセロナで使ったトータルフットボールでもある。今のオランダにもこのトータルフットボールの流れはあるが、それとは違って原型に近い。このトータルフットボールは全員が今ピッチのどこにいるか理解し、他の9人のフィールドプレーヤーの位置を把握して重ならないように動き、なおかつスタミナが必要なのだが、浦和レッズユースはスタミナ以外の部分ではほとんどと言っていいほど完成していた。

あれだけ頻繁にポジションチェンジをされては、名古屋グランパスU-18は対面の相手が次々と変わり、戸惑いの中で相手選手の位置を見失うしかなかった。この両チームはグループリーグでも対戦しているのだが、名古屋グランパスU-18は戸惑いを修正できなかった。

名古屋グランパスU-18はトップチームと同じ4-4-2フラット。中盤センターのプレスとスピードでボールを奪ってのショートカウンターのシステムなのだが、その出足の部分で浦和レッズユースにかなりの分があった。そしてパスコースもなく、周りが見えていないために外への簡単なパスを出すこともできなかった。

テクニックにはテクニックでというのは難しい。

浦和レッズユースはそれこそ小さな頃からショートパスの練習をしているのだろう。トラップミスも少なく、シュートもほとんど枠に飛んだ。決定的な場面で外すことは少なかった。

止めるとしたらエースを止めるしかないが、原口元気、山田直輝、高橋峻希の3人にマーカーをつけると攻撃ができない。細かくファールを繰り返し、コーナーフラッグのスペースをめがけて蹴るロングカウンターで両サイドのフルバックを下げてスペースを作るか。

ユース年代であれだけのサッカーができると止められるところはないだろう。あるとしたら、自滅かスタミナ切れしかない。ファイナルまでのトーナメントで体力を消耗するというのが名古屋グランパスU-18の計算だったはず。

だから、前半からアタックをかけたということかもしれない。相手が戸惑っている間にフリーの選手ができるだけゴールを奪っておく。相手が前がかりになればさらにカウンターが利く。

日本でこのサッカーを見られるとは思わなかった。ブラジル流だったらまだ止められたはずだ。アルゼンチンのキングシステムもひとりを押さえれば勝負になる。

スペインのサイドアタックも脅威だが、トータルフットボールを相手にしたときのようにマーカーを見失うようなことはある程度のレベルになればなくなる。序盤にあったとしても修正できる。そうじゃなければファイナルまで出てこられない。

浦和レッズユースの戴冠は必然だったと言える。ただ、残念なのはユースのサッカーとトップのサッカーがまったく違うことだ。ポンテのために3-4-1-2にしているのだろうか。ジュニーニョ・ペルナンブカーノリヨンで同じシステムにフィットしているようにトップチームでも実現は可能だと思うのだが。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

この試合を生で観れた私は大興奮!

まさにキリさん、(ここでもキリさんでOK?)がおっしゃる通り!トップでこのサッカーが実現できない事が残念。本来であればトップチームのサッカーをユース世代でもトレースさせて、トップ昇格を果たした選手が試合に出ても、すぐにフィットさせることができるようにするのが本来のスタイルなのですが、こういうサッカーを見せられると、ユースのサッカーを1年かけても良いのでトップで実現できる体制を作ってほしいのですけどね。

kiri220 さんのコメント...

>king-yさん

生で観られるものなら観たかったゲームですね。
現実はテレビ朝日のゲームの途中にCMが入る細切れの放送でしたが。

もし浦和ユースのサッカーがトップチームと同じだったら、スコアはここまで開かなかったにせよ、勝敗は逆になっていたでしょうね。

逆にトップがユースのサッカーをしていれば取りこぼしはあるにせよ、浦和の独走になっていたでしょう。

エンゲルスのサッカーはトルシエの遺産のようなもので、彼のサッカーは2002年で止まっているのではないかとさえ思ってしまいます。

今季も来季もタイトルを捨ててでもこの魅力的なサッカースタイルを構築することができれば、浦和だけじゃなく、Jリーグのサッカーは飛躍的にレベルアップするでしょうね。

このブログのメインタイトルはキリのハットトリックという意味のイタリア語なので、キリで大丈夫ですよ。