韓国戦後 ザッケローニ監督会見
国際親善試合(スポーツナビ)
この試合は金曜日のアルゼンチン戦と同様に、フレンドリーマッチとは言えない雰囲気になった。2つのタイプの異なるチームが全力を出し切った。韓国はフィジカルとガッツを前面に押し出したサッカーで、日本は持っている技術をベースにポゼッションを高めて仕掛けるサッカーをしていた。今日の日本は、それができた場面とできなかった場面があった。日本のDFからFWまでの距離が狭まりすぎたときは、なかなかスペースが作れず、うまくいかないところがあった。逆に、うまくサイドチェンジして、サイドから攻撃ができたことには満足している。特に右サイドから、多くのチャンスが生まれたと認識している。日本がサイドにできるスペース、そのスペースをうまく突いたときには、どんな相手でもかなり怖い存在になれると思う。
このチームは、素晴らしい才能を持った選手がいる素晴らしいチームだと思う。まだまだ伸びしろはあると思う。このチームに対してのわたしの目的はいくつかあるが、1つ目は選手たちをよく知ること、2つ目はその選手たちにもっと能力があるという自信を植え付けることだ。試合前、われわれが恐れていたのは相手のフィジカルの強さを生かしたセットプレー、それから10番(パク・チュヨン)を起点に始まるカウンターにも注意するように伝えた。普段、わたしの選手は技術的に優れているので、ボールを回しているときに今日のような多くのミスをすることはない。ピッチコンディションも日本には不利に働いたと思う。
アルゼンチン戦では早い時間に先制することでアルゼンチンを本気にさせることができた。アルゼンチンを破ったことで、アジア最大のライバルの韓国も本気となった。日本に負けるわけにはいかないという歴史的な背景もあっただろうが、そんなことは関係なく韓国は積極的にゴールを奪いにきた。
フレンドリーマッチにも関わらず、真剣勝負に近いゲームが続けてできた理由である。日本が強くなったことで相手が日本をリスペクトし、そして真剣勝負で選手が成長するという好循環を生んでいく。強くなる、相手に日本とやれば経験値が高くなると思わせればしめたものだ。
今の日本は貪欲にイタリア流を復習することでより高く飛ぶための準備をしている最中だ。ステップの過程を間違えなければはるか高いところまで行き着くことができるのではないか。
――前半15分は相手のパワーで圧倒されていたが、その後はポゼッション率を上げて前半は日本のリズムだった。試合の流れが変わったのは何が原因だと思うか(後藤健生/フリーランス)
韓国は試合開始すぐに、自分たちの特長であるフィジカルを前面に押し出してきた。日本は、ピッチコンディションが悪かったこともあり、なかなかそれに順応できなかったが、15分以降はワイドに開いて相手の左サイド、ウチの右(サイド)に内田と松井を中心にスペースができたので、そこにボールを放り込んでいくことで相手のディフェンスラインが間延びしたような気がする。
ザッケローニの指示はサイドアタックだったはず。ワイドに開いて攻撃すれば相手も対応せざるをえない。まだ入りの部分で中央を固めるというやり方をしてしまうところに日本の課題があるということなのだろう。相手の力を分散させるようにストロングポイントを両サイドと中央の3点におけば、相手はすべてをカバーするために戦力を一点集中するわけにはいかない。韓国に押し込まれたから一転日本のペースになったことを今後の糧にしてもらいたいものだ。
――アルゼンチンとは違った厳しい相手に対して、戦えた選手とそうでない選手がいたように思うが、例えば90分使った前田についてはどう評価するか? またアウエーということで何か作戦は考えていたのか(田村修一/フリーランス)
前田についてだが、前回はほとんど(ワントップは)森本だった。今日に関しては、試合終盤でもまだまだやれる感じだったので、前田がどういうプレーをするのか最後まで見てみようと思った。それと、最後の最後で怖かったのは相手のセットプレーだったが、前田は守備でもサポートしてくれると思ったので最後まで残した。
2つ目の質問だが、日本の能力があれば、ホームでもアウエーでも変わらず試合ができると思った。試合前に選手には、ホームでやるのと変わらない、という話をした。ただ、金曜日にホームでアルゼンチンに勝っていることもあって、韓国は気持ちを前面に押し出したサッカーをしていた。当然、相手がいることなので、ウチがいつも主導権を握れるわけではないが、最終的にはホームでもアウエーでも自分たちのサッカーができることがわたしの目標だ。
――自信をつけさせたいということだが、この2試合でアジアカップに向けた改善点は(大住良之/フリーランス)
約10日間、選手と一緒にいたが、その間に2試合あり、前の試合のリカバリーもしなければならなかったので、まだまだ選手たちにやってほしいことは伝わり切っていない。ただ、今後のスケジュールを見て、わたしはゆっくり(チームを)成長させていこうと決めた。最終的な大きな目標は、2014年のワールドカップだが、その間にアジアカップがあって、コパ・アメリカに参加できて、親善試合もたくさん組まれると思うが、そうした試合を経て成長させていくのが、われわれの仕事だ。特にこのチームでの課題は、試合の流れを読むことになると思う。試合の中で、ずっと横パスだけでも縦パスだけでもだめなわけで、試合の流れを読んで、きちんとした状況判断に則した戦術を用いること、それができるようになりたい。特に大切なのは、最後の数分になっても、攻撃の姿勢を崩さなかったことだ。
アジアカップに向けて自信をつけさせるというのは、裏返せば当たり前のことを当たり前のようにできるようにするということだろう。ヨーロッパ標準の守備セオリーがきっちり使えるようになればバタバタと慌てなくて済むようになるし、アジアレベルなら互角以上に戦えるとの計算ではないか。
ザッケローニは成長していく日本代表を目の当たりにして喜びに満ちているに違いない。スポンジのように貪欲にザックの知識を吸収し、実戦にフィードバックしている彼らの姿は感動ものだろう。だが、それでも過信に陥らないのは、ヨーロッパのトップでは声がかからなかったという事実ではないか。あるいは、日本代表でビッグアップセットを起こして再び第一線に返り咲くことを考えているかもしれないが。
スペイン流にこだわっていた原技術委員長だが、アルゼンチン戦、韓国戦をみるかぎりにおいては絶好の教師を見つけてきたというべきだろう。
試合後、韓国代表チョ・グァンレ監督会見
国際親善試合(スポーツナビ)
――チョ・ヨンヒョンが3バックで前の位置だったことについて。それからボランチのシン・ヒョンミンとポジションが重なったのではないか(韓国人記者)
日本とアルゼンチン(の試合)を見て、日本の守備に感動した。日本の堅い守備はメッシも封じていたので、ちょっとびっくりした。日本は守備がいいので、何とか中盤で勝負をつけるようにしないと、こちらの攻撃がうまくいかないと判断して、中盤でのボールポゼッションを考えた上で(選手の)ポジションを配置した。特にパク・チソンを中盤に置いて攻撃を生かそうとしたのだが、パク・チソンが欠場することになりチームが混乱した。チョ・ヨンヒョンのポジションは、本田(圭)が少し下がった位置で動くので、それを封じることを考えた。シン・ヒョンミンについては、キ・ソンヨンが昨日の練習後に腰を痛めたというので、MFで韓日戦にふさわしい経験のある選手が足りないと思って選んだ。
――今日の試合、よくできたことと、改善すべきところは(韓国人記者)
アルゼンチン戦と比べて、より(日本は)守っていたように思う。激しいプレッシャーで日本のプレーをよく封じていた。できなかったこととしては、攻撃面でオーバーラップが足りず、いろんなチャンスが作れなかったところだと思う。
――後半、 ヨム・ギフンを投入したが、すぐにユ・ビョンスに代えたのはなぜか(韓国人記者)
ユ・ビョンスは現在、Kリーグの得点ランキングトップなので、その得点感覚を信じて切り札として使ってみたのだが、うまくいかなかった。
韓国のシステムがバタバタしていたように見えたのは流動的に動かしていたわけではなく、パク・チソンがいないために彼中心のチームが組めなかった弊害だったということ。
それでも韓国はパク・チュヨン、イ・チョンヨン、チェ・ソングッの3人が積極的に日本ゴールに迫り、何度もチャンスを作って日本を脅かした。守備面の修正がなければ日本は早いうちに失点していただろう。ポゼッションを武器とする日本がフィジカルで勝負する韓国を相手にするには相手をいなしてということが大切になるのだが、その部分では日本はまだまだ経験値が足りなかった。
一方の韓国はもっとできたはずという思いがあるかもしれない。決定機は同じでもパク・チュヨンのシュートは二度決定的なものがあったし、チャンスも多く作った。ホームということを考えれば勝ちにいってドローというのは残念な結果。だが、日本はアウェイでも韓国に負けないだけのチームに育ちつつあると考えれば成長していると希望を見いだすことができる。
――日本の代表チームについて、ワールドカップ(W杯)以前と以後の違いがあるとすれば、どのように認識しているか(湯浅健二/フリーランス)
特に日本の守備の組織力が高くなったと思う。岡田監督時代よりは、ディフェンスのラインが前線に上がって、相手陣内でフォアチェックしている。(そのことで)攻撃への切り替えが早くなり、(相手にとって)危ない場面をよく作れるようになった。岡田監督時代は、攻撃に転じるときに余計なパスが多かった。今の日本代表は、すごく攻撃が早くなったというイメージがある。
ザッケローニはイタリアのクラブを率いている時代からショートカウンターを武器としていた。高い位置でボールを奪い、相手に守備を固めさせることなくゴールを陥れるというやり方はイタリア伝統の戦い方だ。岡田さん時代に無駄なパスを回して遅攻に転じざるを得なくなった場面が何度もあったことを考えれば、よりスリリングな場面が増えていくのではないか。
――これで今年3回目の韓日戦だが満足できたか? 特に監督が強調している、より早く考える、スマートなサッカーということだが、その完成度がどれくらいか(韓国人記者)
今日の試合は、大変難しい試合だった。選手は頑張ってくれたが、わたしが目標とするサッカーとはかなり差があると感じている。それにまだ選手を全部把握できているのか、ということもある。招集して2日や3日で選手を把握するのは難しい。アジアカップの前に2週間の事前合宿があるが、それを通して今までの3試合で足りなかったことをチェックしておきたい。
――今年のA代表のスケジュールは終わることについての総括を。またW杯以降、3試合戦って1勝1分け1敗だったことについて(韓国人記者)
準備期間が足りなかった。わたし自身は勝利への欲は強い方だ。勝つことも大事だが、アジアカップという大きな目標が目の前にある。3回のフレンドリーマッチで戦術、ゲームより、選手をよく見ることをポイントに考えていた。今のところ選手はほとんど把握できたという自信もあるし、そうした選手でアジアカップの準備をすれば8割から9割くらいで自分のサッカーは完成すると思う。特に今のチームで自信があるのは、失点があまりなかったことと、MFと攻撃陣の連係。そこをポイントに強化すれば、もっと怖いチームになると信じている。
――パク・チソンがいるのといないのとでは、チームのパフォーマンスが大きく変わる。それに対応できるオプションはあるのか? また、パク・チソン不在のチームをどう思うか(韓国人記者)
この問題では特に頭を痛めている。中盤をもうちょっと細かく、そしてアグレッシブにプレーできる選手を探している。そうした選手を確保できれば、ひとつのオプションとなるだろう。ユン・ピッカラムは若いし安定感もあるが、攻撃面でまだ足りない部分がある。ただし可能性がある選手ので、信じてみたい。
韓国メディアの代表に対する姿勢を見られたことは大きな収穫だ。彼らも今回の日本戦は消化不良だったのではないか。もっと韓国はいいサッカーができるはずと考えてぶつけて、満足できる解答を引き出した。日本に比べて韓国のメディアはサッカーに対する圧力がかなり厳しい。監督への注目度もはるかに高い。調子がよくても内容を問う紙面も多い。
いまのところパク・チソンがいない状態だからという言い訳ができるけれども、パク・チソンがいても日本は抑えきったのではないか。いや、エースがいるほうが抑えられたときのショックは大きい。その意味では韓国対策をすでに日本は作り上げている可能性はある。
ザッケローニはアルゼンチン戦も韓国戦もきっちり10時間以上かけて分析し、選手にフィードバックするだろうから、復習はどんどん進むことになる。より成長し、ステップアップするための糧となる。
未来を感じさせる日韓戦 (1/2)
韓国代表0-0日本代表(スポーツナビ)
今回、ホームで日本を迎え撃つ韓国は、宿敵に3タテを食らわせるべく、国外で活躍する11名を含むベストメンバーを招集している。だが、先に日本がアルゼンチンに1-0で勝利したゲームは、韓国の人々に少なからぬ衝撃を与えたようだ。今年のW杯で韓国は、アルゼンチンに1-4と完敗を喫している。その南米の雄を相手に、ホームで行われた親善試合とはいえ日本が歴史的勝利を収めたのだ。当然ながらそこには、いくばくかの嫉妬(しっと)を含んだ驚嘆があったはずである。と同時に、新たに就任したイタリア人監督の下で、日本はそのプレースタイルを刷新し、さらなる進化を遂げようとしている。ならば、ここはひとつホームでしっかり日本をたたいておきたい――というのが、日本への警戒感を募らせる韓国サイドの偽らざる気持ちであった。
韓国がフレンドリーマッチにもかかわらず本気を出してきたのは、アルゼンチン戦の結果を受けたということはあったに違いない。韓国がキリキリ舞いさせられたアルゼンチンのパスサッカーとメッシのドリブルをアルゼンチンが本調子ではないにしてもきっちり抑えきったのだ。韓国としては負けるわけにはいかなかった。アジアの雄としての地位を守るために。本音だったことだろう。
試合は得点こそなかったものの、終始スリリングな展開で進行した。
序盤は韓国が、闘争心を前面に押し出したプレーで、日本に対して猛烈なプレッシャーをかけてくる。それでも日本の堅い守りは決して崩れることはなかったが、12分に駒野がイ・チョンヨンと激突し、着地の際に右腕を痛めてリタイアするアクシデント(のちに骨折と判明)。すぐさま内田篤人が投入される。その後、15分を過ぎたあたりから、ようやく日本ペースでボールが回るようになるが、アルゼンチン戦のような縦への推進力が、この日はあまり感じられない。それだけ相手のチェックは激しく、しかも入念だったのである。特に両サイドでは、2人の選手が縦方向に並び、有効なスペースをことごとく封じていた。27分には、フリーで受けた本田圭が左足で豪快なシュートを放つが、これは相手GKのセーブに阻まれてしまう。前半の日本の得点チャンスは、このシーン以外にはほとんど見られなかった。
後半も韓国の猛攻に耐える時間帯が続く中、日本は長谷部や本田圭が強引なドリブル突破から、何とか打開の糸口を見いだそうとする。そうした流れの中で感心したのは、日本のほとんどの選手が韓国の選手に対して、フィジカルやスピードで決してひけをとらない戦いを見せていたことである。とりわけ長谷部、本田圭、長友といった、ヨーロッパの舞台でもまれている選手は体幹が強く、勝負どころもきちんと心得ている。その一方で、物足りなく感じられたのが高さだ。特に攻撃時でのセットプレーは、これまでなら日本の大きな得点源のひとつであったが、中澤佑二も田中マルクス闘莉王もいない今のチームでは、いくら正確なプレースキックを放っても、なかなかゴールには結びつかない。栗原に中澤の役割を期待するのは、いささか酷な話であろうか。
その後の日本は、4-3-3にフォーメーションを変え、併せて細貝萌や金崎夢生といったアルゼンチン戦でチャンスがなかった選手にも出番を与えるなど、勝負を懸けるというよりも選手の能力を見極めるようなベンチワークを見せる。日韓戦のテンションの高さに引きずられることなく、あくまでも自らに課したミッションを優先させる、ザッケローニ監督らしいさい配だ。前線の枚数を増やしたことが奏功してか、前半以上に決定的なチャンスを得ることができたが、後半32分には相手のペナルティーエリア内でのハンドが見過ごされ、終了間際の本田はまたしてもGKに阻まれてしまう。結局、今年最後の日韓戦は、0-0の引き分けに終わった。
駒野の骨折は残念だった。着地のタイミングの失敗というのは本人の責任ではなく、競り合った相手選手の責任でもない。駒野には取り返さなければならない忘れ物があるのだが、怪我で諦めることなくアジアカップまでにしっかり治してリベンジを果たしてほしい。両サイドのフルバックができて、守備意識のカバーリングができるようになった彼は非常に貴重な存在だ。
日本代表がプレスをかけられても慌てなくなったというのも大きな成長だろう。ヨーロッパ流のプレッシングをかけられると日本はバタバタしてミスを連発するのが常だった。だが、自信をつけ、守備セオリーを身につつある今ではすぐにパニックになることはない。難しいことはひとつもやっていないにも関わらず、チャンスを作ることができるようになった。
韓国のほうがチームとして熟成しており、日本は復習の最中だと考えれば、ドローは妥当な結果ではないか。3FWという概念を日本の攻撃陣が理解できれば、もっと破壊力のあるスカッドを形成することができる。前田が成長すればというのも森本だけに頼らないチームとして戦うというコンセプトがぶれなかったからだろう。
よくぞ引き分けに持ち込んだ。しかし、やっぱり勝ちたかった。そんなことを考えながら記者席を立とうとすると、見ず知らずの韓国人のおじさんが、ニコニコしながら右手を差し出してきた。反射的にこちらも右手を出すと、彼はぎゅっと握手して、韓国語で何事かまくしたてた。その高揚した話ぶりからして「お互い死力を尽くした、いいゲームだったなあ」と言っていたのだと推察する。この日は試合後に、スタンドのあちこちでこうした光景が見られたのではないだろうか。
日本が韓国に失点を許さなかった要因については、韓国の体制がスタートしたばかりであったことに加えて、パク・チソンが不在であったこと(試合前日に手術した右ひざに痛みを覚えて大事をとったそうだ)やピッチコンディションの不良など、いくつも挙げることができよう。だが、それらを差し引いても、この日の日本の戦いぶりがおとしめられることはないはずだ。その事実をきちんと評価しているのが、敵将チョ・グァンレ監督である。演歌歌手・前川清をほうふつとさせる韓国の新しい指揮官は、W杯以後の日本代表の変化について、このように述べている。
「守備の組織力が高くなったと思う。岡田監督時代と比べると、ディフェンスのラインが前線に上がって、相手陣内でフォアチェックしている。(そのことで)攻撃への切り替えが早くなり、(相手にとって)危ない場面をよく作れるようになった。これまでは攻撃に転じるときに余計なパスが多かったが、今の日本は攻撃が非常にスピーディになったという印象を受けている」
その日本を攻略するべく、中盤での構成を含めて入念に準備してきたチョ・グァンレ監督であったが、やはりパク・チソンの直前の欠場は大きな誤算となってしまったようだ。韓国代表にとって、アジアカップ終了後の代表引退を表明しているパク・チソンの後継者問題は、今後も頭を悩ませることになりそうである。
韓国も日本を認めざるを得ないほど、日本が強くなったということではないか。今までは勝っても何か言い訳ができる状態だった。運が悪かったとか、主力がいなかったとか。今回の試合もパク・チソンがいればという言い訳ができるが、彼がいないチーム作りはきちんとしなければならない。日本は既にブラジルに向けてのスカッドに経験を積ませている最中であり、選手のセレクトも行われている。
チームで戦うというコンセプトに対し、韓国はどう戦うのか。韓国メディアはいろいろ考えたのではないか。ヨーロッパ化しつつある日本と戦うことは韓国の力がどれだけ通用するかを計るいい相手になると。
日韓戦の復活はその意味では大きい。日本にとっても韓国にとっても大きくメリットがあるマッチメイクだからだ。
さて今回の日韓戦は、日本にとっても韓国にとっても、年内最後の代表戦であった。この時期に今年一年を振り返るのは、何やらとても気が早いような気もするが、この機会にどうしても指摘しておきたいことがある。それはこの2010年が、代表強化の方向性という意味で、非常に画期的な一年であった、ということである。
ポストW杯、ポスト岡田の代表監督選考が、思いのほか難航したのは紛れもない事実だ。結果としてW杯以後の最初の2試合は、原博実技術委員長が監督代行を務めるという苦肉の策をとらざるを得なかった。だが終わってみれば、この監督代行による2試合があったからこそ、岡田時代からの継続性はより明確なものになったような気がする。
もし、9月のパラグアイ戦からザッケローニがチームを率いることになっていたなら、今とはずいぶんと違ったメンバー構成になっていた可能性は高く、チームとしての方向性や選手の特性の見極めに、もっと時間がかかったのではないか。その意味で「日本としては今後、こういうサッカーを目指したい」「そのために現状、最も相応しいと思われるのはこういった選手たちです」という原技術委員長のプレゼンテーションは、極めて有効であったように思えるのである(もちろん、あくまで結果論ではあるが)。
そして何より、今大会の成果と反省を踏まえて、技術委員長自らが次期監督の獲得に向けた陣頭指揮を執ったことは大きかった。不慣れな交渉ゆえに人選には難航したが、これまでのように協会のトップが大きな発言力を持ち、強化の方向性も継続性も度外視した監督選びが続いていたことを考えれば、これは極めて大きな前進であったと言えよう。
ホームでアルゼンチンに勝利し、アウエーで韓国に引き分け、2試合での失点はゼロ。この守備力の強じんさは、間違いなくW杯で得た経験と自信がベースとなっている。と同時に、岡田体制からザッケローニ体制への移管が非常にスムーズに行われたことの証(あかし)であるとも言えるのではないか。「日本サッカー界の未来は明るいんじゃないか」というキャプテン長谷部のコメントにも思わずうなずきたくなる。日本代表に関して、これほど前向きな気持ちで年を越せる幸せをかみしめつつ、そろそろ当方もアジアカップに向けた準備を始めることにしたい。
W杯南アフリカ大会直前のどんよりした気持ちに比べれば、今は晴れ晴れとしている。岡田さんのサッカーを否定していたのは小難しいサッカーを他のチームよりも多く走りまわって続けるという不可能に近いことをやろうとしていたからだ。人間は身についていないことはやろうとしてもできない。
本戦での成功は岡田さんが戦術をシンプルにしたからに他ならない。ボールを奪えば単純にサイドにはたき、ドリブルを仕掛けるというやり方で相手を苦しめた。
ザッケローニはさらにシンプルにして、縦パス1本でもチャンスをつくれることを証明した。もちろん、横パスだけでも縦パスだけでもサッカーの攻めは単調になってしまうが、ザックのサッカーはシンプルだからこそ、応用がききやすい。考えるサッカーはオシムからの継承だが、やることがシンプルならいろんなアイディアがわいてくるというものだろう。
アジアカップまで選手たちがきちんと守備のセオリーを忘れなければ、期待できる大会になるに違いない。
2 件のコメント:
2、5月のリベンジを果たすことはできませんでしたが、悪くない試合内容と結果だったと思います。
来年1月のアジアカップの前哨戦とも言うべき韓国戦でしたが、アウェーでかつ(アルゼンチン戦から)選手を何人か入れ替えた状態で負けなかったというのは、自信に繋がるでしょう。
韓国はパク・チソンがアジアカップで代表を引退するらしいので、彼なしでも戦っていけるようになるかどうか課題なのでしょうね。
もっとも、イ・チョンヨンやパク・チュヨンら将来有望な選手は揃っているわけですが(苦笑)
日本も本田圭や香川が新たな主力となってきましたが、さらなる若手の台頭を期待したいです。
>どらぐらさん
リベンジはやはり公式戦のアジアカップでということですね。
ふさわしい舞台で勝利してほしいです。
CBも経験がほとんどない状態ですから、ここから経験を積んでいく栗原にはいい自信でしょうね。
パク・チソンがいなくなってもキ・ソンヨンやイ・チョンヨン、パク・チュヨンといった有望な選手がそろっているのはうらやましいですね。
日本も負けないようにしないとです。
遠藤、中村憲剛の後継者もほしいところです。
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