2009年9月10日木曜日

日本は成果と課題を多く抱えてオランダ遠征を終える

Friendly Match Japan 4-3 Ghana @ Stadion Galgenwaard
Japan:Kengo Nakamura 53,Tamada 78,Okazaki 79,Inamoto 83
Ghana:Asamoah Gyan 31,47,Amoah 66

ガーナ戦後 岡田監督会見 (1/2)
国際親善試合
(スポーツナビ)

前半にPKを取られて、ハーフタイムに「いいシミュレーションになった。この後に、ガタガタと崩れるのか、最後まで戦い切るのか見せてほしい」と。これは素晴らしく、全員が慌てることなく戦ってくれたと思います。ただ前半に決定機が3回あったと思うんですけど、そういうものを決めていかないといけない。それとディフェンスに関してはロングボールに対して、こういう相手では1対1ではやはり厳しい。常に周りが戻って2対1の状況を作るようにしないといけない。いろんなポイントが見えたと思います。ただ、無理を言って欧州遠征を組んでいただいて、最後に勝って、そしていろんなテーマも見つけられて、いい形で(遠征を)終えられたと思います。


問題はこれで岡田が成長したかどうかだろう。選手の組み合わせによってはチームの動きも変わってくる。中村俊輔が出ているときには、どうしても彼にボールが集まるがアウトしたあとはゴールに向かうアタックができたということをどう考えるか。中村俊輔が不要という議論ではなく、中村俊輔という戦術が潰れたときのプランBがきちんと用意できているかという問題である。

――2トップで臨んで得点が取れたことについて。それから、稲本と玉田を入れて攻撃のリズムができたように見えたが

オランダ戦の反省として、ビルドアップすることで満足しているというか、ゴールに向かうプレーが少ないと。その意味で、点を取るためにゴールに向かって走っていく選手を増やしていかないといけない。2トップの方がよりやりやすいだろうということで2トップにしたんですが、これは4-2-3-1でもそういうプレーをしていかないといけないと思っています。彼ら(ガーナ)のウイークポイントはサイドの裏だったと思うんですけど、前半は2トップがサイドまで流れ切らずに止まってしまう形でした。でも後半はそこまで流れ切って中が空くと。それで玉田なんかが生きたんじゃないかと思います。それまでも流れは決して悪くはなかったと思っています。ただ、彼らはフレッシュで、ここでアピールしようとする高いモチベーションがあったので、非常に積極的にプレーしてくれたと思っています。

■前田のプレーには非常に満足している

――前半、あれだけ前にラインを上げて相手の背後を突こうとしていたが、中盤でかいくぐってビルドアップしていくような攻めが見られなかったことをどう考えるか

僕自身、前半をトータルで見た場合、ビルドアップに関してもそれほど問題があったとは思っていません。ただ立ち上がり、相手の迫力にちょっと腰がひけたところがあったことは事実だと思います。それでボール際の判断が遅くてミスパスになる。また最初の感覚として「これなら通る」というようなパスが、ガーナは追いついたり足が出る。それが前半の途中まであったと思います。それとともに2トップが、2人とも相手のDFに入り込んだところから動き出すために、どうしても縦へのパスの距離が長くなっていたので、ハーフタイムには早めに斜めの関係というか、前後の関係になって1人が裏、1人が下がるということを意識するようにと(指示しました)。そのあたりも、よくなったと思っています。


ここは中村俊輔を下げてからリズムがよくなったように見えたがという質問をぶつけてほしかった。そういうことが言えないところに日本のマスコミが成長しない部分があるのだろう。スター選手でも悪ければ叩く。それができなければ意味がない。

――相手のゴールに向かって人数をかけるのはリスクを負うことになり、後半にDFが1対1となるケースが多く失点もあった。この段階では仕方がないと考えるか

仕方がないということではぜんぜんないです。ただ、日本やアジアでは、相手のGKがボンと蹴って中澤が対応していたら、まず大丈夫という周りのムードというかイメージがあります。でも、彼らにはそれが通用しない。全力で周りが戻らないといけない。2点目のときも闘莉王がジョギング気味で戻っていて結局やられた。これは体で感じたことだと思うので、今の段階では仕方がないではなくて、われわれが劣っていたところだと。この感覚は忘れないでもらいたいと思っています。


中澤はアジアではトップレベルかもしれないが、絶対的なDFではない。フィジカルは確かに強いが、足元の技術はそれほど上手くないし、スピード勝負になると負けることが多い。サウジアラビアにドリブル突破されたことは記憶に新しい。

身体能力が高い相手にひとりで守るのは難しい。通常はカウンターに備えて3人は残す。その部分の徹底ができなかったということだろう。

ただ、ガーナの3点目は完全にスピードで抜け出された。あの部分をどうするか。ハイプレスで守備ラインも上げてというアリゴ・サッキのプレッシング理論ではなく、モウリーニョが広めたプレスと守備ラインのプッシュアップは切り離すということも考える必要があるだろう。

――攻守の切り替えについて。特に相手のプレスが強いときには、ボールを取ることが精いっぱいで、味方の位置を確認しないとパスができず、速い攻撃ができなかったように思うが

もちろん、できるに越したことはないんですが、サッカーの試合では片方が10の力を出したら、もう片方は8くらいの力しか出せないということがあります。どちらが先手を取るかによるんですけど。例えばオランダでも、われわれが速いプレスをかけたときに、それをかいくぐって速い攻撃ができたか。ほとんどできなかったと思います。まずは、われわれができたことを見ていくこと。足りないところを修正、修正というのは、決してチームを伸ばすことではないと思うので。もちろん、理想というものは追わなければならないとは思いますが、今できていること、それと今はできていないけれど、やろうとしてチャレンジしていること、そういったことを見ていきたいと思っています。ものすごいフルコートでプレスをかけられても「トントン」と行ければ理想ですけど、そこまでは今のところ要求していないというか、あまりそこは見ていないですね。

――稲本に関して、彼は欧州組の1人だがなかなか出番がなかった。彼に何を期待しているか、そしてプレーにどんなことを求めているか

彼は本当にプロフェッショナルな選手という意味で、尊敬できる人間だと思っています。どういう状況であっても、自分がチームのためにやるべきことというものを考えて取り組んでくれている。ある意味、チームを作っていく上で非常に貴重な存在だと思っています。それとプレーの面でも、ある程度フィールドが空いてきたときに、彼の良さであるダイナミックな動きが生きてくる。ただ、クローズなときは今のところ、長谷部、遠藤がちょっと上かな、という判断はしています。ただ彼は、いろんな試合の流れの中で、押し込まれた試合、または(スペースが)空いてきた試合でユーティリティーで使える貴重な戦力だと思っています。彼はまた向上欲があるので、まだまだ伸びてきて、遠藤や長谷部のポジションを脅かす可能性は十分に持っていると思っています。


ポジティブトランジションについてはうまくいっていたように重う。しかし、ネガティブトランジションではディレイに徹するわけでもなく、相手にボールを持たせてシンプルにパスを出させる場面が目立った。アタックにいっているときから守備への切り替えに難がある。

たしかにプレスをかけつづけてボールをつなぐというのは難しいが、ガーナ戦ではハイプレスという感覚ではなかった。簡単にボールが取れたということもあるだろうが、それならもっとミスを少なくすることも考えるべきだった。

ショートパスはインターセプトされた場合のカウンターが恐ろしい。ミスを前提にしてプレーすることはないが、それでもミスをしたときにどうするかというネガティブトランジションのことは考えなければならない。

稲本についてはフルタイムは任せられないが、相手が疲れてきてどうしても点がほしい場面では彼のダイナミズムが活きてくるということか。そのことで稲本が納得するといいのだが。

――本田の動きについて

彼は、左だとどうしても視野が違うということで、今日は右サイドでチャレンジさせようとしました。やはり右の方が安定感もあるし、プレーとしては、僕は彼なりのプレーをしてくれたと。ただもっとできる選手だし、できなければ中村俊輔がけがをしたときに、誰が出るんだという問題も出てくるので、彼には今はあまり「満足している」という言葉はかけない方がいいのかなと。まだまだ、もっとできるはずだと思っています。

――オランダ戦の前日に「釣れてもよし、釣れなくてもよし」という言葉もあったが、課題、やり残したこと、通用したところを具体的に教えてほしい

あまり詳しく言うと、わたしのノートを公開することになるんですけど。この前、言いましたように、攻撃においてわれわれがやろうとしているビルドアップは、そこそこプレッシャーをかけられてもできるという感触。ディフェンスにおいては、ある程度、前から行くと、今日もそうですけど、結構レベルの高いチームでも蹴るしかないものだなという感触。その中で、やはり課題として、守備に関しては最後のところ、1対1でのシュートのところを抑える、または1対1でダメなら2対1にするということ。プレッシングというのはあくまで手段なので、そうではなく点を取らせないという原点のところ。

攻撃に関しても、ビルドアップは通用したけれど、じゃあ点を取らないと意味がないと。今日は最後に取れましたけど、やっぱり前半の五分の戦いの中で点を取りたいというのは、本音の中ではあります。それ以外に、セットプレーでまだまだ、今日もPKで取られましたけど。ただ、まだまだこのチームは伸びていけるのだと思いますし、そのための時間もわれわれにはあるので、十分にW杯までに間に合うと信じています。


本田圭佑はガーナ戦でもシュートは撃てず、存在感を見せることができなかった。いいパスがこなかったということはあるが、ゴールゲッターとしての認識はされていないということだろう。

ビルドアップは通用したけれどもという部分は、そうなのかという疑問符がある。ガーナはオープンに戦ってくる相手だ。タイトな戦術を持っているわけではない。まだ身体能力の高さだけで勝っているチームで、ランキングも日本と同じくらい。アフリカの強豪ではあるが、ヨーロッパの列強に比べるとランクは落ちる。

同レベルの相手に通用したと喜んでいるようではまだまだかもしれない。本戦までにガーナも学習するだろうからね。

試合後 ガーナ代表ミロバン・ライェバッチ監督会見
国際親善試合
(スポーツナビ)

――ガーナは前半は試合をコントロールしていたが、MFのL・キングストンが下げられてチームが崩れたような気がするが

キングストンの交代は彼が痛んでいたからだ。これ以上リスクを犯したくなかったので、ムンタリを中盤に入れた。失点は反省しなければならないが、3-3になっても勝ち越すことは可能だったと思っている。

――自分のチームの傾向についてどう思うか。またストライカーの問題についてはどう考えるか

今日の試合で勉強になったことがあるので、それは分析しなければならない。今回のように、選手が急に動かなくなることがたまにある。それは解決せねばならない課題だ。ストライカーについてだが、たとえばギャンはW杯にも出場したが、その後けがをしてしまい、久々にチームに戻ってきた。そのことはうれしく思う。

――DFのメンサーについてはどうか?

メンサーも経験のある選手。ただ、W杯出場が決まったということで(チームとして)リラックしすぎていた。これも改善しなければならいない問題。今日は親善試合で良かった。

――なぜこんなに選手を交代したのか? 特にGKを前半だけで下げたのはなぜか

GKのR・キングストンが交代したのも痛んでいたからだ。チームはみんな疲れていて、休ませたかったという判断もあった。(キングストンに代わる第二GKは)けがをしていて今回は出られなかった。

――GKは2番手がいないことをどう解決すべきか。また失点したのは、やはり集中力が低下していたからではないか

集中力が費えたのは個人の問題ではなく、グループ全体のメンタルの問題。これを分析して再発しないようにしたい。GKについては、交代した選手のせいにしてはいけない。DFとのコミュニケーションにも問題があったと思う。


ガーナにとって日本戦は十分収穫があったゲームだったようだ。レギュラーと控えに大きな差があり、替えが効かない選手が多い。GKは第一、第二とその他のメンバーでは大きな差があったようだ。

それから気が抜けたプレーも目立ち、その部分はアフリカの特徴でもあるのだが、その改善もきちんとやっていくということでガーナは強敵になるだろう。

本戦で当たったときには別のチームになっていたと考えたほうがいいだろう。それは日本も同じだと信じたいものだが。

最終回 オランダから持ち帰るもの(9月9日@ユトレヒト) (1/2)
宇都宮徹壱のオランダ日記
(スポーツナビ)

この日の日本対ガーナは、オランダのユトレヒトで行われる試合ではあるが、JFA(日本サッカー協会)の主催である。したがい、ピッチを囲むバナーはすべてが日本企業で固められ、試合時間も日本のゴールデンタイムに合わせて水曜日の12時キックオフに設定されている。この、およそJFLでもあり得ないようなスケジューリングは、主催者側が「日本のファンがテレビで見る試合」と割り切っているからにほかならない。しかしながら、JFAのこうしたスタンスを、誰も一概に否定することはできないだろう。代表の海外遠征は、チームには大きな経験をもたらすものの、送り出す側にとっては金が出ていくばかり。加えて、入場料収入の確保が難しいとなれば、あとは放映権料で何とかペイさせたいと考えるのは当然の判断と言えよう。


そう。夏のヨーロッパは決して涼しいわけではない。しかも正午キックオフとなればベストコンディションでできるわけがない。スペインのセグンダの試合でテレビ放映の関係で正午キックオフの試合になることは問題視されているほどだ。

それにも関わらず、日本サッカー協会は日本のゴールデンタイムに合わせて正午キックオフとした。ナイターなら別の展開だっただろうが、そういうことにもならなかった。本気で強化するならお金を惜しむべきではなかったにもかかわらず。やはり、電通のやったことなのだろうか。

■あらためて、オランダ遠征の成果と課題とは?

この「ゴール前で数的優位を作る」意識に加え、「先制されても決してあきらめない」気持ちを、途中交代の選手も含めて全員が共有していた。この事実こそが、奇跡のような逆転劇を演出した一番の要因であった。と同時に、敗戦の教訓を真摯(しんし)に受け止め、問題意識を共有化し、そして強い気持ちで次の試合に臨む、日本の選手の短期間での成長を間近で見ることができたことに、私は取材者の1人として、密やかな喜びをかみ締めている。おかげで明日は、実に晴れやかな気持ちで帰国の途に就くことができそうだ。

あらためて、今回のオランダ遠征の成果と課題について考察してみたい。全体的には、岡田監督の「無理を言って欧州遠征を組んでいただいて、最後に勝って、そしていろんなテーマも見つけられて、いい形で(遠征を)終えられたと思います」という言葉に集約されていると言えよう。より具体的にまとめると、以下の通りになる。

●できたこと、手応えが感じられたこと

・アタッキングサードまでのビルドアップ
・効果的なプレッシング
・攻撃時に数的優位を作ってゴールを決めること
・メンタル面の強化と経験値のアップ

●できなかったこと、改善すべきこと

・早い時間帯でのゴール
・1対1に頼らない連動した守備
・最後まで持続しないプレッシング
・バックアッパーの確保(特にセンターバック)

何とも盛りだくさんの「お土産」を持って、代表のメンバーはそれぞれのクラブへと帰っていく。一方、岡田監督は、ガーナ戦の余韻に浸ることなく、慌しくヨーロッパのW杯予選視察に向かった。あらためて今回のオランダ遠征が、世界と戦うためのスタートラインであったことを強く実感する。確かに、課題が山積しているのは間違いない。それでも指揮官は、今日の会見でこう述べている。「まだまだこのチームは伸びていけるのだと思いますし、そのための時間もわれわれにはあるので、十分にW杯までに間に合うと信じています」と。その言葉を信じたい。信じたいけれど、正直、100パーセント身を委ねることができないのが、何とも悩ましいところだ。

選手たちと同様、オランダ戦とガーナ戦を取材してきた私たちもまた、少なからずの希望と疑念をオランダから持ち帰ることになる。


日本代表の問題は以前の試合でできていたことが、次に招集されたときにはできなくなっていることにある。ヨーロッパの列強はいろんなクラブで違った戦術をとっていても、代表の戦術をすばやく吸収できる柔軟さがある。

その点に日本は日本代表の戦術がクラブの戦術となりやすく、そこで違った解釈がされて、招集したときには別々の意識になっていることになる。

まずは選手が意識の改革をしなければならないだろう。本戦で負けてから問題意識を共有するというのでは遅すぎるのだから。

2 件のコメント:

どらぐら さんのコメント...

俊輔が下がって以降の逆転劇ですから、
やはりそこに付いて質問して欲しかったですけどね。
誰もが気になるところですから。

現地時間で正午のキックオフは、考え物ですね。
オランダ戦のように14時(日本では21時)キックオフでも良かったのでは。
視聴率的にも、この時間帯の方が良かったのかもしれません。
(水曜のゴールデンはフジが強い)

せっかく岩政を選んだのに、結局出番はありませんでしたね。
センターバックのバックアッパーを試す貴重な機会と思われましたが・・・。

kiri220 さんのコメント...

>どらぐらさん

3点入ったことは中村と関係あるのかというのは突っ込みどころですよね。
それを聞かないでどうするというレベルです。

視聴率しか考えていないマッチメイクは本当に強化につながるかという面もありますし。
オランダでは日本向けの試合という感じでとらえられていたみたいです。

岩政は使われませんでしたね。
ここが岡田の小心者というところでしょう。
試さなければならないところでどうして試さないという。

ジーコと同じでテストマッチでも勝たなければならないと思いこんでいるのでしょうね。

まあ、ジーコはその思いこみから脱出できずにCSKA モスクワも解任されてしまったわけですが。