Japan:Okazaki 36,Keisuke Honda 90+2
バーレーン戦後 岡田監督会見
AFCアジアカップ2011最終予選(スポーツナビ)
立ち上がり入れ込み過ぎというか、変な緊張感もあって前に速くなり過ぎて、本田の位置も2トップ気味に入り過ぎていたので、なかなかボールがわれわれのペースで回らなかったんですけど、途中から落ち着いてきてボールが回るようになりました。海外組のコンディションが万全ではないことは分かっていたんですけど、後半途中から中盤の足が止まってきて、ちょっと攻撃が薄くなってきたという感じは受けています。2日前に集まってやった試合にしては、そこそこかなと思っています。
今日は試合前に「言い訳なしで結果を出そう」ということで、何とか結果を出してくれた。(監督就任後)初めてバーレーンに1点差ではなく2点差で勝てた。チャンスでもう少し決めていかないといけないし、いろんな問題点はありますが、選手たちは最後まで点を取りにいって、2点目を取ってくれた。よく頑張ってくれたと思います。
オランダ戦の敗戦後、90分間プレスをかけられるようにならなければ世界では戦えないと言っていたのは岡田さん本人。しかし、本戦に出場できなかったバーレーン相手に90分もたなかったのも事実。ポゼッションで圧倒的に上回りながら、プレスをかけられてボールを失う場面も目立った。決定機も作られたし、レベルが上の相手ならもっと点をとられていてもおかしくはなかった。
――森本ではなく岡崎をスタメンで使った理由は?
いろんな意味で海外組のコンディション、それとコンビネーション、計算が立たない部分がありました。戦術的な練習は1回だけだったので、そういう意味である程度計算が立つ形でスタートしようということで岡崎を先発で使いました。
――「言い訳なしで結果を出せ」といった意図は?
試合前のミーティングで言い訳なしで結果を出そうぜ、と言いました。それは東アジア選手権のときにワールドカップだとかわれわれのサッカーだとかで、目先の勝負に選手たちが徹することができないということがあったので。われわれの中ではいろいろなテストだとかを考えていますけど、選手には勝負に徹してもらいたいということで、そう言いました。
――中村俊と本田は融合できていたか? W杯に向けて可能性を感じられたか?
今までも一緒に使っていて、なかなかスムーズではなかったところは確かにあったんですが、本田自身が、今回集まってびっくりしたんですが、プレースタイルがかなり変わっていて、シンプルにプレーして動いてディフェンスもすると。体もかなりキレている状態だったので、今日は非常に、今までになく良かったと思っています。本田が点を取ってくれたことは、われわれにとっても非常に大きい。なぜなら彼に期待していることは得点力なので、彼が点を取ったということは、ほかの誰が取るよりもわれわれにとってはうれしいことだと思います。
本田圭佑や森本の動きが世界基準であって、そのことに気付いていない岡田さんは世界から取り残されていると言っていい。彼らを生かすためにはやはり世界基準を知る監督が率いる必要がある。結果的にサイドアタックから2点をとったわけで、両サイドのフルバック、サイドハーフの2枚のサイドアタックが効いたかたち。それを忘れて中央突破にこだわるようではまたおかしくなるだろう。その意味ではプレーエリアを守れない中村俊輔がゲームを壊す可能性が高くなる。頻繁にポジションを変える彼の存在はネガティブ・トランジションで確実に狙われるのだから。
――松井には何を期待しているのか?(湯浅健二/フリーランス)
まず、今日のメンバーというのは昨年、一昨年、公式戦ではほとんど、このメンバーに近かったので、お互い気心が知れているということ。それとともに、松井は最低限、攻守にわたって戦うことが計算できる。まだまだ中盤でのシンプルなプレーとか足りないところもあったかもしれませんが、彼がこのチームで左サイド、特にワイドに張ったところでプレーできること、それとボール際で最低限戦ってくれること。そういうことを期待しています。
――後半、途中から足が止まったということだが、その前の20分は攻撃がつながってチャンスはあった。ハーフタイムの指示は?(大住良之/フリーランス)
ハーフタイムには、立ち上がりが入れ込み過ぎだと。本田のポジションが高過ぎると。裏を狙うのはいいけれど、うちのリズムになっていないと試合中には言ったんですが。本田、長谷部、遠藤のところで、少しボールを動かして、そこから外へ。そこに俊輔か松井がひとり絡んできて、外を使う。外に起点を作って攻めていくようにと。あとは無駄なファウルをするなと。今日は入れられませんでしたが、レベルの高いチームのセットプレーというのはリスクがある。あと(話した)2つは、そんなに大したことは言っていないですね。
――後ろの方は同じメンバーでずっとやっているのに連係のミスがあったように思うが?(後藤健生/フリーランス)
守備に関して、少し入れ込み過ぎて2人で競りにいったりしていました。前半はカウンターで2本ほど(ピンチが)ありましたが、4バックの守備に関してはそれほど心配していません。ただ、自陣でのイージーなミスパスが少し目立ったのが、逆に気になっています。
――東アジア選手権を含めた4試合と比べて、海外組がいたことで何が一番変わったか?
先ほども言いましたが、このメンバーが一番長く一緒にやっていて、東アジア選手権のメンバーは親善試合を何試合かやっているだけなんですね、実は。そういう意味で長い時間を一緒にやっている選手たちということで連係が良かったこと。それと今回、スタートポジションの意識というのをテーマにしていました。自由勝手に動いてうまくバランスが取れれば理想なんですが、スタートポジションをしっかり意識しろと。結構、ポッと言っただけで理解できるというところ。そのへんの経験を持った選手の差が大きい。それとともに、やっぱり技術の精度というか、ミスが東アジア選手権よりは少なかったんじゃないかと思っています。
結局のところ、岡田さんのサッカーは戦術的な観点ではなく、選手間のフィット感を優先にしているということだろう。戦術とプレーエリアがしっかりしていれば新しい選手が入っても簡単にフィットするのだが、そのあたりの理解は岡田さんにはないらしい。
こういう監督で戦わなければならないというのは、恐ろしいくらい不幸だ。
試合後 バーレーン代表マチャラ監督会見
AFCアジアカップ2011最終予選(スポーツナビ)
日本の勝利におめでとうと言いたい。この結果は正しいものだった。日本はわれわれより強く、われわれはミスから2点を失った。前半はわれわれも悪くなかったが、トータル的に両者には違いがあった。それは選手の質であり、またリーグの質によるものでもあった。実は今回の代表には、初選出の選手もいた。このような試合ができたことは、良い経験になったと思う。今回はうまくいかなくても、次に生かせればいい。将来に向けて良い機会となったと思う。われわれバーレーンにとっても、今日は面白い試合だった。また会場では、サポーターもスタジアムもとても素晴らしかった。岡田監督もチーム作りでこの試合を生かせることを願いたい。カメルーンもオランダもデンマークも強いが、岡田監督の幸運を祈る。
――日本をいつも苦しめてきたが、それは日本をよく研究しているからだと思うが、日本の攻撃を抑える一番のポイントは何か?(湯浅健二/フリーランス)
しっかり準備して日本を苦しめることができたのなら満足できる。ただし自分たちは決して強いチームではない。われわれはミスで日本にチャンスを与えてしまい、その代償は大きかった。左右のクロスから、いずれもヘッドでゴールを決められてしまった。もちろん戦術も大事だが、日本の選手とは、質の面、スタミナの面、そしてテクニックの面でも差はあるし、われわれは海外でプレーする選手も呼べなかった。その中でベストは尽くしたつもりだ。それにバーレーンは、何年か前にはとても日本に太刀打ちできなかったが、ここまで戦えるようになったことをうれしく思う。日本には、南アフリカから良いニュースが届くことを期待したい。
マチャラの言葉には4年後はわからないとも聞こえる。中国で行われたアジアカップではバーレーンは日本をあと一歩のところまで追いつめた。あのアタッキングスタイルでの撃ち合いに比べればおとなしくなったが、それでも強くなったのは事実。主力5人が抜けていなければもっと効果的な攻撃が見られたかもしれない。
だが、この日の試合は勝っても負けても経験を積む以上の意味はない試合。海外組を使うと焦った岡田さんに比べ、将来への布石を打ったマチャラのほうが戦略家としては上とならないか。
余裕なき戦いの果てに (1/2)
アジアカップ予選 日本代表 2-0 バーレーン代表(スポーツナビ)
日本代表、ワールドカップ(W杯)イヤー5試合目の相手は、あのバーレーンである。「あの」というのは、これまで嫌というほど対戦している、というニュアンスが含まれている。
岡田武史監督就任後だけを見ても、これで6試合目。過去5試合の戦績は日本の3勝2敗で5得点4失点。2点差以上で勝利したゲームは一度もなく、アウエーでは2度、0-1で敗れている。日本にとって、決してやりやすい相手ではない。そして何より、われわれメディアやファンにとってみれば「もう、いいでしょ」と思ってしまうくらい、この中東の島国には、いささかうんでしまっている。3年間で6度目の対戦。年に2回の勘定だ。これほど頻繁に戦っている相手は、もちろんほかにはいない。
そもそも大前提として、今回の試合は来年1月にカタールで開催されるアジアカップ予選であり、日本は今年1月のイエメンとのアウエー戦で(しかもほとんどBチームというべきメンバーで)勝利して本大会出場を決めている。つまり本来ならば、お気楽な消化試合となるはずだったのである。ゆえに、バックアッパーを試す場にしてもよかったし、逆にバーレーン戦の日程をずらして、ヨーロッパやアフリカの強豪とアウエー戦を組むことだって十分に可能だったのである(実際、中国はベトナムとの予選最終戦を延期して、ポルトガルとの親善試合を組むことに成功している)。なぜ、そうはならなかったのか。ここに、現在の日本代表を追い込んでいる誤算の連鎖を見てとることができるだろう。
第1の誤算は、チームのコンディショニングが指揮官の想定よりも遅れてしまったことだ。そのためベネズエラ戦と中国戦、2試合連続でスコアレスドローを演じることとなり、続く香港戦では3-0で勝利したものの、東アジア選手権のタイトルが懸かった韓国戦では1-3の逆転負けを喫してしまう。会場の国立競技場は、これまでにないブーイングに包まれ、岡田監督の去就をめぐる議論がファンやメディアの間で沸騰。すぐさま犬飼基昭会長が「(監督交代は)リスクが高すぎる」として岡田監督続投を宣言したものの、日本代表の行く末を案じるサポーター、ファン、メディア、そしてスポンサーから100パーセントの信任を得たわけでは決してなかった。これが第2の誤算である。
かくして、本来は「消化試合」となるはずだったバーレーン戦は、気が付けば「岡田監督の進退を懸けた一戦」へと昇華する。バックアッパーを試すこともできず、さりとて海外組を中心としたメンバーでヨーロッパやアフリカのチームと対戦することもままならない。「W杯ベスト4を目指す」日本は、この記念すべき本大会開幕100日前のFIFA(国際サッカー連盟)マッチデーで、バーレーンとの消化試合を「真剣勝負」することと相成った。これが第3の誤算である。
試合背景については宇都宮徹壱さんが分析した通り。この試合で日本サッカー協会は岡田さんを更迭しない正当な理由を見せなければならなかった。
政治力の欠如で予選を延期できなかった日本は、消化試合のバーレーン戦でベストメンバーで戦うことを余儀なくされた。この試合にまでベストメンバー規定を適用しなくてもよさそうなものだが、小心者の岡田監督はバックアッパーを試すこともなく、がちがちのメンバーで主力5人を欠いたバーレーンをホームで迎えたのだ。
中村俊は、言うまでもなくチームの攻撃の中心であり、頭脳である。岡田監督は就任当初から日本の10番ありきでチーム作りをしており、その固執ぶりは「俊輔という名のコンセプト」と命名したくなるくらいだ。その正確無比なロングキックやプレースキックは、貴重な得点源にもなっている。今季、移籍したエスパニョルでは出番を与えられず、このほど横浜F・マリノスへの復帰が決まった中村俊だが、それでも彼に寄せる岡田監督の信頼は決して揺らぐことはないだろう。
対する本田は、間違いなくこのチームの「異端」である。すなわち、自ら打開できるだけの強いフィジカルとメンタルを持ち、強引にゴールを目指すことを身上とする一方で、スピードと走力とコンビネーションには難がある。現在の日本代表選手の属性からすると、ことごとくその規格から逸脱している(だからこそ、ヨーロッパで十分活躍できるのだとも言えるのだが)。
言わずもがなではあるが、代表チームとは似たようなタイプの選手を11人並べればよいというものではない。むしろ、本田のような「異端」をいかにチームに融合させ、チームも個人も生かせるかを考えるべきであろう。ところが、実際のところ代表における本田の位置付けは、実質的には中村俊のサブ扱い(監督は否定しているが)。この「利き足が左」くらいしか共通点がない両雄が、最後にスタメンで並び立ったのは、08年6月22日以来。くしくも、これまたバーレーン戦であった(W杯アジア3次予選)。果たしてこの試合で、両者を共存しながらチームは機能していくのであろうか。岡田監督の手腕が問われるとすれば、まさにこの一点に尽きると言っても過言ではないだろう。
10番ありきの戦術はヨーロッパでは10年以上前に終わっている。今はどうサイドを活用するか、9番に点をとらせるかということに特化している。だが、岡田さんはマスコミが名付けたファンタジスタ中村俊輔中心のチームを作り、そのチームと心中しようとしている。
だが、ちょっとまってほしい。ファンタジスタの系譜はイタリアの系譜だ。ゾーラ、バッジョ、デル・ピエロ、トッティと続いた流れはカッサーノで途切れている。ファンタジスタとはイタリア語で定義はファンタジーアを魅せられる選手となる。イタリア人の系譜は超絶技巧が特徴であり、さらにゴールも奪える選手だった。この中に、プラティニ、ジダン、マラドーナ、ベルカンプを含めてもいい。現役プレーヤーならロナウジーニョやメッシ。彼らに共通しているのはプレーの中にも遊びがあり、そして相手にとって危険なプレーヤーだったということ。ゴールを奪うことには直結しないがルイ・コスタやピルロもその系譜ではあった。
だが、中村俊輔はゴールに直結するプレーはFKに限られる。ボールを持っても危険なパスをたびたび出せるわけでもない。ドリブルで突破もできないし、派手なフェイントがあるわけでもない。もう安全に球を叩き、無理筋のスルーパスを遠そうとする凡庸なプレーヤーでしかない。ファンタジスタでは絶対にありえないのだ。
先の定義で言えば、本田圭佑のほうがファンタジスタと言えるだろう。そもそもファンタジスタは戦術に適用できない異端であり、中途半端で使えないという意味ではないのだ。本田圭佑は攻撃的なポジションならどこでも期待以上の働きを魅せるだろうが(もちろん、正確な戦術があればだが)、中村俊輔は戦術に縛られると何もできないのだ。
「言い訳なしで結果を出せ」――試合前、岡田監督は選手にこう語ったという。絶対に負けられない、この試合。日本が目指すべきは、コンセプトの徹底でもW杯のテストでもなく、とにかく目の前の相手に勝利することであった。もっとも、日本が必勝態勢で臨まなければならないのは、今に始まった話ではない。少なくとも東アジア選手権の3連戦は、ずっとこうした状況であった。ただ、今回の場合は「海外組との融合」という、新たな課題が加わっただけの話である。それでは、この試合でチームの融合は成ったのか。結論からいえば、融合うんぬん以前に「元のチームに戻った」と解釈するのが正しい。それは岡田監督の「昨年、一昨年、公式戦ではほとんど、このメンバーに近かった」という言葉が示す通りであろう。そしてその中心にいたのが、日本の10番であった。
この日の中村俊は、両サイドで何度も起点を作ったり、あるいは前線でタメを作りながら追い越してくる選手を生かしたり、さらには意表を突くタイミングで相手DFの裏に放り込んだり、何度も目の覚めるようなチャンスを演出。先制点を呼び込んだのも、まさにこうした彼の職人技によって生まれたものであった。前半36分、左サイドで中村俊が中に絞りながら本田からのパスを受け、アウトサイドから駆け上がる松井にスルーパス。これを松井がダイレクトでクロスを上げ、ファーサイドの岡崎がジャンプしながら頭で合わせてネットを揺さぶる。岡崎のゴールは昨年11月の香港戦以来、4試合ぶり(自身が出場した試合)。チームはもちろん、岡崎自身にとっても復調を予感させる貴重なゴールであった。
この日は、左MFの松井がたびたび中村俊との絶妙なコンビネーションを見せたり、長谷部も攻守にわたって貢献するなど、合流したばかりの海外組は「さすが」とうならせるようなプレーを随所に見せていた(岡崎のゴールの際、相手DFを引きつける動きを見せていたのも長谷部だった)。これに対し、トップ下で起用された本田、そして後半22分に松井に代わって投入された森本は、いずれも本来の持ち味を出し切ったとは言い難い。本田については、チーム最多の5本のシュートを放ったものの、特に前半は中盤でのコンビネーションで滞りを見せ、自身も窮屈さを感じていたのか、強引に前線まで攻め上がるシーンが何度か見られた(ゴールへの意欲そのものは、決して否定されるものではないが「スタートポジションの意識というのをテーマにしていた」という岡田監督には、やや否定的に映ったのかもしれない)。森本については、単純に与えられたプレー時間が短すぎた。岡田監督としては、悩んだ末に「計算が立つ」岡崎をスタメンに使ったのだろうが、この起用法については意見が分かれるところだろう。
宇都宮さんの見解を借りるなら中村俊輔は2列目の右サイドで使われる必要はなかった。3列目の遠藤の位置で十分だった。つまり、遠藤でも同じプレーができたのだ。ピッチ上に遠藤と中村俊輔というふたりのレジスタが存在していたことになる。
さらにいえば、中村俊輔が右に左にポジションを変えることで他の選手は彼のポジションを埋めるべく奔走しなければならなかった。これがエスパニョールで通用せず、ピボーテの位置で試された理由である。しかし、守備力でいえば遠藤のほうが上。エスパニョールでも結果を出せなかった。実はレッジーナでも中村俊輔はレジスタとして試され、戦力外として扱われていたのだ。
セルティックで通用したのはストラカンがプレーエリアをしっかり守れと指示したからだろう。右サイドでプレーメイクをして反対側にドリブラーを入れるということでチームは機能したいたのだ。
今の日本のシステムでは中村俊輔のポジションチェンジが狙われ、弱点となる可能性が高い。
実のところ、この試合が不本意に終わった場合の“可能性”については、各方面から有象無象の情報を耳にしていた。結局、それらはいずれも“幻”となり、日本代表は岡田監督の指揮の下、南アフリカを目指すことは間違いないと見てよいだろう。それが結果として、日本サッカー界にとって功罪どちらの比重が大きくなるかは、今は誰も判別できない。だが少なくとも、この日の結果によって「南アは岡田で行く」という事実が(ほぼ)確定したことだけは、肯定派も否定派も認識すべきだろう。今後の議論は、まずそこから始まる。
このバーレーン戦について総括するならば、いわゆる「コンセプト」に拘泥することなく、あくまでもゴールを、そして結果を求める姿勢をチームとして前面に押し出していたことは評価してよいだろう。それから、海外組との融合(というより「原点回帰」)についても、ほぼ問題ないことがこのゲームから明らかになった。スペインから戻って来た中村俊についても、とりあえずW杯までは日本代表の「顔」となることは間違いなさそうだ(余談ながら、この試合を見て小笠原満男の代表復帰は難しくなったと、私は確信している)。もちろん、浮き彫りとなった課題もまた、少なくない。一番のテーマであった中村俊と本田の共存については、まだまだ時間が必要であることは明らかだし(それでも何度かいいコンビネーションはあった)、守備の連係については不安を覚える部分が少なくなかった。これらの問題については、本大会に臨む23名が決まって以降に持ち越される課題と割り切るしかないだろう。
だが、それ以上に私が不安に思うことは、岡田監督が「南アでの戦い」を勝ち取るために支払った代償の大きさ、である。W杯イヤーとなる今年に入ってから、指揮官は余裕のない戦いを強いられることで「バックアッパーの確保」というチーム作りの重要な要素を、ついに放棄せざるを得なかった。つまり「代えの効かない選手」を増産してしまったのが、今の代表なのである。昨年10月のトーゴ戦からスタメンを張っていた(1月6日のイエメン戦は除く)遠藤もそうだが、それ以上に心配なのが中澤と闘莉王のセンターバックコンビである。キャプテンの中澤は先日代表100試合を迎えたが、バックアッパーの岩政大樹はやっと2試合目を経験したばかり。岡田監督は、中澤と闘莉王が「不死身」だと思っているのだろうか。だが、思い出してほしい。2002年W杯では、森岡隆三と宮本恒靖という2人のセンターバックが相次いで負傷している。06年には、いったんは23人枠に選ばれた田中誠が負傷で辞退し、代わって選ばれた茂庭照幸は、初戦のオーストラリア戦で肉離れを起こした坪井慶介に代わって、いきなりW杯デビューを果たすこととなった。こうしたアクシデントが、南アで繰り返される可能性は十分に考えられよう。
結局のところW杯予選突破以降も、日本が余裕のない戦いを強いられたことが、チームとしての可能性を著しく狭めているのは間違いない。W杯は11人ではなく、23人(あるいは、それ以上)で戦う総力戦である。しかしながら今の日本は、11人プラス数名で戦うしかない状況だ。おそらく6月14日のカメルーン戦は、この日のスタメンとほとんど変わりない顔ぶれが並ぶはずだ。それくらい、今の日本にはオプション(=余裕)がない。だが、その責を岡田監督ひとりに求めるのは、いささかアンフェアだと思う。少なくとも彼は就任当初、寺田周平や高木和道といったセンターバックのバックアッパーを、スタメンとして起用している。にもかかわらず、結果を求められ続ける状況に追い込まれたからこそ、岡田監督は、中澤と闘莉王を起用し続けるしかなかったのだと思う。
そんな余裕のない戦いを強いたのは、いったい誰だったのか? 問題の根源は、むしろそこにあるように思えてならない。
岡田さんの小心者っぷりはここに極まれりというくらいにバックアッパーがいない戦いになってしまった。中澤、闘莉王がいなくなれば最終ラインは経験不足の選手ばかりになる。さらに闘莉王については東アジア選手権の韓国戦で受けたレッドの判定についてFIFAの判断待ちの状態にある。日本サッカー協会は東アジア選手権だけの処分と楽観視しているが、公式戦2試合の出場停止だった場合には貴重な1試合を昨日消化できなかったことになる。
そういう将来のことも考えられない監督に率いられていること。これはファンへの裏切りではないのか。
4 件のコメント:
最近の試合が酷かったので、今回の試合は景気づけにはなりましたね。
あれほど活気付いた豊田スタジアムも久しぶりです。
「野球王国」かつ「サッカー不毛の地」と言っても過言ではない愛知県で行われた約2年ぶりの代表戦、普段スタジアムを訪れる機会の少ないファンが、この試合をきっかけにJリーグの試合にも足を運んでくれるようになってくれればと願っています。
試合内容については、本田が決めたから及第点と思ってしまいがちですが、あれだけチャンスを作ったのなら3-0、4-0ぐらいで勝って欲しかったですし、
守備でもヒヤリとする場面があったので、評価が難しいです。
相手が1.5軍のバーレーンであれば、なおさら・・・。
一番残念だったのは、やはり岡田監督のベンチワークでしょうか。
どうせ海外組をテストするなら、森本を先発で使って欲しかったですし、
交代枠も2つしか使ってません。
玉田を入れたのは残り数分という段階でしたしね・・・。
>どらぐらさん
名古屋はW杯の開催都市も新潟に奪われてしまいましたしね。
きっかけは何かほしいところでしたね。
ライトなファンにとっては勝っていい試合だったと思います。
ストイコヴィッチのサッカーのほうが面白いよと言えるので、誘いやすいかもしれないですね。
圧勝して当然のゲームでしたが、なかなかゴールが決まらないゲームでしたね。
もっと強い相手ならゴールを奪われていたでしょう。
本戦に届かなかったチームが落としてきているのですからね。
そうですね。
岡田さんは結局ふたりだけ。
何か決めて使っているのですかね。
余り争いたくは無いですが、議論ならありでしょう。
俊輔のことに対しては常に反発していきますので(笑)
先ず、ファンタジスタという言葉と厳密な定義について書かれていますが、日本のマスコミで使われているファンタジスタというのはあくまでも魅せるプレーが光る攻撃的な選手という曖昧な表現であり、それについては俊輔は十分にあてはまると思われます。イタリアの文化を熟知して使っている訳ではないという事です。
また、ゴールに直結するプレーはFKに限られると書かれていますが、先日の試合でも岡崎が外しただけで決定的なパスを出しています。ボールを持っても危険なパスをたびたび出すという点については、たびたびという部分が何処まで頻度を差しているのか不透明なので何ともいえませんが、決定的なシーンという観点で言えば本田も松井に出した一本のスルーだけです。(ゴールはしましたが、それは彼のほぼFWというポジションと彼のプレースタイルによるもの)
また、ドリブルで突破が出来る選手が日本人で何処にいるでしょうか。可能性があるのは石川だけです。松井もテクニックは高いですが代表戦を見る限りではスペースに出した方がシンプルなプレーで良さが見られる程度です。その意味で、ドリブルではなくとも、俊輔は相手ディフェンスをフェイントでかわしてクロスなりパスなりシュートなりの選択肢を生み出しますからね。バーレーンが相手だとはいえ見せていたように。
という事で、俊輔を否定するという事は多の日本代表選手のほとんどの攻撃力を否定するようにか思えません。
無理筋のボールを送ったと言いますが、相手がバーレーンだからあえていろいろな攻撃パターンを試したという見方も出来ると思います。俊輔は岡田よりも考えていますからね。チームとしてのいろんな引き出しを探そうとこのゲームで試していた事を、外観から判断されただけのミスばかりをとらえて凡庸なプレーヤーと表現される事には怒りすら覚えます。
プレーエリアの事もそうです。確かに動き過ぎてバランス、特に守備時のリスクを増やす可能性は否定できませんが、それはどうカバーするかという事も重要な観点であると思われます。彼が動く事によってスペースを空け、内田の攻撃参加を生み出すという側面もあります。全てが全部絶対的にダメだとは言えない筈です。
俊輔という選手は個性が強いです。その意味で、彼の悪い点をあげることはどんな稚拙なブロガーですら幾らでも出来ます。
しかしながら、ただ悪い点を挙げるだけで、俊輔を起用せずにどうするのかという部分までなければ、これは片手間でしかありません。
サイドアタックが大事。サイドバックも含めた攻撃の厚みだけでは得点は生まれません。それだけのFWがいないからです。バーレーンのDFが相手ならどんな方法でも勝てるでしょう。そうではなく、W杯でどう勝つかが大事であって、その時に限りなく得点の可能性が高い手段をピッチに残しておく采配は必要不可欠だと思います。
その存在が俊輔だと。まぁ、長くなりましたが、そう思います。
リーガで監督と合わない事が通用しない事と同義で解釈され、凡庸というレッテルを貼っているのだとしたら、それは残念ながら観る目がないと思います。そうでない事を期待していますがw
>S-Kyoさん
議論ならいつでも。
ファンタジスタの定義はイタリアのものを使っています。
日本の定義だと誰でも彼でもファンタジスタになってしまうので。
ハードワーカーの中田英寿をファンタジスタと言っていた日本のマスコミの定義はおかしいと考えています。
プレーエリアについてはチームの約束事があってのポジションチェンジです。
今の日本代表で岡田は中村のフリーロールを容認しているだけで、松井と本田が必死でカバーしています。
松井が交代したあとにそのポイントを突かれていたことから弱点となっていたのは明らかでしょう。
岡崎にはフリーロールのカバーは無理でした。
ちなみに中村はスペインだけではなく、意アリアでも通用していません。
エスパニョールで監督とあわなかっただけではなく、レッジーナ時代の監督の誰も継続して中村を使っていないのです。
コッツァにポジションを奪い返されたのは忘れていないでしょう。
レッジーナでもポジションをキープ出来なかったのは戦術を理解できなかったからです。
それは中村だけに限らず、中田英寿も、柳沢も小笠原も同じですが。
輝いたのはセルティック時代だけ。
日本代表監督がストラカンならうまく使えるのかもしれません。
セルティック時代にはプレーエリアを守れという指示が出ていたのでしょう。左サイドまでポジションチェンジをすることは稀でした。
チャンピオンズリーグでの活躍もセルティックというチームあってのことで、中村ひとりの力ではないでしょう。
チーム力まで否定して、あれは中村ひとりの力というなら議論すら成り立ちません。
ストラカンがいて、セルティックのチームメイトがいて、チームの約束事を守ってつかんだ栄光です。
もちろん、無理筋のパスが駄目だと考えているわけではありません。
ファンタジスタとして名前を挙げた選手のほとんどのパスもゴールにつながらなければミスパスです。
しかし、FWに可能性がないパスが多いか少ないかを考えれば、中村は可能性のないパスも多く出しています。
FWが反応できないパス、追いかけるだけのパスはよく観たはずです。
サッカーは中盤ありき、真ん中ありきではなく、FWありきです。
ゴールを奪い合うスポーツなのだから当然でしょう。
FWから逆算できるビルドアップが必要ですが、現在の日本代表では誰もできていません。
FWが駄目なのではなく、駄目なFWに点をとらせるパスを出せない中盤が機能してないということでしょう。
ちなみに本田圭佑の試合はフェンロ時代から観ていますが、常にゴールに向かう姿勢を魅せていました。
ポジション的にということですが、中村と同じポジションでもエリア内に入っていくプレーは中村にはほとんど観られないものです。
その意味ではオシムがインタビューで答えているように、ヨーロッパの選手はサッカーをプレーしているが、日本の選手はプレーの為にプレーしているとも言えます。
サイドアタックについてもドリブルにこだわっているわけではありません。
サイドの高い位置で起点となり、両サイドのフルバックをスペースに走らせるというプレーでもいいのです。
安定性が高いのは松井と長友のコンビくらいでしょう。
内田のスペースを空けているということをたびたび仰っていますが、レアル・マドリー時代のジダンがロベルト・カルロスの道を空けていためにそのサイドは徹底的に狙われています。
格下相手なら通用しますが、世界の列強は見逃してくれないでしょう。
内田があがれないなら、真ん中によりがちな中村俊輔は対面のレフトバックにプレッシャーをかけられず、サイドアタックを許すことになります。
これもジダン時代のレアル・マドリーがくらった攻撃です。
本田はプレーエリアを理解しているから、CSKA モスクワに合流しても最初の試合から使ってもらえました。
これは中村との大きな違いです。
中村はセルティック時代も最初の数試合はフィット出来なかった。
ボールが頭上を飛び交っていましたね。
中田英寿、柳沢、大久保、小笠原、稲本とプレーエリアが理解できなかった選手は日本に帰ってくるしかありませんでした。
彼らは日本ではスターですが、ヨーロッパでは普通の選手です。
中村を凡庸と言ったのはヨーロッパ基準に当てはめてのことで、UEFAで取りあげられたのもFKだけでした。
ちなみにオシムが中村を使ったのは日本サッカー協会から中村と高原は絶対に入れてくれという指示があったからです。
高原の怪我がなければ、ずっとふたりは使い続けていたということでしょう。
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