2008年8月19日火曜日

やはり出てしまった日本の悪癖

Beijing 2008 Football Women's Semi-finals Japan 2-4 U.S.A. @ Workers' Stadium
Japan:Ohno 17,Arakawa 93
U.S.A.:Hucles 41,81 Chalupny44,O Reilly 71

なでしこはCK崩れからオンサイドで残っていた大野につないで先制。その後は組織的に守っていたのだが。前半終了間際の5分間でサイドから崩されて連続失点。さらに後半にもサイドからのクロス気味のシュートを連続で決められてしまう。なでしこは1点返すのが精一杯で追いつくことはできなかった。

アメリカの全得点がサイドからの崩しだったのに対し、なでしこは真ん中で攻め続けた。両者の間に実力の差はそれほどないと思うが、戦術と戦術理解の差から大差がついた。

正面突破では攻めるのに苦労するが、横からゆさぶると簡単に点が入るという典型的な試合でもあった。もし、GKのレベルがもっと高ければ1点で済んだかもしれないが、それは結果論でしかない。ようするにサイドアタックに徹しきれなかったというところが敗因だろう。

なでしこ先制も米に4失点完敗/サッカー(日刊スポーツ)

それでもなでしこジャパンは、最後まで試合を捨てなかった。福元はしょげるどころか声を張り上げ、攻撃を必死に防ぎ続けた。そしてロスタイムには、波状攻撃から途中出場のFW荒川が、チーム2得点目を押し込んだ。佐々木監督は「次につながるプレーができた」と選手をたたえた。

 池田は「4強に残って、まだ夢の中にいるような気分だった。今度は世界に通用することを証明したい」と気持ちを切り替えた。持ち前のパスサッカーが、世界最高レベルにあることは確認できた。次につながるゴールも決めた。そして、世界トップに肩を並べたことを示す舞台も、まだ残っている。21日の3位決定戦ドイツ戦で、なでしこジャパンが悲願のメダルに挑む。


ゴールを奪ったことを「次につながるプレー」と称したことに危機感がないということがわかる。

パスサッカーも世界には通じていない。

あれだけミスパスが多く、アメリカのカウンターを浴び、サイドから崩されて4失点しても、不運な得点と言っているようではお話にならない。不運だったから仕方がないと言っていたら、アメリカには永遠に勝てないだろう。

クロスをあげればミスキックでもゴールすることがある。シュートすれば、相手に当たったりポストやクロスバーに当たって中に入ることもある。その通りに決定的なボールを外から送り続けたアメリカと、ていねいにエリア内へのパスをつなぎ続けたなでしことの差があった。

日本のパスサッカーは今のレベルでは世界水準にはない。ただサードプレイスに残ったという結果があるだけだ。世界で安定して勝つためにはもっとワイドに連携してサイドを抜かなければ勝てない。

だから、最後の得点は無駄球だった。あれが入ってしまったことでドイツ戦も同じように戦ってしまうから。

日本はサイドアタックが未熟だ。なでしこは男子よりも外に振ることが多いが、それでも足りない。そのことを選手が気付かなければ成長はない。サイドに三角形を作ればパスコースも多くなる。そこに監督も気付いていないのでは意味がない。

「金や銀は美しいが、銅だっていい色だぞ」(日刊スポーツ)

しかし日本が米国のような強豪に勝つとなると、多少の試合ペースの行き来はあるにせよ準決勝前半25分までのような展開を、極限の集中力の中で90分間やり通さなくてはならない。それは精密機械を猛スピードで動かし続けるような高い負荷のかかる作業だ。肉体的にも精神的にもストレスにさらされるから、ちょっとしたことがきっかけでそのメカニズムが機能不全に陥ってしまう。


これも精密機械のように緊張してやる必要はない。ここまで追い込むとそれがストレスになってしまう。2トップを両サイドに開かせて高い位置で張らせておき、クリアをサイドに振ればいいのだ。それだけでDFは楽になる。クリアしたボールはFWがキープするか、タッチラインを割る。どちらにしてもそこからリセットになる。一息つける状態を作ることがどれだけ楽になるか。

一方の男子は反町さんの無策がこんなかたちでコラムになっている。

玉砕を命じた反町ジャパン(Number Web)

その原因を、反町監督はナイジェリアに負けた翌日につぎのように語った。

「きのうのようなゲームを、ナイジェリアやアメリカ、そしてオランダの選手は毎週やっている。日本の選手はほとんどが自国でやっている。その経験値が差になる」

まるで選手が未熟だから負けたというような言い様だが、そうだろうか。

それでは、オランダとイタリアのチームに所属して外国でのゲームをずいぶん経験しているはずの本田圭佑や森本貴幸は、どうしてそのほかの日本人選手以上の動きができなかったのだろう。彼らが、たとえば内田篤人以上の動きをしたとはとても思えない。

あるいは、女子の代表のことを考えてみてもよい。彼女たちは負ければ1次リーグ敗退という状況で第3戦に臨み、世界4位、シドニーでは金メダルを取ったノルウェーに5対1で圧勝したが、彼女たちの中に、外国でプレーした経験のある選手が澤穂希以外に何人いたというのだろう。


これでは反町さんだけを責めることになる。反町さんが経験値を問題にしたことは選手の判断力の速さの部分だったと思うのだが、海老沢さんは違うところに置き換えている。世界のサッカーを知らない証拠だ。

はっきり言って選手が未熟だから反町さんの戦術理論が理解できなかった。本田圭佑は戦術理解ができていないからフェンロで機能せず降格の憂き目にあい、森本も未熟だからカターニャでレギュラーを獲れない。

なでしこはよく頑張ったが、女子と男子ではピッチ上の判断力の速さは決定的に違う。昨日の試合でも西川がGKならアメリカは1点か2点だったはずだ。

その未熟な選手を、より高い経験値まで持っていけなかったことを反町さんは悔やんでいるのではないか。
たしかに言ってはならないことではあったが、Jリーグでもっとレベルの高い試合をというのが本音だったのではないか。

「決して悪い内容ではなかった。しかし、ペナルティエリア内に侵入しているアタッカーの人数が少なく、ゴールの予感がしなかった」(ラモス瑠偉)

「身体能力の高い相手の守備陣からゴールを奪うには、少なくとも3人、できれば4人がペナルティエリア内に飛び込みたかったが、実際に飛び込むのは李(柏)と谷口(川崎)ぐらい。中盤の選手が入っていくことが必要だった」(相馬直樹)

これらはナイジェリア戦の戦評だが、専門家の見方は一致している。アメリカ戦でもナイジェリア戦でも、右サイドの内田から何本かいいクロスがはいったが、いずれのときもそこに人が動いていなかったのである。

反対に、アメリカとナイジェリアはここぞという決定的なときに、そこに人が侵入してきていた。日本に必要だったのは、外国での経験値などではなく、決定機を見きわめる想像力だったのではあるまいか。


たしかにペナルティエリアに飛びこんでいく選手は少なかった。それは認めよう。大きな問題のひとつでもある。

しかし、内田が上がりきったときに、右サイドの本田圭佑がサイドでケアをしなかったことでカウンターを怖れたということもある。1枚でサイドアタックを仕掛けるということは常にカウンターの危険があるということだ。ふたりいればディレイがかけられる。その戦術の徹底がなければ、リスクチャレンジをしてエリア内に飛びこむことはできない。

中央でリスクチャレンジをするならサイドで取られないというリスクマネージメントをしなければならなかった。

しかも、そういう頼りない彼らに、ナイジェリア戦を前にして、反町監督は何といったか。

「座して死ぬくらいなら、飛び込んで死のう」

といったというのである。

ぼくはおどろくと同時に非常に不愉快になった。追い込まれると、作戦を放棄し、いたずらに玉砕命令を出すのは昔の日本陸軍の指揮官の専売特許だと思っていたのだが、さきの戦争から60年以上たったいまも同じことをいう人物がいたのである。論理的な作戦がもっとも必要なときに、こんな言葉しか持っていない人物が指揮官なのでは、勝てる試合も勝てまい。


ただ、これはひどい。選手のモチベーションをあげるにも言葉を選ぶ必要がある。精神論では勝てない。せめて、ファンが見ている前でみっともない試合はできないぞくらいにできなかったのかとは思う。

こういうしかないほど、選手のやる気がなかったのかもしれないけれどね。

2 件のコメント:

yoshi さんのコメント...

うーん、、、反町監督の言葉はもうちょっと考えて欲しいですねー。。。
おそらく、オシムさんが聞いたら嘆くことでしょう。
サッカーは生死を決めるものじゃない、と。

今の日本に合う戦術ってのは難しそうですね。
守備的ハーフを2枚にすれば安定はするんでしょうが、
でも、攻撃に怖さがまったく出なくなる。
1枚にすると途端にもろくなって失点しやすくなる。
うーん、どこらへんを強化したらいいのやら。

kiri220 さんのコメント...

>yoshiさん

オシムさんはたしかに、サッカーで生死を決めるものじゃないと嘆きそうですね。
同じベンチにいていったい何を学んだのかと。

守備的MFは2枚でいいと思うのですが、ふたりとも上がっていくか、ふたりとも下がったままでは意味がないというか。

阿吽の呼吸でどちらかが上がっていけるならいいのですけどね。