2010年5月11日火曜日

日本代表は決まってしまった。岡田さんの偏狭な理論で

2010 FIFA World Cup South Africa Group E Match No.10 Japan vs. Cameroon @ Free State Stadium-Mangaung/Bloemfontein 14/06 16:00

Japan 21/10 deaw 11/5 Cameroon 21/20(William Hill)

2010 FIFA World Cup South Africa Group E Match No.25 Netherlands vs. Japan @ Durban Stadium-Durban 19/06 13:30

Netherlands 1/2 draw 12/5 Japan 5/1(William Hill)

2010 FIFA World Cup South Africa Group E Match No.43 24/06 Denmark vs. Japan @ Royal Bafokeng Stadium-Rustenburg 24/06 20:30

Holland 8/13 Cameroon 4/1 Denmark 4/1 Japan 11/1(William Hill)

リアリズムに徹した岡田監督(スポーツナビ)

「サプライズはカズ(三浦知良)!」
そんな書き込みがツイッターのタイムラインで散見されるようになったのは、5月10日のメンバー発表を直前に控えた週末のことである。およそワールドカップ(W杯)イヤーとは思えぬ、何とも冷めきった空気の中で迎える「国民的行事」。そんな、盛り上がろうにも盛り上がれないもどかしさを払しょくさせるべく、半ば本気で「カズ」の名を挙げるファンは意外と多い。

今年43歳。今も現役を続けているとはいえ、常識的に考えてカズがW杯メンバーに名を連ねる可能性がほぼゼロに近いことは、誰もが認めるところであろう。「また次(のW杯)を目指します」という当人のコメントも、もはや4年に一度のお約束となって久しい。にもかかわらず、少なからずのファンが「サプライズはカズ!」を期待しているのはなぜか。求められているのは多分、プレーそのものではない。むしろ、今の日本代表に欠落した「何か」を埋めてくれる象徴として認識されているからこそ、今も根強い「カズ待望論」が存在しているのだと思う。これに加えて、かつて「外れるのはカズ!」と言い放った岡田武史監督に対する、今なお割り切れぬ複雑な感情が拍車をかける。

かくして12年の歳月を超えて、今回のメンバー発表はいつにも増して「カズ待望論」が横溢(おういつ)することとなったわけだが、もちろん会場で彼の名前が読み上げられることはなかった。とはいえ、その影響力がまったくなかったかといえば、否である。それは岡田監督が、予備登録メンバー枠の7名について一切言及せず、出場メンバー23名のみを発表するにとどめたことからも明らかだ。指揮官の脳裏に、12年前の苦い記憶が残っていたからこそ、30名から23名に絞り込むという合理的な選択肢をあえて排除したのは間違いないだろう。

結局のところ、今回は大きなサプライズもなく、イベントはつつがなく終了。ほとんど招集されていない選手が選出されることもなければ、さりとて「不動」と思われていた選手がばっさり切られることもなく、終わってみればほぼ順当な顔ぶれが並んだ。そして、全体的に強く感じられたのは、岡田監督の徹底したリアリズムであった。


三浦知良待望論があったのは事実だ。そういう情報はあちこちで飛び交っていたし、ロジェ・ミラを越える最年長ゴールの可能性だってあった。もちろん、可能性だけならすべての選手にあったわけだけれども。

ただ、メディアがリアリズムというのはいささか言葉を知らないのではないかとしか思えない部分がある。このメンバーは岡田さんにとってのリアリズムであり、勝てるメンバーであるとファンに納得させるレベルではなからだ。

たとえば、遠藤と中村俊輔

遠藤は肝炎を患ってから持久力に問題を抱えている。オシムのときにはロングディスタンスを駆け上がる運動量を見せたが、最近の試合ではダイナミックな運動量をほとんど見せない。天皇杯決勝で試合を決めたゴールのときくらいか。日本代表ではほとんど動かない。

中村俊輔も股関節の故障からまだ復帰していない。プレーはできているが全盛期に比べれば半分以下の出来だ。セルティックであれだけのプレーをした選手が、Jリーグレベルで埋もれてしまっている。たしかにアシストはある。だが、実況でいくら褒めてもキレがある動きにはとても見えない。

このレベルの選手を中心として据えなければならないのが、今の日本代表なのだ。といって、他に代わる選手がいない。いや、岡田さんの中ではいないということなのだろう。

岡田さんは非常に視野が狭く、頑固だ。一度決めたことは絶対に守ろうとする。選手交代にしても時間が決まっているかのように柔軟性がない。組織は硬直化し、ベンチメンバーの士気は落ちる。どうせ出られないという意識が強くなり、プレーが雑になる。

その中で貪欲さを見せた選手もいたが、岡田さんは選ばなかった。おそらく、試合を視察していても何を見ていいのかわかっていないのだろう。守備のセオリーすら知らない監督だ。ヨーロッパならスカウトすら務まらない。

比較的、納得できたのは岩政の選出である。鹿島アントラーズの守備の要も、代表メンバー23名の中ではキャップ数は最少の「2」。中澤佑二、田中マルクス闘莉王に代わるセンターバックのバックアッパーとしては、これまでユーティリティープレーヤーである今野泰幸と阿部勇樹が優先されてきた。こうした冷遇ぶりを見るにつけ、岩政が23名枠に残るのは厳しいと予想していたのだが、経験不足を補ってあまりある高さ(187センチ)と強さは、やはり捨て難いものがあったのだろう。中澤と闘莉王に不測の事態が生じた場合、前線に長身選手をそろえる対戦相手に対して、180センチに満たない今野や阿部ではおのずと限界もある。その意味で岩政の選出は、いささか意外に感じられたものの、実は極めて現実的な選択だったと思う。

しばらく代表から離れていた川口の選出は、本人のけがの状況もあって、当初は驚きをもって受け止められた。しかし、ベンチからチームを鼓舞するという役どころとしては、なかなか悪くないチョイスである。それに今の代表チームには、06年大会の宮本恒靖のような「調整役」のリーダーを欠いていた。今の川口ならリーダーとしてはもちろん、02年大会における中山雅史や秋田豊のような「ベテラン」としての役割も期待できる。もちろん、第3GKというポジションを考えるなら、川口が南アのピッチに立つチャンスはおそらく皆無だろう。それでも、指揮官が言うところの「リーダーシップ」に優れ、かつ「選手から一目置かれる存在」である川口がチームに与える影響は、決して小さくないはずだ。これまた、岡田監督のリアリスティックな人間観察による人選と言えよう。

一方、最も予想外だったのが矢野の選出。これまで岡田監督が、長身FWの起用には消極的だったことに加え、当人も今季のJリーグは決して好調とは言い難い(第11節現在ノーゴール)。それでも先月のセルビア戦で途中出場していたことを考えると、実は指揮官の構想にしっかり組み込まれていたと見るべきだろう。矢野が果たすべき役割については「セットプレーの守備、そして前線での追い回し、またはカウンターアタックでの飛び出し」(岡田監督)と語っているので、むしろ得点能力以外の部分で期待されているようだ。本大会でどれだけ出番があるかは微妙だが、指揮官が言う「使いどころ」がいかなる場面なのか、密かに注目したいと思う。


岩政についてはCBのバックアッパーは彼しかいないというところが本当のところだろう。高木、栗原と試したけれども、岡田さんには物足りなかった。CBを試す機会はたくさんありながら、かたくなに中澤、闘莉王のコンビを使い続けてきた岡田さんにとってカードの累積とか怪我とかは考えていなかったのに違いない。

だから、現実に闘莉王のレッドで使えないという状況を突きつけられると慌ててしまった。

この23人のプランはこれから始まるキャンプ、3試合のフレンドリーマッチで中澤か闘莉王のどちらかが長期離脱を強いられる怪我をした時点で終わってしまうプランなのだ。

川口についてはリーダー役という言葉で説明が行われた。チームキャプテンという先走った報道をしたスポーツ紙もある。この選択には驚きはなかった。第3GKとして納得しているなら、チーム内を鼓舞する役に徹するということだろう。気を抜いていたら雷を落とす情熱も川口は持っている。中田英寿が理想を語ってチームメイトとの意識の差を感じさせたようなことはないだろう。中田英寿は戦術音痴ではあったが、世界を知っていた。だが、今の日本代表は全員が戦術音痴で同レベルでしかないからだ。

矢野についてはドローのときにというコメントだったのだが、ドローの時期をいつと想定しているのかわからない。下手をすれば開始1分でそのプランは崩れてしまうかもしれない。前線からのフォアチェックは無駄ではないが、全体で連動しなければ意味がなくなってしまう。矢野だけがプレスをかけると彼だけが消耗する。そういうコマとして使うということなのだろうか。それなら、そういうスタミナを求めるのも岡田さんらしいのだが。

先に、スポーツナビがツイッターで募集した「日本代表に選ぶべき選手」として、多くの支持を集めていたのが、前田遼一と石川直宏であった。前者は昨シーズンのJリーグ得点王であり、後者は右サイドからのダイナミックな仕掛けが持ち味。いずれも代表の攻撃に豊かなバリエーションをもたらすであろう逸材である。しかし岡田監督は、前田の高さとしなやかさ、あるいは石川の突破力とイマジネーションよりも、矢野の「フィジカル、スピード、運動量」を選んだ。もちろん、好みの問題もあるだろう。だがそれ以前に、前田については「戦術面での考え方の相違」が伝えられており、石川については度重なるけがのためアピールのチャンスは極めて限られていた。ゆえに両者の落選は(いずれも残念な理由ではあるが)致し方ないとも言える。

今季のJリーグでの好調ぶりから、小野伸二と田中達也を推す声も多かった。小野は、ドイツでの不遇の日々を払しょくするかのような活躍ぶりで、清水の躍進に大きく貢献。田中も、このところ目覚しい復調ぶりを見せていた。とりわけ小野については、今季に入ってコンディションを崩していた遠藤保仁のバックアップとして、選出される可能性は高いと見ていた。しかし岡田監督は、直近のJでの結果よりも、2年近くも代表から遠ざかっていたリスクを、より重視したようである。かくして、中村俊輔を中心とする中盤の序列は、しっかり堅持されることとなった。FWの田中についても同様。裏に抜けるタイプの選手としては、とうに岡崎慎司が主軸となっており、ドリブラータイプでは「野性味を取り戻しつつある」(岡田監督)という大久保嘉人がいる。結果として、ギャンブルよりも安定感を重視する岡田監督の考えが、ここでも色濃く反映されることとなった。

一方で「割りを食った」感が否めないのが、若手選手である。GKの西川周作、DFの槙野智章、そしてMFの香川真司といった「4年後」を担う世代の選手たちは、今回は選出を見送られた。この件について岡田監督は「次の世代とか、経験させるためにということで選んだ選手は1人もいない」と言明。就任以来、積極的に若手にチャンスを与えてきた岡田監督だが、最後はリアリズムに徹した「勝つための」メンバーを優先させるしかなかったようだ。もっとも、本大会に帯同させるサポーティングメンバーについては、若手の中から「4人くらい選ぶ」としている。おそらく西川、香川あたりは、この中に含まれるのではないか。


岡田さんは自分の定規にあわない選手は選ばない。そういうことだろう。磐田の戦術を採用すれば前田はかならず点をとるのだがそれは岡田さんのプライドが許さないということで、石川はチャンスに決められなかったというネガティブなイメージがついて回ったに違いない。どちらもクラブの成績ではなく、日本代表での結果にこだわった結果だ。岡田さんの戦術にあわない選手は呼ばなかった。それだけのことだ。

小野と田中達也も同じだろう。小野を選ぶと中村俊輔、遠藤、中村憲剛と同タイプの選手が4人も揃うことになる。4人を同時に出すことは難しい。さすがにそう考えたのではないか。

また、稲本を使わざるを得ないのも日本代表が劣化していることと関係している。稲本ははっきりいって下り坂の選手。今なら本田拓也のほうがまだ活躍できそうだが、彼もパフォーマンスが安定しない。だから、ベテランに頼らざるをえない。悪循環である。

若手に関しては、本当に勝つつもりで選んだために入る余地がなかったということだろう。岡田さんにとっては若手は未知数の戦力なのだ。香川、槙野は有望株だが、そのまま成長するとは限らない。だから、ひとりも選ばなかったということ。それだけのことだ。

最後に、今回の23名のリストを眺めてみて気になったことについて、この機会に指摘しておく。念のため申し添えておくが、私はここで岡田監督の人選にケチをつけようという意図はない。そうではなく、もっと大局的な視点から、今回のメンバー選考に考察を加えておきたいのである。

私が何より気になったのは、その年齢構成についてである。今回の23名は平均年齢は27.8歳で、過去4大会では最も高い。そのうち30代の選手は7名。これもまた過去最多である。最年長は34歳(楢崎と川口)、最年少は22歳(内田篤人と森本貴幸)。全員が「昭和生まれ」だ。これほど代表が「高齢化」したのは、前述のとおり岡田監督が若手の勢いよりも、ベテランの経験を優先させたからである。その判断自体は尊重する。ただし、ここで私たちは奇妙な事実に気付く。ベテランが多いわりにはW杯経験者は8人しかいないのだ(06年大会は平均年齢27.2歳で、W杯経験者は11名)。つまり、年齢の割には世界を知らない、というのが今の日本代表の実像なのである。

思えば4年前、今野、阿部、そして松井大輔といったアテネ五輪世代は、チーム内の序列を重んじる当時のジーコ監督によって、ことごとくドイツへの道を断たれている(例外は駒野友一と追加招集された茂庭照幸)。同世代の長谷部誠も同様。闘莉王にいたっては、一度も招集されることはなかった。余談ながら、4年前のメンバー発表の際のコラムで、私は以下のような危機感を訴えている。

「松井をはじめとする現在25歳前後のアテネ世代は、最も伸び盛りの時代に世界を体感することなく、今大会をテレビ観戦することとなった。2010年、もし本大会出場のチャンスが与えられたとしても、すでに彼らは29歳。今の中田英と同じ年齢で、初めてのW杯を迎えることになる。この現実を、われわれは決して看過すべきではないだろう」

かくして日本代表は、4年前の「負債」を抱えたまま、一方で4年後に向けた「投資」も手控えて、南アでの本大会に臨むこととなった。前者については岡田監督を気の毒に思うが、後者についてはブラジル大会を目指す次期監督の「負債」となる可能性がある(くしくもこの日、岡田監督は続投の意思がないことをほのめかしている)。もちろん、岡田監督が選んだ23名は「われわれの代表」であり、本大会では全力で応援するつもりだ。しかし一方で、経験不足という「負債」がまたしても持ち越され、代表の人材が4年ごとに先細りしている現状についても、私たちは決して目をそむけるべきではないだろう。

祭典が終われば、すぐまた4年後に向けたプロジェクトが始まる。メンバー発表会見を取材するのは今回で3回目だが、取材を重ねるたびに4年という年月のはかなさを痛感せずにはいられない。果たして4年後、日本サッカーをめぐる状況は、どうなっているのだろうか。そしてカズは、そのころも依然としてW杯を目指しているだろうか。


この点については間違いなくおかしいと言わざるをえない。宇都宮徹壱さんがそういう疑問をもっていたのならなぜ会見場で質問しなかったのだろう。日本サッカー協会が同じ質問者を選び続けたということもあるだろうが、もっとごりごりとプレッシャーをかけつづけてもよかったはずだ。キャプテンを誰にするとかしないとか、ブラジルまでのオファーがあった場合とか、そういう下らない質問をするくらいなら、もっと侃々諤々議論できるような質問をして欲しかった。岡田監督は最後まで過保護なままで本大会に向かっていく。それは日本代表の崩壊を目の当たりにすることになるのだろう。岡田さんはもう日本に帰ってくるつもりはないかもしれない。日本代表監督としての報酬は海外で暮らすには十分な額だからね。

4 件のコメント:

どらぐら さんのコメント...

W杯本番までに俊輔と遠藤のコンディションが上がってくれることを祈るしかないですね。
良くも悪くも岡田ジャパンは、この二人のチームと言っても過言ではないですし。

経験不足という「負債」は確かに気がかりですが、これを監督一人の責任にするのは厳しいかなとも思います。
監督はあくまでチームを勝たせるために存在しているわけですし。
むしろ、監督を含めた協会スタッフ全員の責任かなと。

とは言え、仰るようにあの場でそのことについて追及できない雰囲気が出来上がっているのは、由々しき問題ですね・・・。

Unknown さんのコメント...

岡田の頑なな理論は、単純に自らを救ったバーレーン戦メンバーに集約されていると言っても過言ではないと思いますね。

ただ、誰がメンバーに選ばれても何処にも勝てないというのでは余りに寂し過ぎますね~。

勿論、現実的に日本より下の国は数えるほどで、その相手すらも10回やって10回勝てるとも限らないのが今の日本代表の実力です。

しかし、カメルーンも守備陣や監督などをみていると決して万全な状況とは言えず、日本にも付け入る隙はあるとも思います。

まぁ、その為に勝てるだろうと思わせるチームを作ってこず、最後の挽回できるチャンスでもある選手選考においても中途半端にまとめてしまったのが運のつきかなと。

考えれば考えるほど、虚しくなるので、選手選考にはもう触れない事にします。

あとは、俊輔が化けの皮を剥いで以前の俊輔に戻ってくれればいいのですが・・・

kiri220 さんのコメント...

>どらぐらさん

岡田さんのチームは主力の何人かが怪我をしてしまうとプランが壊れてしまうところばかりですね

ぼくは経験不足という負債については岡田さんに何も言えなかったところに問題はあると思っています。
なぜ、選手を試せなかったのかが問題ですね。
負けず嫌いという性格だけでは説明できない執着心です。

記者会見ではかなりの不満があったみたいですね。
協会は避けて指名したのでしょうね。

kiri220 さんのコメント...

>S-Kyoさん

カメルーン相手には過去には負けていないというデータはあるのですが、あくまでも過去の対戦ですからね。
実際問題として本番で対戦するのは初めてですし、どうなるのか。

カメルーン、オランダ、デンマークを相手に果たして勝ち点4がとれるのか、というところはかなり疑問があります。

おそらくドイツのメンバーが最強だったはずなのですが、あのときの負債が大きすぎましたね。
あのとき別の監督だったらと思いますが、後悔しても仕方がないことですね。

中村が復活しなければたぶん、悪夢のような結果になるでしょうね。