2009年11月19日木曜日

香港戦は苦戦も岡田さんは納得とのこと

Asian Cup 2011 Qatar Qualifying Stage Group A Matchday 4 Hongkong 0-4 Japan @ Hong Kong Stadium
Japan:Hasebe 32,Hisato Sato 74,Shunsuke Nakamura 84,Okazaki 90+1(r)

香港戦後 岡田監督会見 (1/2)
AFCアジアカップ2011カタール予選
(スポーツナビ)

今日はわれわれは立ち上がりから、決して悪くないプレーをしていたと思いますが、しかしそれ以上に香港が素晴らしいプレーをしていた、ファイトしてきてくれたと思っています。シュートを決めること以外は、われわれも決して悪くなかった。そんな中、こういう展開で、得てして1本のピンチでやられることがあるところを、全員が慌てたり焦れることなくしっかりプレーをして、攻め急ぐこともなく、最後まで攻め続けてくれました。そういう意味でわたしにとっては第1戦の6-0よりもずっといい試合だったと思っています。今年最後の試合を本当に内容の濃い試合で終わることができてものすごく満足しています。これも香港チームの素晴らしいファイトのおかげだと思っています。

――南アではコンセプトができたところは6~7割だったそうだが、香港戦についてはどうだったか? そして足りないものがあるとすれば具体的に何か?

最初に言いましたように、今日の試合を通してコンセプトの面からは非常によくできていたと思います。7~8割までいっていたと思います。ただ最後のシュートを決めるところ、それとラストパスの精度というかタイミングですね。無理なタイミングでのごり押し、というのが少しあったかなと。それとやはり、焦れていないといいつつも、無理なサイドチェンジをひっかけられるというのが何本かあったと。そういうのはどうしても何本か試合の中ではあると思うんですけど、これからもっと精度を上げていければ。ただ南ア戦と比べて、プレッシャーもすべての面でワンランク上のプレーをしてくれたと思っています。

――前半20分くらいに内田から早いクロスが上がって岡崎がワントラップしてシュートを決められなかったシーンがあったが、「シュートを決められない」というのはそういうことか?

あれだけではなくて、ゴールの中からかき出されたのが3回くらいあったんですけど、要するに決定的な形になった時に、GKのファインセーブというのは当然ありますが、それを打ち破っていかないといけない。そのへんの感覚というのは練習しかないので。選手には今日のシーンを(ビデオで)編集して送るので、練習してほしいと。同じシーンを練習してほしいと伝えています。


結果的には4得点で勝ったわけだが、岡田さんのサッカーでは香港相手でもプレッシングをかけられると受け身になってピンチを招いてしまうということがはっきりしたゲームだった。これが強豪同士の戦いなら攻守の切り替えが頻繁になるのだが、日本はそういう戦い方になれていない。一方的に攻めるか、一方的に攻められるかということばかりだ。

香港相手でも前半の序盤、後半の序盤は香港ペースで攻撃に移ったときの判断力の遅さばかりが目についた。

これは決定力不足というよりも、チャンスメイク不足と言うべき。中盤にいい選手が揃っているのなら、触れば入るというボールを供給する仕事ができていないということになる。

そして、それは相手がどんなレベルでも同じように戦ってしまうところからくる悪癖なのだろうと思う。

――コンセプトにこだわり過ぎるのでは、という指摘に対して「今の段階ではこれでいい」と言っていたことがあった。今日は前半は低いクロスにこだわり過ぎていたようだが、40分過ぎに闘莉王がヘディングしたときのように、もっとバリエーションがあっても良かったのではないか?

コンセプトということで、この間言ったのは、早いクロスにこだわり過ぎたのではという質問があったので「今はそれででいい」と申し上げたんですが、今日はあれが一番相手が嫌だったと思いますし、怖かったと思います。それを防がれたときに(選手が)自分たちで考えて、違うプレーを選択したと。これは素晴らしいことだと思います。これをもっと「ニアじゃないところでやれ」と僕が命令して、そしたら次の試合は「もっとニアに蹴れ」と言わなければならなくなる。これは彼らがつかみ取ることで、今日の試合でも非常にいいチャンスだったんじゃないかと思っています。


このコメントで、日本代表はまだ選手自身で判断してプレーしていないことがわかる。日本人の特性というか、言われたことだけは上手くこなすが応用ができないということ。とっさの判断力でゴールに結びつけられるといいのだが、そういうレベルには達していないのだろう。

この発言で岡田は何をしていたのかということになるのだが。

ただ、選手たちも自主性にまかせると何もできないというレベルからまったく成長していないということになる。それは日本のサッカーにとって悲劇でしかない。

――佐藤寿人の評価について

彼はJを見ていてもゴール前で非凡な才能を、背が高いわけでもないし、足が速いわけでもないんですけど、これだけは絶対に教えられないなという感覚みたいな動きをするんですよね。で、今回は絶対に(メンバーに)入れたいということで入れて、練習でも「あ、こいつはやっぱり持っているな」と感じていたんですが、それを結果につなげてくれたというのは、ものすごくわたしとしてもうれしいことです。彼はほかの人にないものを持っているなと、あらためて感じています。


佐藤寿人については大久保よりも上だろう。チャンスが少ない中で結果を出した佐藤寿人に対し、何度も決定機を外した大久保は失格の烙印をおされてもおかしくはない。

それでも大久保を使うというのなら理由を説明してもらいたいものだが、監督の好みということになるのだろうか。

キム監督 日本にはおめでとうと言いたい。今日の日本は非常にいいパフォーマンスだった。われわれもベストのプレーをしたが、フィジカルとオーガナイズ、そして集中力が(日本と比べて)欠けていた。この結果について、香港市民に申し訳なく思う。

(アウエーでの日本戦に比べれば)今日は良いゲームだった。いい結果ではなかったが、先月よりも良い戦いだったと思う。ただし、われわれは今後強くなるためには、まだまだ改善の余地はある。


香港はいいファイトをした。このままチーム強化を続ければ間違いなくいいチームになるだろう。集中力の欠如は大きいが、トレーニングが補ってくれるはずだ。国内リーグで経験を積み、さらに国際試合で経験値をあげれば日本にとって強敵になるだろう。

香港戦と「世界」との間に (1/2)
宇都宮徹壱の南ア・香港日記
(スポーツナビ)

日本がアジアカップ予選を戦うことになったのは、言うまでもなく2年前の本大会で3位に入れなかったためだ。アジアカップ予選免除の権利が得られなかったのは(結果論を承知でいえば)前任者イビチャ・オシムによる唯一の「負の遺産」と言えるだろう。オシムが日本代表にもたらした良質な部分は、そのほとんどが忘れ去られて久しいが、この「負の遺産」だけは2年後の今も日本に重くのしかかっている状況は何とも皮肉である。今年の代表は、オフシーズンを早々に切り上げて合宿に入り、シーズン中もたびたびスケジュールの調整を強いられることとなった。今回の香港戦にしても、もしかしたらイタリアとの親善試合になっていたかもしれないのである。


宇都宮徹壱さんの強烈な皮肉だろうか。アジアカップ予選を戦わなければならなくなったのは間違いなくオシムの遺産だが、岡田さんになって良質な部分はほとんどなくなってしまった。このことは事実だ。

オシムは人もボールも動くサッカーを目指すとは一言も言っていないにも関わらず(結果として人もボールもよく動いたと言ったことはある)、その言葉がひとり歩きしてしまった。今ではサッカー雑誌は世界のサッカーに対しても人もボールもよく動くというキイワードでくくりたがる。

よいサッカーは結果的に人もボールもよく動くのであって、そのことを目的としているわけではない。サッカーの目的は相手ゴールをこじあけることであり、相手の攻撃を断ち切ることである。その戦術を考えるのが監督の仕事であるのだが、勘違いしているということなのだろう。

戦前の岡田監督のプランを想像すると、こんな感じになるのではないか。とりあえず、南ア戦での4-3-3から、オーソドックスな4-4-2に戻す。そこから先は、試合の流れによって2つのプランを用意する。すなわちプランAは、早々に試合の主導権を握った場合。そうなれば、再び稲本をアンカーで使ってみたり、あるいは本田と中村俊との共存を図ったりすることができる。そしてプランBは、試合がきっ抗した場合。それでも勝ち点3はほしいから、攻撃のテコ入れとして佐藤と徳永を使い、逃げ切り要員として阿部か今野をピッチに送り出すこともできる。

おそらく岡田監督の理想はプランAだったと思われるが、実際には香港が思わぬ反発力を見せたために、プランBを選択。結果、稲本と本田に出番はなかった。


プランAとプランBでは攻撃の幅に違いができないところがいかにも岡田さんらしい。通常戦い方のプランを変えるなら攻撃のオプションを増やすことを考える。FWを増やしたり、サイドアタッカーを強化したり、高い位置でボールを奪える選手を入れたり。

そういうことをまったくしないプラン変更というのは、疲れた選手を入れ替えるだけというのとどう違うのだろう。このプランでは稲本本田圭佑は日本代表が有利なときしか出られないことになる。つまり、安全策ということで信頼はされていないということか。

もちろん、この記事は宇都宮徹壱さんの言葉だが、サッカージャーナリストにこの程度の判断しかされないサッカーを岡田さんはやっているということになる。

とはいえ、岡田監督の次の発言については、いささか違和感を覚えた。

「この1年で考えると、かなり地力がついてきたかなと。6~7割のコンセプトでも危なげなくアウエーで引き分けてくる。そして今日も、あれだけ戦ってくる相手に対してあわてることなく結果を出してくる。(中略)私としては非常に満足しています」

「非常に満足している」――ということは、この香港戦の向こう側に、今の代表が目標とする「W杯ベスト4」が見えた、ということなのだろうか。申し訳ないが、私にはいささかイメージの飛躍のように思えてならない。ついでに言えば、先の南ア戦と比較して「すべての面でワンランク上のプレーをしてくれた」というのも、対戦相手との力関係を考えるならば、かなり甘い評価であるように思えてならない。

冒頭にも書いたが、今年も残すところ、あと44日。来年は言うまでもなくW杯イヤーである。おそらく本大会が近付くにつれ、巷(ちまた)では「ベスト4」を喧伝(けんでん)する言説であふれ返っていることだろう。私自身は、最初から「グループリーグ突破でも素晴らしい」と思っている、夢も欲もない人間なのだが、それにしてもこの日の香港戦の向こう側に「世界が見えた」とはとうてい思えないのである。

香港戦の取材を終えてホテルに戻り、この原稿を書きながら欧州予選のプレーオフを見た。先行して行われたウクライナ対ギリシャ、そしてスロベニア対ロシア、フランス対アイルランドをザッピングしながらあらためて感じるのは、同じ「公式戦」と呼ぶにはおこがましいと思えるくらいのテンションの高さである。日本はすでに、予選突破から5カ月が経過しているわけだが、プレーオフに回ったヨーロッパの国々は、日本がFIFA(国際サッカー連盟)ランキング127位のチームと戦っているときに、残り少ない南アフリカへのチケットを求めて、文字通り魂を揺さぶられるような真剣勝負を演じていた。そんな連中と同じグループでしのぎを削るのが、W杯という大会なのである。


W杯の本戦に出てくるチームが香港クラスというのなら、岡田さんの満足も納得がいく。アジアカップレベルというのでも大丈夫だろう。

しかし、相手は厳しい予選を戦ってきた世界が相手なのだ。負ければ終わりという戦いもあった。その絶体絶命の場面を乗りこえてきたチームに対して、ちょっとプレスをかけられるとぼろぼろになる日本代表が太刀打ちできるだろうか。

そのレベルに達したというのなら岡田さんのレベルもそれまでということだろう。

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