2009年11月15日日曜日

岡田は南アフリカ研修旅行に行っただけということがわかっていない

Friendly Match South Africa 0-0 Japan @ Nelson Mandela Bay Stadium

南アフリカ戦後 岡田監督会見
国際親善試合
(スポーツナビ)

結果的に勝てなかったのは非常に残念ですが、ひとつ目に、この独特の雰囲気の中で試合ができたということは、われわれにとって非常に大きな特訓ができたと思っています。

試合内容に関して、前半、なかなかわれわれのスタイルのサッカーができなかったんですが、後半途中から少しずつ、テンポよくボールが動くようになってきました。ただ最後のフィニッシュのところでどうしても人数が足りなかったという感じを受けています。

ディフェンスに関しては、ロングボール一発とか、速い相手への対処とか、いくつかポイントを置いてやってきたんですが、非常にディフェンスラインが安定してきたという実感を持っています。もう少し前が、全体のプレッシングがきけば、もうちょっと全体としても(試合の)イニシアチブを取れたんじゃないかと思っています。ただ選手が非常に疲れている、コンディション不良の選手もいる中で、よく戦ってくれたと思います。南アフリカのチームはモチベーションが高く、激しくプレーしてくれたことが、われわれにとって非常にプラスになったと思っています。


プラス面としては南アフリカで試合ができたこと、ブブゼラでの応援を体験できた。そのふたつしかなかった。

スタイルでいえば、岡田は自分の中にあるスタイルを忠実にやっていたとしか思えない。相手の守備陣形の外側でボールを回し、一発のパスで突破を狙う。ショートパスで崩すやり方ではなく、横パスを回しながら相手が焦れるのを待つというやり方だった。

南アフリカのチームの成熟度は非常に低く、守備の寄せは早かったもののミスパスや前線での崩しという部分では不十分だったことを考えれば、日本は何もできないま試合だけをしたと考えたほうがいいのではないか。

そのことを記者が突っ込まなかったことが不思議でならない。

――今日は稲本をアンカーにしたセントラルMF3人だったが、その狙いと評価は?

ああいう形でやるのは初めてのトライなんですけど、今回、中盤の選手が非常に少なく、(13日に合流した)中村俊輔と話し合った結果、まだコンディションが整わないというので「ああこれは、こういうことを試すチャンスかな」と思って、自分たちのオプションを増やすという意味でチャレンジしてみました。評価としてはご覧の通り、ダブルボランチに戻した方がボールがよく動くようになったということで、まだこのシステム自体はメンバーの問題もあるでしょうが、ベターではないなと思っています。


3センターということだったのだが、稲本は存在感がまったくなかった。長谷部と遠藤が動きまわる一方で右サイドの高い位置に張った本田圭佑は戸惑いを見せていた。岡田から見ても駄目だったということは、稲本がアンカーでは散らし役がいないということで失敗だったということだろう。本田圭佑はいいパスが少なく、もったときにもフォローする選手がいなかったことで孤立していた。

ただ、このことは岡田のチームが中村俊輔ありきから始まっていることを考えると驚くにはあたらない。本来ならチャンスメイクとして動くはずの中盤の選手ありきで考え、それにFWもあわせるという考え方なのだから、世界のサッカーとは噛み合わないのは当然である。

――中盤では互角以上にパスをつないだが、シュートになかなか結び付かなかった。その原因は何だと思うか?

前半に関しては、互角以上にやったと思っていません。前半は、われわれが言うアウターゾーン(相手守備ブロックの外側)でしかボールが回らずに、インナーゾーンの孤立したトップに(ボールが)入って取られるというパターンで、これはわれわれの戦い方ではなかった。そういう意味で、後半、ビルドアップのところは修正できて、あれを長時間、ある程度のところまでできれば。今日も決定的なのが2回ありましたけど、もう少しチャンスがあれば得点も生まれてくる可能性は高かったんじゃないかと思っています。


前半どころか後半でもビルドアップはできていなかった。南アフリカが相手だから決定機ができたわけで、もっと強豪なら何もできなかったに違いない。そのことまで突っ込む記者がいなかったことは本当に残念だ。

試合後 南アフリカ代表パレイラ監督会見要旨
国際親善試合
(スポーツナビ)

今回の試合はチームにとって新しい出発、新しいゲームだ。もちろん勝つことがチームの活力なるのは言うまでもないが、非常に素晴らしい組織のしっかりした日本と対戦できたことが重要だと思った。日本のプレーを最近5ゲーム見たが、非常に印象深い。経験豊富なチームであり、90、80、60といったキャップ数の選手もそろっている。最近のゲームを見ると、20回の枠内シュートをした、プレーイングマシンのような印象であった。日本は非常に速く(足が)止まることがないチームだ。今回の試合でわれわれはビルドアップがなかなかできず、シャバララはベストコンディションではないし、けがをしている選手もいれば、イングランドから来たばかりの選手もいて、初めて一緒にやったような試合だった。全体的にはよくプレーしたと思うが、われわれは3日しか準備できなかった。本当は7日はほしいところだ。

日本に対して(われわれは)ワンチャンスがあったが、相手のDFが良かった。最初の15分から20分くらいはバラバラなプレーをしていたが、最後の25分間は非常によくやったと思う。もっとポゼッションしたかったし、もっとビルドアップのあるゲームをしたいところだ。

――マッカーシーの今日の評価について

彼は代表からかなり離れており、本当のレベルに達していないまま今日の試合に挑んだ。チームのレベルアップとスピリットの向上の面では、非常に影響してくると思うが、彼自身がベストではなかった。今後に向けて期待したい。


パレイラとしては準備不足のわりには日本レベルの相手なら戦えるという確信を得たのではないか。日本はチームとして熟成されているし、レギュラーもほぼ固まっている。南アフリカは就任1試合目でこれから作り直すチーム。対比で見れば、0-3で破れてもおかしくなかったが組織的に守って日本の決定機を抑え込んだ。

彼らにとってみれば収穫だらけの日本戦だっただろう。勝てなかったのは予想の範囲内。負けなかったのは日本の実力が足りなかったから。

12月のドローで南アフリカの操作があるなら、同一グループに組み込まれる可能性はある。もちろん、南アフリカが勝ち点3を計算できる相手として。

開催地で得た教訓 (1/2)
宇都宮徹壱の南ア・香港日記
(スポーツナビ)

「今回、中盤の選手が非常に少なく、中村俊輔と話し合った結果、まだコンディションが整わないというので『ああこれは、こういうことを試すチャンスかな』と思って、自分たちのオプションを増やすという意味でチャレンジしてみました」

このコメントから、2つの興味深い事実が浮かび上がってくる。

まず、岡田監督は中村俊と本田の共存に、それほど固執していなかったという事実。つまり岡田監督の中では、現状でのファーストチョイスはあくまでも中村俊であり、本田は中村俊が何らかの事情で使えない場合(今回は直前での長距離移動による疲労)がなければ、優先的にピッチに送り出す考えはない、ということである。

もう1つは、岡田監督が中盤の構成について、新たなオプションを密かに模索していたという事実。基本的に今回の遠征では、あまり新しいことは詰め込まず、これまでやってきた戦術や方向性の精度を高めることに注力すると思っていただけに、今回の決断はいささか意外であった。と同時に、この決断の背景に「中村俊の不在」があったことを考え合わせると、今さらながらに日本の10番の存在感を痛感せずにはいられない。


やはり、中村俊輔と本田圭佑の共存はありえないということ。3センターは失敗だったという言葉からも4-1-2-3が試される可能性は非常に低い。となると、本戦は中村俊輔と心中ということになる。グループステージ突破ができなければ岡田はもちろん、中村俊輔も戦犯にあげられることは間違いない。

日本のマスコミはそうしないかもしれないが、コアなサッカーファンはそう考えるだろう。ドイツでも彼は戦犯だったのだ。

「サイドを崩して、という形がなかなかできなかったし、サイドバックが上がるまでの時間がなくて、その前にボールを取られてしまったり」(長谷部)
「もっと高い位置でキープできれば、それだけ(前線との)距離も近くなる。チーム全体としてもうちょっと押し上げられれば良かった」(遠藤)
「前で多少距離があったので、向こうがロングボールを蹴ってきて、そこでマッカーシーなんかにキープされることが何回かあった」(稲本)

つまり前線の3人が前のめりになりすぎて分離してしまい、全体で押し上げる場面が減少。これに付随して、サイドからの攻撃が機能不全となり、日本がせっかく体得したニアを狙ったクロスはほとんど見られなくなってしまった。前線でボールが落ち着かず、逆に攻め込まれる時間帯が多くなったため、前半30分を過ぎたあたりでベンチはシステムを4-4-2に戻すことを決断。エンドが変わった後半14分には、本田と稲本を下げて、中村俊と松井大輔が投入されたことで、中盤での役割分担はより明確化され、サイドからの展開も目に見えて増えていった。


長谷部、遠藤、稲本の3人ともに4-1-2-3システムでのプレーを知らないということを露呈したということだろう。何のためにウイングプレイヤーをおいているのか。両サイドのウイングが持っているときにはフルバックではなく、中盤からフォローにいったほうが早い。そのフォローをしなければサイドアタックは機能しない。両サイドのフルバックからのクロスだけをサイドアタックと考えているならそれは戦術理解がないとしか言えないだろう。

コンフェデ杯での南アは、ほとんどの対戦相手が格上だったこともあり、堅守速攻型のチームという印象が強かった。この日本戦でも、ディフェンスラインはかなり引き気味だったが、それ以上に相手のサイドからの崩しと低いニアへのクロスに対しては、十二分に気を配っていたように感じられた。この試合(特に前半)、日本のサイド攻撃が機能しなかったのは、もちろん慣れないシステムによる弊害も確かにあったが、それ以上に両サイドへの素早い寄せと、ニアに走り込む選手への徹底したケアがあったことは見逃せない。と同時に、十分に研究してきた相手に対して、日本のオプションがあまりにも少ないことが、あらためて浮き彫りになったことについても留意すべきであろう。

すでに繰り返し指摘してきたことだが、日本は「自分たちのサッカー」を追求するあまり、それが封じられた場合の解決能力は決して高くはない。もちろん「自分たちのサッカー」の精度を上げていくことも重要だが、戦術的、戦力的なオプションを増やしておくことも、本大会に向けて不可欠となってくることについては論を俟(ま)たない。「本大会に向けたシミュレーション」として、アウエーでの南ア戦はそれなりに意義があったことは認める。しかし同時に、このまま小さくまとまるだけのチーム強化では、おのずとW杯での戦いに限界があることも、この南ア遠征での教訓とすべきであろう。


研究されると弱い。これはずっと以前からの課題だ。岡田は前任者のオシムに比べて引き出しが少なすぎる。オシムも頑固なところがあり、負けることまで覚悟で選手を代えなかったりもしたが、岡田の場合は意図的ではなく、何もできないときの打開策がない。

今回はシステムを従来通りのボックス型に戻しただけで、ビルドアップは相変わらず下手だった。南アフリカはコンフェデレーションズカップ4位とはいえ、それほど強い相手ではなかった。その相手に研究されただけで機能不全に陥るようではセミファイナルまでというのは夢のまた夢であろう。

2 件のコメント:

どらぐら さんのコメント...

>南アフリカで試合ができたこと、ブブゼラでの応援を体験できた

ポジティブに考えてもこの2つぐらいでしょうね、南ア遠征の収穫は。

>12月のドローで南アフリカの操作があるなら、同一グループに組み込まれる可能性はある。もちろん、南アフリカが勝ち点3を計算できる相手として。

考えようによっては、南アと同じグループに組み込まれることは、日本にとっても好都合ですよね。
もちろん、それでも勝つのは容易ではないでしょうが・・・。

このまま俊輔と心中することになりそうですが、その俊輔がエスパニョールで出場機会を増やせないようだと、まずいですね・・・。

kiri220 さんのコメント...

>どらぐらさん

収穫は少なかったですね。
南アフリカも弱かったし。
もっと強い相手なら別だったのでしょけど。
南アフリカがシードのグループが一番有利なのですけど、そこでも勝ち点が計算できないのは痛いですね。

中村と心中でも構わないのですが、スペインで定位置を失っていますからね。
戦術理解が足りないのではないかと思うのですが。