2010年3月8日月曜日

中村俊輔中心システムの功罪を考える

日本サッカー協会はオシムに日本代表監督就任を要請するに当たって、「アジアカップには中村俊輔高原直泰を招集してほしい」と条件をつけたという。

高原直泰は怪我もあり、浦和でレギュラーを失ったこともあり、日本代表から外れて久しい。一方、中村俊輔だが、岡田さんの寵愛もあって招集され続けている。横浜Fマリノスに移籍が決まった今季は日本代表の全試合に呼ばれることは間違いないだろう。怪我があったにせよ、エスパニョールで居場所を失い、出場機会を求めて横浜Fマリノスに移籍した選手で、高原が浦和に移籍した事情と通じるものがあるにも関わらず。さらに言えば、この移籍事情は大久保ヴォルフスブルクから出場機会を求めて神戸に復帰したときとも酷似している。高原にせよ、大久保にせよ、Jリーグ復帰後に日本代表でインパクトを残していない。中村俊輔も同じようになるのではないかと危惧している。

言うまでもないことだが、日本人でペレが選んだ『偉大なサッカー選手100人』に選出されたのは中田英寿ただひとり。クリスチアーノ・ロナウド、カカ、メッシといった若手のスターは選出されていないものの、ベッカムロナウジーニョ、パク・チソンといった中村俊輔と同年代の現役選手は選出されている。ペレにとっては中村俊輔よりも2歳年上の中田英寿や2歳若いパク・チソンのほうがインパクトがあったということなのだろう。ヨーロッパではほとんどインパクトは残せなかったが現在はエストゥディアンテスでプレーし、コパ・リベルタドーレス制覇の原動力となったセバスティアン・ベロンも選ばれているが、中村と同タイプのリケルメは選出されていない。

ペレの審査眼だけで中村の善し悪しを判断するつもりはない。それはあまりにも礼を失するというものだろう。FIFA100の結果だけを重要視するなら、現在の代表のほとんどは否定しなければならなくなる。ただし、参考として同じ時期にヨーロッパで活躍した選手でありながら選ばれていないという事実を押さえてはおきたい。

その上で中村俊輔の長所と欠点をあげてみよう。W杯ドイツ大会、アジアカップで体調不良で結果を出せなかったのも中村俊輔でもある。大事な大会になると体調を崩すのが彼の特徴とも言える。中村俊輔に対して好き嫌いがあるわけではなく、現実によいチーム構成を考えるというロジックを突き詰める試行であることをお断りしておく。

長所はキックの正確性、プレイスキックの精度、FKの精度。欠点はプレーエリアという感覚の欠如、縦へのオフザボールの動きの欠如(パスの受け手としては不十分)、コンタクトプレーの弱さ、ミドルシュートを撃たないことがあげられる。

サッカーはゴールを多くあげたほうが勝つゲームだ。いくらいいゲームをしても得点できなければ勝てない。日本のFWの決定力不足や貧弱さが言われるが、その頼りないFWに簡単なシュートを決めさせるのが中盤の役割である。サッカーはFWを基準にして考える流れになっており、10番タイプの選手を中心としたシステムは分が悪くなりつつある。クラブシーンでも10番タイプの選手が中心の場合には低迷してることが多く、逆に中盤の選手が脇役でFWが目立つクラブほど上に行く傾向にある。その意味では中村俊輔中心のチーム作りではなく、岡崎、森本を中心としたチーム作りをしなければならないのは当然のことだろう。

岡田監督が考えるベストメンバー布陣は以下の通りだろう。岡崎が森本に代わる可能性はあるが大きく違わないはずだ。



システム上は4-2-3-1という世界最先端。しかし、岡田さんにはプレーエリアを守るという意識がまったくないため、中盤の選手は自由に動きまわることになる。



だから、現実にはこういう布陣となってしまう。中村俊輔が左サイドに寄りがちで、松井本田圭佑が中村俊輔がいるはずの右サイドをカバーというかたちが出来上がる。

どうしても左サイドに重心が傾き、右サイドが軽いオーバーロードになっている。右サイドをカバーするのは内田ただひとり。カフーですら1試合に10回以上もオーバーラップしてクロスを送ることは稀だった。ましてや世界のトレンドはサイドアタックに傾いている。レフトバックとレフトハーフ(あるいはレフトウイング)の2枚で攻撃されると内田の後ろの広大なスペースを突かれてしまう。攻撃時に闘莉王は上がっていることが多いため、このスペースは中澤がカバーするのだが、そうすると長友の背後のスペースががら空きになる。そこに相手のライトハーフ(あるいはライトウイング)とCFが入り込むと楢崎でも止めきれない。

中村俊輔がプレーエリアを守らないだけでこれだけバランスが崩れているのだ。パスの精度、セットプレーの精度の利点を生かすにしてはあまりにも大きな代償である。

もちろん、岡田さんがこのことを十分に承知した上で容認しているなら構わない。このバランスの悪さを修正する約束事を作っているということだから。

しかし、岡田さんはピッチの上に描かれる奇妙な日本代表のシステムに気付いていないように思える。約束事は松井と本田圭佑だけが知るヨーロッパの常識で埋めているのだ。その証拠に、松井の代わりに大久保、あるいは岡崎が右サイドに入ったときにカバーする動きはまったく観られなかった。

となると、プレーエリアを守れる選手をカバーに入れるか、中村俊輔を外すかということになる。

レッジーナで3シーズンを過ごしたが、歴代の監督は中村のポジション適正を見つけるのに非常に苦労している。当初は左サイドだったが左足をケアされると動きがとれなくなり、レジスタに下げられ、4-4-1-1の1トップ下でも試された。この試用はエスパニョールでも繰り返されることになる。

中村俊輔が輝いたのはセルティックに移籍してから。チャンピオンズリーグマンチェスター・ユナイテッドミランを破ったのもストラカンの指揮下だった。この時代、中村俊輔は右サイドのプレイメーカーに固定され、中央から右サイドのプレーエリアを守ることをきつく言われていたのだろう、ピッチやや右という位置でプレーすることが多かった。

だが、中田英寿が日本代表に復帰するごとに所属クラブでポジションを失っていったように、中村俊輔もクラブと日本代表でのプレーの乖離が観られるようになる。セルティックでは出来ていたプレーが日本代表では出来なくなっていくのだ。そして、怪我はあったにせよ、エスパニョールでは戦力外となり、放出された。開幕前の期待とはまったく違うプレーに失望したというのが実状だろう。

中村擁護論ではスペインだけで判断するのはおかしいというのがあるが、中村はイタリアでも通用していない。試合数は多かったがファンの信頼は最後まで勝ち取れなかった。コッツァにポジションを奪い返されたことは忘れられない出来事だろう。

現実として中村をきちんと使いこなした監督はストラカンだけ。日本代表ではプレーエリアを無視することでバランスを崩し、岡田さんはその修正をすることができない。

日本代表監督がストラカンなら上手く修正するのだろうが、現実には日本代表監督は世界基準を知らない岡田さんなのだ。

もちろん、中村俊輔が1試合に3ゴール決めるとか、3アシストをするような選手なら90分のほとんどの時間消えていても、ずっと歩いていても文句は言わない。だが、試合を通してもっともボールタッチをしながらプレーを作っている選手がもっともゲームを壊しているというのが現実なのだ。



これでもバランスは悪いのだが、少しはましになるはず。遠藤のところに中村俊輔を入れてもいいが、その場合には稲本(今野または阿部)の負担が大きくなる。レジスタはおかなければならない以上、遠藤か中村憲剛(怪我からの復帰が条件だが)をおくのがベターだろう。

といっても、岡田さんがこのシステムをとるとは思えないので検証のしようがないのではあるが。

8 件のコメント:

どらぐら さんのコメント...

このブログパーツだと、選手の配置を好きなようにいじれるので、例えば上から2番目の図はkiriさんの説明をよりわかりやすくしてくれています。

バーレーン戦でも、序盤にカウンターから日本の右サイドを突かれてピンチを招きましたが、
戻ってきたのは俊輔ではなく本田でした。
最後は闘莉王がクリアして事なきを得たのですが・・・。

しかし、今のままでは俊輔はW杯メンバーに選ばれ、スタメンとして出場するでしょう。
彼のポジションを脅かす選手の台頭を期待したいのですが、俊輔が国内組となった今、例えば石川が来月のセルビア戦で先発に起用される可能性は低いでしょうし・・・。

kiri220 さんのコメント...

>どらぐらさん

いろいろ動かせるとシステムの表現が楽でいいですね。
相手と被らせられればもっとわかりやすくなるのですが。

実際、プレーエリアを守らないということで起こっている弊害は大きいです。
今、日本ではそういう議論は一部でしか行われていないですし、結構詳しいファンでも無視していますからね。

ドイツでの惨敗で日本は強くないんだと再認識したのと同じで、南アフリカでは日本人選手のサッカーインテリジェンスは高くないということを意識する大会ではないかと思いますね。

修正案でも実際は勝てないのでしょうけれども、中村俊輔がJリーグに復帰してこのシステムが試される可能性はないでしょうね。

S-Kyo さんのコメント...

凄まじい長文コメントを書いたのですが消えたので、また書く事にします^^;

ざんねんでした・・・

kiri220 さんのコメント...

>S-Kyoさん

中村のことなので言いたいことは理解できますが。
コメント欄なのであまりの長文だとアップできないはずです。
感情的ではない反論をお待ちしています。

S-Kyo さんのコメント...

先日はホントすいませんでした^^;

感情に流されてしまいまして。

この事を書いたのに消えていた事を忘れてました。

今、俊輔についての反論を何とか仕上げようと書いているところです。

書き上げたら是非読んでやって、突っ込みいれてみてください。

とはいえ、キリさんの意見はかなり厄介ですねw

俊輔を熟知すればするほどに理解出来るその主張をどう退けるか、ある意味仕事より難解なミッションになっており、すぐに出来上がるかは微妙な様相を呈しております(苦笑)

kiri220 さんのコメント...

>S-Kyoさん

大丈夫ですよ。
狂さんが中村賭けている気持ちはわかっていますし。

たぶん、ぼくが中村を嫌いで記事を書いていたら反論もしやすいのでしょうけど。
感情論では強くならないですからね。

「世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス」という本を読んで、戦術音痴なのはすべての選手ということを理解して愕然としているところです。
この本については今度紹介します。
まあ、イタリア人の戦術論なのですが。

ディアゴナーレという戦術理論ひとつ理解できていないというのはショックでしたね。

S-Kyo さんのコメント...

ようやく一つの整理が出来ました。

記事を見ていただけたらわかると思いますが、キリさんの仰っている事は残念ながら私が思っていた事と似ているという事です。

短所を改善してもらわなければ、より違った方法を選択した方が強くなるのではないかと思えてしまうのです。

なので、反論は何一つ出来ませんでした^^;

それが感情的になった一つの原因だったかもしれません。

「世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス」という本は加部氏のコラムで存在は知っていましたが、イタリア人が見て口を揃えて言っていたらしく、驚きでした。

リッピと友人だという岡田が何一つ知らずにいる事が何よりも恐ろしいですね。

守備がダメで攻撃もダメ。

監督が代わらない以上選手を代え、システムを代えるしかない今、俊輔がどうなっていくのかも含めてただ見守っていくしかないですね。

そんな中、本田という選手が強烈アピールしている状況が唯一期待を高めてくれています。

kiri220 さんのコメント...

>S-Kyoさん

ぼくも中村俊輔はセルティックでは活躍していたことだし、どうすれば上手く生きるのかということを考えていました。

4-2-3-1の1トップ下とか、4-1-2-3の守備的MFのバランサーの役目とか、4-2-1-3のフォアボランチの位置とか。

しかし、どこに当てはめても中村は守備に走るだろうし、そうすると真ん中にスペースが空くのですよね。

中村以外の選手も今回書いた記事のように基本がわかっていない以上、任せるわけにもいかず。

ということでした。

岡田さんではなくて、もっとレベルの高い監督だったらきちんとした解が見つかったかもしれないですけどね。

それが残念です。