Netherlands:Van Persie 69,Sneijder 73,Huntelaar 87
オランダ戦後 岡田監督会見
国際親善試合(スポーツナビ)
日本の場合、個々としてではなくチーム全体として戦っていくことがどうしても必要ということだったんですが。ある程度できるとき、そしてどこか一カ所、またはどこかワンピースが欠けると、攻撃で人数が足りない、守備でも後ろだけで守れといってもなかなか守れない、ということがはっきりしたと思っています。90分持たなくて、これから時間を伸ばしていかないといけないんですが、ある程度、攻撃のビルドアップはできると。あとはゴール前での最後のところでスピードを上げることをトライしていかないといけないと思います。
つまりは今日スタメンで出た選手11人で戦わなければ岡田の戦術は機能しないということなのか。誰も怪我をしない、誰もサスペンションにならないというのはモダンサッカーでは不可能。その中で、今日は選手が揃っていなかったらと言い訳をするのか。
この冒頭の言葉はどう考えても言い訳だ。ハイプレスを90分続けられるわけはないし、どこかで弛めることもしなければならない。ハイプレスをかけるならゴールを奪わなければならない。ハイプレスをかけつづけることが勝利への道というのはアリゴ・サッキのプレッシング理論と同じだが、今はその理論は修正されて、ハイプレスだけでは勝てないサッカーに進化している。なぜ、時代遅れの戦術で戦うのか。
――ベスト4を目指すということだが、世界との力の差を率直にどう思うか
これくらいの差だというのは自分でも分かっていたと思います。この差の中でいろんなストーリーがあると思うんですが、今日のストーリーではないストーリーも、十分に描ける可能性があると思います。
――今までやってきたことをぶつけて課題が見えればいいということだが、見直しが必要なところ、根本的に変えなければならないところは出てきたか?
あらためて、今までやろうとしたことを90分やり切る、やり通すことをしない限り、なかなか勝ち目はないのではないか、と感じています。
■戦い方を変えるのではなくて、90分もつようにする
――(相手のボールホルダーに)近い選手からプレスをかけないとボールを詰め切れないということだが、玉田から本田に代わってああいった展開になったということか?
いや、本田だけの責任ではないです。今はまだ90分もたないかもしれないけど、でも来年(の本大会)までには90分間もたせないと勝ち目がない、とは選手には伝えています。そういうところで、だんだん(プレッシャーが)緩くなったということです。
最後は完全に足が止まっていた。棒立ちに近い選手もいたのだ。W杯南アフリカ大会は南半球で冬の開催だから、この試合のように動きががくんと落ちることはないにしろ、よくなるのは相手も一緒。ヨーロッパの列強はプレッシングサッカーを一世代前に経験してそのかわしかたも知っている。その相手に愚直にプレッシングサッカーで戦うのか。前途は暗い。
――交代カードは2枚しか使わなかったが、もっとフレッシュな選手を使うとか、新しい選手を試すといったことは考えなかったのか?
今回、テストというのは戦い方以外では本田くらいで、選手はほとんど分かっていますので、そういうつもりはありませんでした。それと闘莉王はちょっとへばっていましたが、それ以外、交代しないといけないくらい悪い、ということはなかったのでこのままいかせてみようと思いました。
――前半かなり激しい勢いで相手を追っていたが、どれくらいペースがもつかについては想定内だったのか?
これはサッカーなので、その前にどこかで(先制点を)入れられていたらもっともたなかったと思いますし、コーナーキックのこぼれ球から点が入らなかったらもっともっていたかもしれないです。まあ、90分持たないということだけは、大体予想がついていました。
――あれくらい立ち上がりから飛ばすというのは、ペース配分に問題があるのではなく、あれを90分間続けないといけないということか?
そうです。逆に言うと、それ以外にわれわれが、目標を達成する道はないと。あれではもたないから、戦い方を変えるのではなくて、もつようにする、それだけです。
最後は全員交代したほうがいいと思うくらい選手はばてていた。前半ならデ・ゼーウのパスも通らず、スナイデルの得点もなかったし、エリアからのクロスに振り回されてフンテラールがフリーになるということもなかったはずだ。それをやらせてしまったということはもう動けなかったということ。それがわからない監督が今は率いていて、このままのサッカーを続ければセミファイナルまで行けると言っている。
行けなかったらどうするのか。コアはファンはともかく、にわかファンは今度の敗戦で壊滅的になるのではないか。
――ゴール前の課題だが、具体的にどう形を作っていくのか
これはメンバーの組み合わせによっても変わってきます。今日のメンバーではどうしても中央に寄ってしまう。中央からサイドの、大きく外に開くのではなくて、サイドの外と中の間くらいにスルーパス、つまり中から外へのスルーパス。今は外から中を狙っていますけど、そういうようなことを今日のメンバーではトライしていかないといけないと思っています。
スルーパスを基本に攻撃の組み立てを考える監督というのは初めて聞いたような気がする。モダンサッカーのスペースがない中でスルーパスを通すのは至難の業。そうじゃなくても、スルーパスというのは10本に1本通ればビッグチャンスになるという確度の低いプレーなのだ。だから、世界はプレッシャーの少ないサイドかあの崩しを考えている。サイドからのクロスはDFも対応しづらく、競り勝つ可能性が高い。そのアタックを捨ててスルーパスで崩すというのだから、シード国に入る8つの国は日本が一緒のグループに入ってほしいと思うのではないか。そのうえ、90分ハイプレスをかけるというのだ。疲れてくるとプレーの精度は落ちる。疲れても難しいプレーにチャレンジさせるというのはどれくらい無謀なのかわかっているのか。
こんなに怖くない戦術を基本としている国なら勝ち点3が確実に計算できるのだから。
試合後 オランダ代表ファン・マルワイク監督談話
国際親善試合(スポーツナビ)
――今日の試合は70分間最悪でしたね
ここまでわたしが率いた中で最悪の試合。“70分”は言いすぎだが、非常に悪い前半だった。
――その原因は?
チームとして試合の流れに乗れなかった。ビルドアップが悪かった。非常に良い対戦相手で、彼らはプレッシャーを掛ける勇気を持っていた。
オランダはもっとファン・ブロンクホルスト(左サイドバック)を探すべきだった。彼のところにスペースがあった。日本は中に入っていくチームだったからね。
組み立てがあまりにも難しかった。前にボールを出すところを見つけてパスを出しても、すぐにボールを相手に奪われてしまった。今日のスナイデルやデ・ヨングみたいにフラストレーションを出すことは、今後あってはならない。
ファン・マルワイク監督はこの後、スナイデルのファールはレッドだったと認めている。ああいうことが合ってはならないと。
ただ、オランダはプレスをかけられたときに慌ててしまい、スペースを探すことを忘れてしまったことに対して反省をしている。選手たちは日本に対して正面から潰すことばかりを考えてフラストレーションを溜め込んでしまった。それが苦戦の原因ではないか。
結局、オランダが得点したのは日本の足が止まってからだし、日本以外の国ならもっと上手くゲームコントロールしていたかもしれないのだ。
ハーフタイムには「悪い試合でも勝つことを学びなさい」と選手に言った。試合が悪くとも混乱しない方がいい。今までやった中で今日は最悪の試合だったが、3-0で勝った。それは勉強になった。
列強であるオランダと発展途上国の日本ではこの部分が大きく違う。70分までは通用したプレッシングサッカーを90分持てば戦えると継続する監督と、ハイプレスを受けると混乱するからそこを修正しようとする監督のどちらがましかは考えるまでもない。
第3回「カミカゼ・サッカー」への不安(9月5日@エンスヘーデ) (1/2)
宇都宮徹壱のオランダ日記(スポーツナビ)
試合開始前の2時間半前、午前11時30分にオランダ戦が行われるアルケ・スタディオンに到着。すでに会場の周りはオレンジ色のレプリカユニホームを着たオランダサポーターが続々と集結していた。さっそく手当たり次第に、今日の予想スコアを聞いてみる。10人に聞いた結果は「3-0」と「2-1」が3人ずつ、あとは「4-0」「3-1」「2-0」「1-0」が1人ずつ。もちろん全員が自国の勝利を予想していた。オランダの得点が意外と少ないことについては「やっぱりフレンドリーマッチだから」。では日本の得点者は誰かと聞くと全員が「本田(圭佑)」と答えていた。
「間違いなくウチが勝つけど、日本が点を決めるとしたら本田だろうね」というのが、どうやらこの国における模範解答らしい。もっとも、得点者として本田の名が出てくるのは、当地で有名な2人の日本人選手の1人であるからにほかならない(ちなみにもう1人は、言うまでもなくフェイエノールトで活躍した小野伸二であり、私は数人のオランダ人から「小野はどうしている? 元気なのか?」と尋ねられた)。要するに、オランダにとっての日本に対する知識と認識は、その程度のものでしかないのである。残念ながら。
もうひとつ、具体的な例を出そう。今週発売された日本のサッカー専門誌『サッカーマガジン』と『サッカーダイジェスト』は、表紙も巻頭もオランダ戦一色。まさに「総力特集」といった感がある。では、オランダの専門誌はどうだったか。現地在住のライター、中田徹さんが見せてくれた「フットボール・インターナショナル」最新号は、表紙もトップ記事も国内リーグの選手で占められており、日本戦の記事は申し訳程度に中ほどに半ページほどの扱いであった。はっきり言ってオランダ女子代表よりも、ニュースとしてのバリュー(価値)は下なのである。こうした事実を突きつけられると、FIFA(国際サッカー連盟)ランキングの差以上に、何とも落胆させられる。ちなみに最新のランキングでは、日本40位、対するオランダはブラジル、スペインに次ぐ3位である。
まあ、いい。厳しい試合になることは百も承知だ。しかしその上で、90分のうちの何分かは、日本がオランダを驚かせるプレーを見せてほしい。日本が本当にワールドカップ(W杯)で「世界を驚かせる」ためには、まずはこの日の試合で、ほんの一瞬でもいいから「オランダを驚かせる」べきである。問題はその瞬間を「どのくらいのクオリティーをもって」そして「どれだけの頻度で」見せることができるか、であろう。
オランダ人にとって、日本は勝って当たり前の相手。最近活躍している本田圭佑はよく知っているけれども、他の選手は誰かはわからない。本音で言えば、もっと強いところとやったほうがいいのではないの。まあ、日本とも本戦で当たるかもしれないねというところか。世界を驚かすどころか、世界から認知もされていないというのが現状。ベスト4という岡田の発言は、またできもしないことをという捉え方ではなく、そんなことを言っていたことすら知らないということなのだろう。
「その前にどこかで(先制点を)入れられていたら、もっともたなかったと思いますし、コーナーキックのこぼれ球から点が入らなかったら、もっともっていたかもしれないです。まあ、90分持たないということだけは、大体予想がついていました」
指揮官はそう語っているが、いずれにせよハイプレスを続けることによる、体力、気力、集中力の限界が70分前後に起こったのは、必然と見てよいだろう。では、残り20分を日本は今後、どう戦っていくべきなのか。岡田監督の結論は、はっきりしている。
「それ以外にわれわれが、目標(W杯ベスト4)を達成する道はないと。あれではもたないから、戦い方を変えるのではなくて、もつようにする。それだけです」
■精神力に依拠することの危険性
ここで私は図らずも、オシム前監督のこの言葉を思い出す。
「選手は機械ではない。人間なのですよ」
会見で発せられた言葉を、ことさらあげつらうことは、もともと本意ではない。それでも私には、この岡田監督の発言が「90分間、プレスをかけ続けられるマシンになれ」と選手に要求しているように聞こえて仕方がないのである。
もちろん日本の現有戦力と、W杯本大会までに残された時間を逆算するならば、そのような答えが導き出されるのも、ある意味仕方のないことなのかもしれない。しかしながら、日本サッカーの進む道は、果たして選手が「マシンになること」なのだろうか。
そう、岡田は選手が人間だということを忘れている。ハイプレスで90分走り続けることはルールを守る限り無理なのだ。といって、ハーフタイムに薬物注射をして疲れをとるわけにはいかない。そんなことをすれば、日本は永久にサッカー界から追放されてしまうだろう。
だったらどうするか。スパルタで90分持つように走らせるのか。しかも世界レベルで通用するように。相手が受けに回って体力を温存することも許さず、攻め続けられるならそれでもいいが、それは無理だ。9カ月でどこまでスタミナが上がるというのだろうか。
当の選手の言葉にも、耳を傾けてみるべきであろう。中村憲は「やみくもに(プレスに)行くんじゃなくて、向こうのセンターバックのボール運びを見て、自分が『行ける』と思ったときに行って、それを周りが連動して、というのを何回できるかだと思う」と、状況に応じた判断の必要性を語っていた。至極、当然な話だと思う。
玉田は「前半のようにプレスをかけていれば、それほど差はないと思った」としながらも「ハイプレスのまま90分間プレーすることは難しい。行けるときは行って、休むときには休むようなメリハリを付けていかないと。それが日本の特徴でも、難しいものは難しい」と、偽らざる気持ちを吐露している。これまで、FWのレギュラーとして起用し続けてきた選手から、このようなコメントが発せられたことについて、指揮官はどのような判断を下すのだろうか。いささか気になるところではある。
岡田は当の選手たちからも疑問を投げかけられている。このままの状態が続けば反旗を翻す選手が出てきてもおかしくない。それに日本代表の試合はベストメンバー規定が適用されるわけではない。調子のいい選手を使って、選手交代をきちんと行えば、ある程度はプレッシングサッカーもやれるはず。それはどうしてもゴールを奪いにいくとか、リードして体力があるときに相手の攻撃の芽を摘んで追加点を奪い、心を折るというときにやるべきではあるだろうが。
「今回、テストというのは戦い方以外では本田くらいで、ほかの選手はほとんど分かっていますので(中略)。それと闘莉王はちょっとへばっていましたが、それ以外、交代しないといけないくらい悪い、ということはなかったので(以下略)」
この言葉を、私なりに解釈するとこうなる。すなわち、今後の日本代表は「90分間マシンのように戦える選手」を少数精鋭で鍛えていく――と。だがこれでは、まるで特攻隊の錬成のようではないか。仮に、そんなチームが完成した暁には、きっと諸外国から「カミカゼ・サッカー」と恐れられることだろう。序盤からペース配分など考えず、鬼気迫るプレッシングをかけ続け、体力が尽きたら日本男児の敢闘精神で戦い抜く。確かにサッカーの世界でも、時に精神力が必要であることは認める。しかしながら、それに依拠しすぎるとロクな目に遭わないことを、私たちは過去の歴史から学んでいるはずだ。
今回のオランダ戦では、現状の日本の課題のみならず、指揮官が目指すサッカーの本質もあらわになった。もちろん岡田監督とて、実は会見での発言とは裏腹に、密かに軌道修正を模索しているのかもしれない。しかしながら、もしこのまま科学的な裏付けのない「精神論」を本大会まで追求しようというのであれば、今日のスコア以上に、ただただ打ちひしがれるばかりである。はっきり言おう。もしも日本が本当に「カミカゼ・サッカー」を指向するのなら、それはすなわち「未来を放棄する」ことと同義である、と。
たしかにこんなサッカーでは3試合どころか1試合でへとへとになってしまう。そして次の試合も選手は休むことを許されずピッチに送り出されるのだ。短期決戦で体力を消耗するばかりの戦いをしていては選手は壊れてしまって終わるのではないか。
このインタビューを読んでも、岡田続投なのだろうか。
2 件のコメント:
仮にも選手経験があるのならば、90分間ハイプレスを続けることがどれだけ厳しいか、
私のような未経験者よりも監督の方がよほどわかると思うのですが、
それでもやると言うんですかね。
宇都宮さんの仰るように「さすがに軌道修正を模索している」と信じたいのですが・・・。
>どらぐらさん
ぼくも高校生まで選手でしたが、ライトウイングだったために簡単なフォアチェック以外は守備を免除されていました。
いざとなったときに攻められないのでは意味がないと。
かなり昔でも攻める力を残しておくという考え方があったのに、どうなっているのかと思いますね。
サッキのプレッシング理論も過去のものになりつつあるのですけどね。
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