2010年9月8日水曜日

パラグアイ戦のハイパフォーマンスの反動か、グアテマラに苦戦の日本!!

International Friendly Match Kirin challenge Cup 2010 Japan 2-1 Guatemala @ Nagai Stadium
Japan:Morimoto 12,20
Guatemala:Mario Rodríguez 22

グアテマラ戦後 原監督代行会見 (1/2)
キリンチャレンジカップ2010
(スポーツナビ)

今日の試合は立ち上がり、ボールも動いていい形だったと思うんですけど、2点目を取って、そのあと3点目を取るチャンスが何度かあったと思うんですが、そこで決め切れず、そのあとからちょっとずつ(プレーが)甘くなっているところで、相手が長いボールを蹴ってきて、そこから決められてしまった。それによってリズムが悪くなったかなと思っています。パラグアイ戦から、けが人があったり、センターバックについていうと中澤や闘莉王が今までやってきた、そこをなかなか出場機会がなかった選手を思い切って試そうと思っていました。あるいは乾のような選手を試しながら、また刺激になってやってくれればと思ってゲームに臨んだんですけど。まあ、それぞれうまくいったところ、うまくいかなかったところがあったと思いますが、そういうところはしっかり自分なりに判断してもらって、今後に生かしてもらいたいと思います。

個人的には、この1週間なりの代行ということで、ザッケローニ監督と一緒に過ごして、彼も合宿を一緒に過ごしたことによって、日本の選手の特徴、日本代表チームの練習の仕方とか、スケジュールの立て方、あるいはコーチングスタッフ、メディカルスタッフとの関係、いろんなことを見ることできたと思うんですね。そういうことを、次のアルゼンチン戦(※公式未発表)、韓国戦に向けて、本当にいい準備ができた、橋渡しができたんじゃないかなと思っています。


ほぼ完璧だったパラグアイ戦に比べて、グアテマラ戦は2点取るまでと中村憲剛が入ってからの時間帯だけがよかったという極端なゲームになった。前半はレジスタ不在。橋本は安定感がなく、ボールキープも素早い判断で安全地帯にパスすることもできずにボールを奪われて失点といいところがなく、細貝はたまにいいパスがあったもののパスの散らし役としては力不足ではあった。

レジスタは通常3列目からゲームを組み立てるのが仕事で、本田圭佑を前目のポジションで使う以上、絶対におかなければならないプレーヤー。日本には遠藤と中村憲剛しかおらず、後継者を育てるのが急務になっている。疲れということだったが、W杯本戦ではタイトなスケジュールは当たり前。ヨーロッパ組のほうがタフでJリーグ組がばてているというのはあまりにもひどかったというべきではないか。

――今日、2点取った森本に関して、良かった部分、課題の部分、両方あったと思うが(田村修一/フリーランス)

みなさんご存じのように、パラグアイ戦を見ても実戦が不足していると思いました。なので、岡崎はある程度計算できるし、コンディションをワールドカップ(W杯)の後に落としているという情報もあったので、あえて森本をまた先発で使って、試合をなるべく多くやらせることで、彼の持っている良さ――。彼には攻撃だけでなくて、守備に関しても、まだまだ関係していない時間が多いので、できるだけプレーする機会であったり、いろんなことに絡む起点を作ってほしい。ゴール前で点を取ってこいと言って出したので、特に1点目はきれいだったと思いますし、何度かトラップでくるっと抜け出したりできたと思うので。まあ、2点取って少しは良かったかなと。所属チームでまずはポジションを取ることが大事かなと思っています。

■本田は自分自身納得いっていないと感じた

――本田は点が取れず、焦ってシュートもパスも一発狙いだったように見えたが、近くでどう感じていたか(後藤健生/フリーランス)

いろんな面でのコンディション、W杯であれだけやって、ロシアはJと同じシーズンが進んでいく。彼のコンディションを見て、パラグアイ戦を見てもやはり体が重いなと感じました。本人も、この暑さも含めて、自分自身納得いっていないと感じました。ただ彼の持っている個人的な体の強さであったりキープ力、パスを展開する力、そのへんを何とかチームの中に機能させて、自信を持ってロシアに帰ってくれればいいかなと使い続けました。疲れているというのは分かりましたし、(所属)チームでも出場機会が少なくなっていたりするので、むしろ辛抱して彼を使い切りました。

ほかの選手で言うと、長友とかまだ(欧州に)行ったばかりですから。内田もこの前の試合で最後に足をちょと踏まれて、内出血が軽いけれどありました。無理させない方がいいだろうということで。香川も、ずっと出ていますから、フルに使うかどうか、いろいろ考えたんですけど、けがをさせる前にあのへんで止めさせようかなと思って。そういうことも含めて、監督なんだか、強化部長なんだか、技術委員長なんだかというところも含めて(苦笑)試しながら。

例えば永田も、もともと試すことがなかなかできなかったんですけど、彼のフィードのうまさや高さが後半は使えたし。今回で言えば細貝ですね。長谷部、遠藤、今野、阿部もこういう事情でいない中で、彼を思い切って使って、Jリーグを見ていたときは体の元気さ、強さがあると思ったんですが、彼がパラグアイ戦も今日もそうですけど、あそこでやれるということを証明してくれたことは、すごく良かったんじゃないかと思います。

――槙野を後半に左サイドで使ったが、どんな指示をしたか(大住良之/フリーランス)

槙野に関しては、広島では3バックの左、それで広島のサッカーはちょっと変則的で、攻撃では彼はかなり高い位置に出てきますよね。そういう面で、ストッパーが本職ですけど、前半はストッパーをやらせて、長友がいろんなことがあって半分で止めさせようと思ったので。彼(槙野)は攻撃になると(前に)出て周りを生かして、そこからフィードであったり起点になるということを要求して、守備のときはしっかり後ろでカバーするということを言いました。紅白戦でも、短かったですけど左サイドバック、左とストッパー両方やる準備をしてくれと言ってあったので、(左は)本職ではないと思うんですけど、違和感なくやってくれたんじゃないかと思います。


森本は試合後のインタビューで答えていたようにまずはカターニアでポジションを取ることが重要だろう。もっとも難しいリーグであるSerie Aでレギュラーを張れるならザッケローニの戦術も理解できるだろうから。もっとも点をとるべき選手が戦術を理解しているというのは大きな強みになる。

逆に本田圭佑はCSKAモスクワで監督との確執が報道されているように、本人が考えているサッカーと監督の考えるサッカーとの乖離があると上手くいかないのではないか。VVVフェンロでは王様で自由にやらせてもらえたが、CSKAモスクワではそうではない。日本代表でも役割が違う。その違いにイライラがあって壁に当たっている状態ではないだろうか。

槙野については広島は後方からしっかり組み立てるサッカーをやっている。その意味では最終ラインにもフィード力が要求されるし、レベルの高いことををやっているのは間違いない。槙野もその戦術を叩き込まれているわけで、理解は思った以上に早いのではないか。

長友がチェゼーナで信頼を勝ち取れば、CBでとなるだろうが、レフトバックのバックアッパーができたということではいいことなのだろう。

――監督の人選とかいろいろ

それは本来の仕事ですから。いろいろあったんですけど、結果オーライではないんですけど、さっき言ったように、もし1週間前か2週間前に決まったとしても、新しい監督が選手を選ぶことは不可能に近かった。その時に、W杯である程度中心だったメンバーと、コンディションのフレッシュな選手を選んだことによって、ザッケローニ監督にもいろんな選手を見てもらった。それは結果的にいい流れで引き継ぎすることはできたんじゃないかと思います。

――もちろん2つ勝ったことは素晴らしいと思うが、今回、代行とはいえ代表監督だったわけで、代表監督は魅力ある仕事だったか

今回は(欧州から)帰って来て、すぐ記者会見をして、その段階で誰も間に合わない、ちょうどスタッフも変わるときだったので間に合わないということで、自分がやりました。その中で、まあ1年半以上、技術委員長という立場で(代表チームを)見てきて、日本のサッカーの流れは分かったので、これを生かしながら次の新しい段階に行くということで、人選も今のコーチ陣としましたし、一番の仕事はそれをうまく引き継ぐことだと思っていましたので。選手たちも、ザッケローニ監督が実際にそばにいてくれることによって、厳しいコンディションだったとは思いますけど、モチベーション高くやってくれた。いろいろあった割には、いい流れで引き継げたんじゃないかと思います。

(プレッシャーは)僕は選手に伸び伸びやらせること、怖がらずに自分のいいところであったり、日本の良さを出そうと。それを出すことがまず大事なんじゃないかと。コンディションはいろいろあったとしても、それは代表選手としてやるべきことだと。それだけですね、言ったのは。今回、選手は僕とかコーチングスタッフが選んだので、いちおう言っておきました。今日で終わりですと、選手には言っておきました。


スペイン人監督じゃなければ辞任するという報道がなされていたにもかかわらず、そこを突っ込まないのは日本のメディアの優しさなのか。それとも日本サッカー協会から釘をさされていたのか。絶対に聞かなければならない質問だったのは、なぜスペインからイタリアへ方向転換をしたのか。噂だけで攻撃的と判断したのかということ。

パラグアイ戦でモチベーションが高い試合をしながら格下のグアテマラによくない試合をしたことで、原さんの限界が出てしまったわけだが(勝敗は関係なく)、この部分をどうやって高く保っていくかというところにザッケローニの課題になるだろう。日本はモチベーションが高ければいいプレーが続くが、相手によってぐだぐだな試合をしてしまうことがよくある。

アジアカップで戦う相手は格下もあり、足を掬われるということのないようにきっちり方向性を決めなければ南アフリカでの感動がやっぱり監督を代えたら駄目だったということになりかねない。

試合後 グアテマラ代表アルメイダ監督会見
キリンチャレンジカップ2010
(スポーツナビ)

今日の試合はいくつか分割して分析することができるのではないか。最初の20分は、日本がどういう出方をするか、猶予を与えてしまい、相手に支配されてしまった。最初の20分、日本は自由に、自分たちがしたいように試合を運ぶことができた。そしてゴールを決められたことによって、試合の流れも変わった。その後、われわれはプレスを掛けるようになり、試合の均衡を保つことができた。後半は、われわれはより多くゴール決められるチャンスがあった。日本もそうだったと思うが。

――当初、日本におけるグアテマラの評価が低かったようだが、試合全体で見たら、かなり日本を苦しめていた。引き分けで終わる可能性もあったと思うがどうか(グアテマラ記者)

今日の試合内容だが、われわれはハッピーではなかったが満足はしている。選手は非常に頑張ってくれた。局面によっては、日本が勝る部分もあったが、われわれも日本を苦しめて難しい状況に持ち込めることができたと思う。試合の展開の中で、日本がしたいようなプレーをさせなかったし、日本のボール保持のチャンスを与えないことにも成功したと思う。今日の試合は、負けるとしても大量失点で負ける可能性もあったし、引き分けの可能性もあった。その意味で、われわれは途中から非常に動きが良くなったし、ダイナミックなプレーができていた。ただし今回の暑さはひどかった。36度から37度という気温は、われわれにとって非常にプレーしにくかった。

――日本の印象、特に印象に残った選手は

日本の印象だが、非常にいいチームだったと思う。われわれとの違いは、われわれは10回しか練習していない。しかし日本は過去4年間、チームとして練習を重ねてきた。そこで差が出たと思う。日本の選手だが、非常に良いプレーヤーは多く、スピード溢れるプレーをしていた。特に5番(長友)の選手が目に付いた。それから本田。今日プレーしてなかったが、22番(中澤)も良かった。今回、われわれは日本ほどチームとしての準備ができていなかったので、そのためフィジカルで差が出たと思う。

――準備が悪い割には良いゲームができた、その理由は何か(宇都宮徹壱/フリーランス)

今日の内容が良かったのは、おそらく選手たちの努力と将来へのモチベーションが高かったことが挙げられる。グアテマラは残念ながらワールドカップには一度も出場できていないが、希望は保ち続けている。一昨日、米国でも試合があり、水曜日には(米国で)エルサルバドルとの試合がある。そういったところで選手が頑張ってくれればいいと思う。今日の試合には非常に満足しているし、自分たちにとって良いスタートを切れたと思っている。


グアテマラの監督にも日本はプレスをかけると弱いということがわかったわけだ。この弱点は相変わらずで、プレスをかけられても平然とプレーを続けるヨーロッパ列強とは大きな差がある。

フィジカルの部分では負けていなかったが、ボールホルダーへの適度なプレス(決して飛びこむわけではなく)があれば日本にとってもっと楽な試合になっていたはずだが、連戦ということもあり、パラグアイ戦のような試合ができなかったのは残念だった。

グアテマラに関しては消えている選手が多く、またポジショニングのミスもあり、まだ世界で戦えるレベルにはない。W杯に出場しても今のままだと選手個人の能力で戦うしかないだろう。ただ、思いきったミドルは脅威であり、大きな武器でもあることから、磨いていくことで本戦出場に近づくことができるかもしれない。

原博実からザッケローニへ (1/2)
日本代表 2-1 グアテマラ代表
(スポーツナビ)

グアテマラという中米の小国について、私たち日本人が知っていることはあまりにも少ない。ヨーロッパ人がやって来るまではマヤ文明が栄え、国民の過半数はマヤ系のインディオであること。つい最近(1996年)まで内戦があったこと。決して豊かな国ではないこと(貧困層は全人口の半数以上を占めるといわれる)。むしろグアテマラ代表が来日した直後に発生した、豪雨による土砂災害の方がわれわれの注目を集めた感がある。6日の時点で死者は44人、被災者数は4万人を超えると報じられた。

「よく分からない」グアテマラは、サッカーに関しても同様である。ワールドカップ(W杯)の出場は皆無。CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)が主催するゴールドカップでも、96年のベスト4がこれまでの最高成績である。別格の存在であるメキシコを除けば、コスタリカ、ホンジュラスに続く中米の第3勢力と見てよいだろう。最新のFIFA(国際サッカー連盟)ランキングは119位。すなわち、フェロー諸島とシンガポールの間と考えれば、その実力はおのずと理解できるだろう(ちなみに日本は32位)。

そんなグアテマラと対戦することが、果たして日本の強化にどれだけつながるのか。いささか疑問の残る今回のマッチメークについては、2022年のW杯招致活動の一環と見るのが一般的だ。グアテマラはパラグアイと同様、FIFAに理事を送り出している。「あまりに政治的だ」という意見もあるかもしれないが、個人的には「日本もこういうマッチメークができるようになったのか」と、むしろ深い感慨を覚える。2018年と22年のW杯開催国が決まるのは、12月2日。残り3カ月を切った今見せる、W杯招致をめぐる水面下の戦いは、間もなく佳境に入る。

さて、今回来日したグアテマラ代表のメンバーは、全員が国内組。国際的に有名な選手はひとりもいない。むしろ注目すべきは、監督のエベル・ウーゴ・アルメイダ・アルマガであろう。アルメイダの名で知られるこのパラグアイ人指揮官は、少なからず日本と縁がある。現役時代の90年、南米王者オリンピア(パラグアイ)の正GKとしてトヨタカップで来日(オランダトリオを擁したミランに0-3で敗れた)。それから9年後には、パラグアイ代表監督としてコパ・アメリカに出場し、当時のトルシエ監督が率いる日本代表に4-0と完勝している。グアテマラ代表監督に就任後、最初の国際試合の相手が日本となったことに、おそらく当人も何かしら期するものを感じているのかもしれない。


グアテマラとの対戦に疑問はあったがW杯招致活動の一環だと聞かされれば納得がいく。政治的判断だろうと、中米のサッカーを経験しておくのは悪くはないし、決して本戦で当たらないというわけではない。パッシングサッカーをやるなら慣れておく必要があるだろうという期待だった。実際にはフィジカルを活かした前へのサッカーだったわけだけれども。

試合序盤は、日本がグアテマラを圧倒。12分には早々と先制する。左サイドでの乾と香川のパス交換から長友が抜け出し、ドリブルを挟んで正確なクロスを放つと、これを森本が頭で合わせてネットを揺らす。森本の代表でのゴールは、昨年10月の対トーゴ戦以来、これで2点目。だが、この日はこれで終わらなかった。20分には本田からのスルーパスを受けた香川が、今度は右サイドを駆け抜けてシュート。ボールはいったんは相手GKにはじかれるも、走り込んでいた森本が反射的に左足で押し込み、うまくゴール左隅に流し込む。これで2-0、スタンドは一気に楽勝モードに包まれた。しかし敵将アルメイダは、序盤の2失点について、次のように語っている。

「最初の20分は、日本がどういう出方をするか、猶予を与えてしまい、相手に支配されてしまった。日本は自由に、自分たちがしたいように試合を運ぶことができた。その後、われわれはプレスを掛けるようになり、試合の均衡を保つことができた」

歓喜から2分後、グアテマラが反撃に出る。日本の自陣でのパス回しをインターセプトすると、すかさず前線にボールが渡り、これをFWマリオ・ロドリゲスが右足でシュート。岩政の寄せは遅く、弾道は楢崎の指先をすり抜けてゴールに吸い込まれる。その後もグアテマラは、素早いプレスと思い切りのよいミドルシュートで、臆することなく日本に挑んでくる。やはりFIFAランキングはあてにならない。前半は2-1で終了。

後半、日本ベンチは日本は長友と乾を下げて、永田と藤本淳吾を投入。さらに後半20分には香川に代えて岡崎慎司を送り込むも、なかなか3点目を奪うことができない。逆にグアテマラはポゼッションを高めて、際どいシュートを放っては日本の守備陣を慌てさせた。ここは中盤でゲームを落ち着かせ、交通整理ができる人材が必要である。そう、中村憲剛だ。だが彼が所属する川崎フロンターレは、8日にナビスコカップ準々決勝第2戦を控えている。原監督代行も技術委員長としての立場から、なかなか最後の切り札を投入する踏ん切りがつかない様子。結局、中村憲がピッチに立ったのは後半38分のことであった。ここから日本は見違えるように攻撃のリズムを取り戻し、何度も相手ゴール前まで殺到するものの、放たれるシュートはいずれも歓喜を呼び起こすことなく、そのまま終了のホイッスル。勝つには勝ったが、何とも歯切れの悪いエンディングであった。


ゲームの流れとしては森本が2点目をとる20分までは日本ペース。そして、中村憲剛が入る83分までは拮抗したゲームということになるだろう。日本はきちんとゲームを落ち着かせる選手がいなければ(日本に限らずだが)、攻め急ぐ傾向がある。本田圭佑、乾、香川、森本、藤本、岡崎といった前線の選手たちはゴールがほしくて前へ前へと前輪駆動のようなサッカーをしていた。個人プレーに走りすぎていては流れも相手にわたしてしまう。ということがわかっていればいいが、選手たちは理解していないかもしれない。

海外のクラブに戻って、あの試合はひどかったね。といわれて素直に受け入れられれば成長するだろうし、できなければそこで泊まってしまうだろう。

その意味では大勝できなかったことは日本にとってよかったかもしれない。

あらためて、この9月シリーズで明らかになった成果と課題についてまとめておく。

まず成果。W杯以後の日本が目指す方向性というものを、この2試合を通じて示すことができた。現状では「守備はW杯仕様、攻撃はよりワイドに展開してバリエーションのあるクロスからチャンスを作る」といったところか。この方向性に対し、ザッケローニ監督がどのように肉付けし、独自のカラーを出していくかが注目される。幸い、中盤と両サイドのタレントは、ある程度はそろっている。香川や長友など、欧州移籍によってさらなる成長が期待できる若い選手の存在も心強い。果たして新監督は、今回の2試合を通じて何を感じ、どんなプランを思い描いているのだろうか。

課題については、その多くがこの日のグアテマラ戦で顕著に表れていた。すなわちそれは、選手層の薄さである。中盤では遠藤保仁と長谷部誠。ディフェンスラインでは中澤佑二と田中マルクス闘莉王。彼ら「代えの利かない」選手の不在を埋めることが、決して容易でないことは、今回の2試合で明確になった。特に中村憲が投入されるまでの中盤は、連動性がほとんど感じられず、やみくもにゴールを目指しては空回りするばかり。いくら即席チームであっても、アピールしようとするあまり連動性が失われてしまうのでは本末転倒である。こういう場面でゲームを落ち着かせ、リズムを作ることができるのが中村憲だけであったのは、いささか残念に思えてならない。

ともあれ、こうした成果と課題は、そのまま原監督代行からザッケローニ監督へと、引き継がれることとなった。その初陣は、1カ月後の来月8日である。新たな代表の姿をあれこれ想像しつつ、まずは原監督代行には「お疲れさまでした」と申し上げたい。


ザッケローニの味付けはかなり難しいことになるだろう。日本の選手はイタリア仕様の守備のセオリーをしらない。前を向いたボールホルダーに飛びこんだり、ディアゴナーレという斜め後方にポジションをとる守備理論をザックがどういうふうに植え付けていくか。優柔不断さはあるが、戦術理論だけはしっかりしているだけにきちんと植え付けてもらいたい。

選手層の薄さについては経験を積んでいくしかない。とくにレジスタとCBについては間違いなく育てていかなければならないポジション。ゲームメイカーではなく、チームのオーガナイザーとしての選手をどう見つけていくかというのは課題になっていくだろう。

もうひとり「お疲れさまでした」と申し上げたいのが、GKの楢崎である。長年、日本のゴールを守り続けてきたベテランは、この試合をもって代表からの引退を表明した。

W杯直前に、守護神の座を川島永嗣に奪われた経緯を思えば、いつかはこういう日が訪れるだろうと思っていた。だが、それがまさかこのタイミングになるとは予想もしていなかった、というのが正直なところである。結果として、日本代表での楢崎の最後の雄姿を現場で目撃できたのは、幸運だったと思う。彼と川口能活が代表で切磋琢磨(せっさたくま)した時代――それこそ97年のW杯フランス大会予選から、2010年のW杯に至るまでの14年間は、われわれサッカーファンにとって一言で語り尽くせぬほど濃密な思い出が詰まっている。南アフリカの地で、川口がチームキャプテンとしての役割を全うし、そして今回、楢崎が代表引退を宣言したことで、間違いなくひとつの時代は終わりを告げることとなった。

試合後のミックスゾーンでは「4回W杯に出て、20歳から代表に選ばれて、いろんな経験をさせてもらった。感謝しているし、何かこれから返していかないといけないなと思っている」と語っていたという。一方で「GKが全員いなくなったら(引退撤回を)考えようかな」と冗談も言っていたようだが、そうした困った事態になることはなさそうだ。今後は川島を筆頭に、西川周作(広島)、権田修一(FC東京)といった新世代のGKたちがしのぎを削ることになるだろう。

実は私自身、会見後に遅れてミックスゾーンに入ったので、楢崎本人の肉声を聞くことはできなかった。その代わり、サンダル姿でリラックスしている表情を遠めから確認することはできた。その表情はいかにも自然体で、感極まったものは微塵(みじん)も感じられない。ひとつの仕事を終えて、淡々としているプロフェッショナルの姿が、そこにはあった。あらためて「動の川口、静の楢崎」という表現を想起する。楢崎の代表引退は「77」というキャップ数には似合わないくらい、実に静かで穏やかなものであった。

かくして、中村俊輔に続いて楢崎も代表から去った。パラグアイ戦で素晴らしい働きを見せた中澤も、練習中のけがが全治6週間と診断された。10月の代表戦に選出されることはないだろうから、このままフェードアウトする可能性は十分に考えられる。2014年のブラジル大会に向けて、日本代表は今後、世代交代を加速させていくことだろう。残念ながらこの日のグアテマラ戦は、試合内容自体は決して面白いものでも、素晴らしいものでもなかった。むしろ地味で、得るものが少ない試合だったのかもしれない。それでも「ひとつの時代が終わった」という意味で、強く印象付けられる試合となりそうな気がする。


中村俊輔楢崎正剛の代表引退はひとつの時代の終わりということだろう。中澤佑二も年齢と怪我を考えればこのまま引退という可能性が高い。3人にはお疲れさまという言葉しかみつからない。

中村俊輔は主力で戦ったW杯ドイツ大会では不完全燃焼、W杯南アフリカ大会ではほとんどプレーできなかった。楢崎は主力を川島に譲ったものの最後まで高いパフォーマンスを見せた。名古屋で圧倒的な力で川島の壁となったことを思えば、乗りこえられたことに誇りすら覚えているのではないか。

中澤は引退を表明したわけではないが、しっかり怪我を治してほしいと思う。

グアテマラ戦後 選手コメント (1/2)
キリンチャレンジカップ2010
(スポーツナビ)

■楢崎正剛(名古屋グランパス)

「リストから外してくださいと合宿の最初に伝えた」

代表の競争ですか? いや、僕はあれですよ。リストから外してくださいと、この合宿の最初に原さんに伝えました。意見を尊重してくれたんですけど、ちょっと待ってくれよ的なニュアンスはありましたね。ワールドカップ(W杯)が終わってからずっと考えていましたし、ただ、監督も決まっていなかったのであまり迷惑はかけられないなと思ったので、こっちに来てからになったんですけど。4回W杯に出て、幸運なことに20歳から代表に選ばれて、いろんな経験をさせてもらって、感謝しているし、何かこれから返していかないといけないなと思っています。今回の試合は試合でそういう気持ちもあるけど、原さんにはこの合宿は頑張ってくれと言われていたし、代表としての責任感をしっかり持って最後までやろうと。闘莉王とは最後に一緒にできると思っていたんですけど、逃げられちゃったので(笑)。

代表での試合も時間は長いですけど、そんなに多くないですし、だいたいの試合は思い出そうと思えば思い出せるので。いい思い出もありますけど、悔しい思いもして、それも全部実になったので、そういう経験をいろんな選手に還元するべきだと思う。帰ってきてからいろいろ相談したり、GM(ゼネラルマネジャー)とも相談したり、監督に相談したり。ピクシー(ストイコビッチ監督)はそれを理解してくれたかなと。みんなはもっとできると思っているから。代表がいなくちゃいけないといって。とにかくW杯でやり切ろうと思ってやれたので、まずはそれが一番です。W杯の前は先のことは全然分からなかったです。(サポーターには)ありがとうございましたと。ただ、引退という形で伝えた訳ではないし、GKが全員いなくなったら考えようかなと(笑)。そういう非常事態があれば別ですけど、そんなことはないでしょうから。


楢崎正剛ほど安定度が高いGKは日本では多くない。世界基準でいえば、フィジカルで劣るし、判断ミスもあるけれども、上をみればキリがないし、世界に挑戦できるだけの技術があったGKだった。本人は海外移籍を含めた契約を名古屋と結んでいたはずだが、それが履行されることはなかった。

77試合というのは思ったよりもすくないような気がするけれども、濃密な時間だったことは間違いない。GKというたったひとつしかないポジションを争い、そして勝ち取ってきた楢崎。まだまだ名古屋でのプレーが残っており、これで終わりというわけではないけれども。お疲れさまといいたい。

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