2009年9月7日月曜日

日本の敗戦は本田圭佑ではなく、岡田の戦術だった

Friendly Match Netherlands 3-0 Japan @ Arke Stadion
Netherlands:Van Persie 69,Sneijder 73,Huntelaar 87

岡田ジャパンの課題明確に。
テーマは「さぼり」と「リズム」?
(Number Web)

岡田武史監督は試合後の会見でこう述べた。

「日本の場合、チーム全体で戦っていくことが必要。1つでもピースが欠けると攻撃は足りなくなるし、守備も守れないということがはっきりした」

「最初が抜けると後ろだけでは止められない、90分やりとおすことが必要」

「欠けたピース」が本田を指していることは明らかだ。「全員守備、全員攻撃」を徹底できなかったことに敗因があったというのが指揮官の分析だ。

では本田が玉田のように激しくフォアチェックしておけば、日本の悲劇は生まれなかったのだろうか。

そうではないだろう。いずれにせよ、守備の崩壊は起こっていたように思える。あれだけ連続でハイプレスを仕掛けていけば、途中で息切れしてしまうことはある程度予測できた。ハイプレスが功を奏した前半を終えたところで、「本当に90分間持つのか」と少なからぬ人が不安を覚えただろう。だから、本田の存在はあくまできっかけに過ぎず、敗因の議論はハイプレスの是非に向かうべきだと思えてならない。


ハイプレスは守備の手段ではない。高い位置でボールを奪ってショートカウンターというゴールを奪うための手段だ。アリゴ・サッキのプレッシングサッカーでも90分常にプレスをかけつづけるというサッカーではなかった。そんなことは人間であるかぎり無理だし、ゴールを奪えば相手が前に出てきてカウンターが生きるという戦術だったはず。それにポゼッションを加えられればいうことなしだった。

にも関わらず、岡田は守備の手段としてハイプレスを選択した。目的と手段を間違えているとしか言いようがないのだが。その犠牲になったのが本田圭佑と言うわけだ。

前線からのプレッシングは、岡田ジャパンのコンセプトの中でも根幹にあたる部分だ。FIFAランク3位のオランダに通用すれば、W杯ベスト4の目標にわずかながらでも希望が見い出せる。今まで戦ってきたアジアレベルであればボールを日本が持つ時間が長いため、守備に回ったときにハイプレスは徹底できた。だが、オランダのような世界トップクラスになると、逆にボールを保持する時間が短くなる。つまり守備の機会が増えるということは、当然プレッシングの回数が増える。ボールを奪えなければ、その時間も長くなるというわけだ。

次第に本気になっていくオランダの攻撃を、ガス欠になった日本の守備で食い止められるわけがなかった。ファンペルシーの1点目も、スナイデルの2点目も崩されているわけではない。オランダをペナルティーエリアに入れてしまえば、失点してしまう確率が高いということ。だからこそ、その前に食い止めなければという考えは理に適っているのだが、息切れしては意味がない。「90分やり通す」ことを全員に求めないと成立しない戦い方は、世界の列強相手ではあまりにもリスクが高い。


リスクの高さをオランダ戦で理解できなかったとすれば、岡田はそれまでの監督ということだ。無理をすれば選手は走れるかもしれないが、ゴールを奪う体力はなくなってしまう。そうなってしまえば、チームとして機能しない。それは監督の責任ではないのか。

1カ月ほど前、岡田ジャパンのある選手にこのプレッシングについて聞いたとき、興味深い答えが返ってきた。

「プレスは当然やらなきゃいけないけど、攻撃に体力を残しておかないといけない。だから、どこかでサボることも大切になってくると思う」

おそらく、このような考え方を持っている選手は、彼だけではないだろう。ボールを保持したとき、落ち着かせる時間帯をつくるとか、守備に回ったある時間帯ではフォアチェックを自重し、自陣に引いた状態でブロック主体にすることも考えるとか、いくつか手はある。強弱をつける、リズムを変える、というのは攻撃だけでなく、守備にも当てはまる。

本田個人を批判しているだけでは何も見えてこない。世界のトップを撃破する野望のためには、チームコンセプトに「世界仕様」を補強していかなければならない。


今のモダンサッカーでは守備ラインを上げ下げして、プレスをかけるタイミングをきちんとはかるところまで進化している。さぼるということは言葉が悪いが、相手が自陣でボールを回しているときまでプレスをかける必要はないのだ。中盤で危険なプレーヤーに渡ったときに自由にさせないことができれば、守備は成功したも同然。ボールを奪って攻撃につなげられればショートカウンターになる。

岡田はボールを奪ってポゼッションという不思議な戦術を語っている。そのことについて誰もおかしいと感じていないのだろうか。プレスをかけてボールを奪えばショートカウンターがもっとも効率よく点がとれる。時間をかけるだけ相手が守備を整えてくるのだ。そのことがわかっていないなら岡田では本戦は無理だろう。

「日本らしい」本田がマスコミに苦言?(スポーツニッポン)

日本代表MF本田がユニークな発言でオランダ戦のリベンジを誓った。「日本のメディアには守備ができてないことを批判された。欧州ではシュートを打たないことの方が批判されるのに、日本らしいなと思う。メディアと一緒に成長していきたい」。オランダ戦では後半から出場しチームにフィットしきれなかったが、本田節で反論した。FKキッカーを中村に譲ったことには「現状なら当然。逆の立場なら絶対に譲らないですから」と話した。また、オランダ地元紙のテレグラフでは「フラストレーション」の見出しで「先発を外れ、まともにプレーできるパスがなかった」と好意的に報じられた。


本田圭佑がゴールを決めていたらそれをトップに持ってきたのだろう。それはそれで日本のメディアらしいが。本田圭佑は今の日本メディアのサッカー観の三歩先を走っている。マスコミは追いついていない状態だ。中村俊輔、遠藤は理解できるがボールを持ったらゴールを狙うという本田圭佑は日本メディアにとっては理解できないのだろう。

この記事もベタ記事でコメントに対しての感想もなく、オランダの記事も翻訳しただけ。これではメディアの姿勢はわからない。

地元紙は援護「本田を殺している」(日刊スポーツ)

オランダのベテラン記者がMF本田圭佑(23=VVV)の持ち味を生かせない日本代表を、厳しく批判した。取材歴20年超のオランダ通信社GPDライゼナール記者(44)は、5日の日本-オランダ戦を振り返り「チームみんなで本田を殺している」と言い切った。日本は運動量の落ちた後半に一気に3失点。同記者は「後半日本が苦しくなったが、本田が何とかチームを引っ張ろうとしていたのが目についた」と評価した。また関係者によると、欧州12クラブのスカウトがこの試合を視察、チェルシーのスカウトは本田のマークも目的の1つだったという。(エリーヌ・スウェーブルス通信員)


日本には日本のサッカーがあり、オランダとは違うというならそれでもいい。しかし、オランダはW杯準優勝の経験があり、日本はベスト16が最高位だ。どちらのサッカー観が世界の頂点に近いかというとオランダだろう。世界一になった野球なら日本の理論がてっぺんかもしれないが、サッカーでは違う。オランダ人が本田圭佑のよさを殺しているというのなら、日本はもっといいチームになれるということなのだろう。

それは中村俊輔や遠藤も含めて、フットボールインテリジェンスが足りないということになる。本田が正しいわけではないが、ヨーロッパで現在行われているサッカーに近いところでプレーしているのは本田ということになるのだろう。

2 件のコメント:

どらぐら さんのコメント...

本田が入った後半に守備が崩壊し、連続失点。
攻撃でも良いところを見せられず。
ということで、どうしても本田が批判を浴びてしまうわけですが、
本当に問題なのはそこではないんですよね。

マタイセンが「日本はペナルティーエリアの手前20メートルまではすごくきれいにパスを回すが、そこから先は怖くなかった」と語れば、
フンテラールは「日本のシュートが下手すぎる」と笑ったように、
ゴールを奪うことに関しては、ほとんど良いところがありませんでした。
90分間プレスし続けることについては、言うまでもないでしょう。

確かに今のやり方なら、ポゼッションよりはショートカウンターの方が効率よく得点が取れそうですが、
岡田さんはそれをわかった上でポゼッションを選択してるのでしょうか。
そうなると何らかの意図があってのことなのでしょうが・・・。

kiri220 さんのコメント...

>どらぐらさん

オランダ戦ではポゼッションで勝とうとして、後半息切れしてしまいましたね。
ポゼッションで上回る努力というのは大切ですが、バルセロナでも一朝一夕にああいうサッカーができるようになったわけではなく、子供の頃から優秀な選手を集めて徹底的にゴールを奪うためのパス回しを練習しているからできるのですよね。

日本代表は他の国に比べて練習時間は長いですが、今からJリーグもすべて休んで合宿するというのでもなければ、驚異的にスキルがあがるということもないでしょうし、ポゼッションにこだわらない戦いというのも必要になってくるでしょう。

それがわかっているかどうかでしょうね。

サッカーには判定勝ちはないし、シュートが下手だから、ここまで詰めれば大丈夫というのがあれば、相手は思いきって攻められるでしょうね。

そういうことがガーナ戦で改善されないのなら、更迭を本気で考えてほしいです。